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【DEEP121】KENTAと対戦、引退撤回=渡部修斗の真実「より渡部修斗らしい、一転突破のファイトに」

【写真】型にはまった時の強さは絶対。その型に如何にハメるのかが、渡部修斗のMMA (C)MMAPLANET

本日16日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開かれるDEEP121 Impactで渡部修斗がKENTAと戦う。
Text by Manabu Takashima

作戦8月にNEXUSのケージでPFCバンタム級王座を引退試合で獲得──3月にその時の条件として防衛戦を行うことはあったが、きっぱりとMMAから足を洗うつもりだった。そんな渡部が引退試合から1年1カ月、そしてエキストラのファイトから半年で実戦復帰を果たす。

この早期引退撤回には色々な意見があるあろうが、渡部は自身の想いに素直に従った。フライ級で戦うMMAファイター人生第二幕の幕開けを前に、渡部修斗を~彼の城~FIGHT LYNXに尋ねた。


──昨年8月の引退試合から、3月のPFCでの王座防衛戦を経てDEEPで復帰。周囲の反応を考えると、勇気がいる決断ではなかったでしょうか。

「別に勇気はいらなかったです。まぁメチャクチャ言われるからとは思っていたんですけど、何を言われても関係ないといえば関係ないじゃないですか(笑)。別に後ろめたいことをしているわけじゃないですし」

──それなら、良かったです。そこを気にしてしまうと、生き辛いじゃないですか。お父さん、渡部優一さんもケージに上がっての大団円。とはいえグラップリングの試合は出続けていたし、いずれ復帰もあるという意識はどこかに持っていましたか。

「いや、MMAをやろうとは全く思っていなかったです。本当になくて。出し尽くしたので満足していました。実は引退試合の時は、プライベートでゴタゴタもあって突発性の難聴になってしまったり、試合の向けた練習としてはそれほど身が入っていなかったです。フワフワしてしまっていて。

それでも試合はギリギリでも勝てて、自分の大会にできました。なので本当に満足して引退できたんです」

──そもそも、ですが。なぜ、あの時期に引退を決めたのでしょうか。

「MMAを戦うことに、満足してモチベーションがなくなっていたからです」

──満足というのは? RIZINに出たことで満ち足りたということでしょうか。

「そうですね。田丸(匠)戦に勝った時に、一回終わった形でしたね」

──修斗で天才と呼ばれていた選手に、一本勝ちをした。そこで満足感が?

「やっと自分の実力を証明できたと思ったのですが……やっぱり雑魚扱いというか(笑)。次の朝倉海選手との試合に負けて、『こいつ、弱いのにRIZINに出てきやがって』とか言われたのは悲しかったです。

でも伊藤空也選手と戦うことが決まって、気持ちはあがりました。それが伊藤選手が欠場になり、代役の内藤頌貴選手に勝ったのですが評価されることもなかった。そこで気持ちが途切れたというのはありました」

──勝って評価されずに、負けたらボロクソに言われると。

「だからこそ、夢のある舞台なんだと思います。その分、苦しくて」

──田丸戦で満足し、内藤戦で気持ちが途切れた。RIZIN後はDEEP、そして引退試合からPFCの防衛戦と試合は続けました。

「RIZINからDEEPに出た時に、ここを墓場にしようと思っていました。DEEPで勝ってRIZINに戻るという頭ではなくて、DEEPで終わろうと……それでDEEPのチャンピオンを目指そうと戦っていました。でも2戦目の力也戦の時に、試合直前に足が震えてだして。入場前に足がガタガタ震えるなんて初めてのことだったので、自分でもわけが分からなくて。でも、その時に『もう辞めよう』と思いました。

ケージに上がっても全然集中していなくて。いつもならテイクダウンに行くのに組みにもいかない。セコンドからも『どうして、いつも行く距離で行かなかったの?』って言われるぐらいで。

何だろう……心が落ち着いているというよりも、静かだった。で、一発貰って。『あぁ、こんなんで終わったんだ』と何かが抜け落ちてしまっていましたね。じゃあ、最後はNEXUSでやってMMAを終えようと決めました。最後はNEXUSい恩返しをしたかったので」

──その引退試合でPFCバンタム級王座を奪取し、防衛戦を3月に戦いました。

「亀松(寛都)戦は引退試合でも、勝てばやることは決まったので。だから練習も続けていたのですが、NEXUSの運営に入って、試合を眺めていても復帰したいとは思わなかったです。それが元旦に1人で実家に戻っていて、今年の目標を決めようなんて思いながら電車から田んぼを眺めていたら、『フライ級でMMAに復帰』って降って来たんですよ(笑)。本当に復帰するつもりとか、全くなかったのに」

──亀松戦で勝ったあとに『復帰するならフライ級』というSNSでの発言がありましたが、そういう伏線があったのですね。

「ハイ、ただ、あの時は復帰戦の予定とか全く決まっていなかったです。それにあの試合で負けたら、復帰も何もないので。若い子が俺を越えて、北海道のPFCを盛り上げるってことで。だから何がなんでも勝とうという気持ちもなかった。

格闘技の神様がいて、復帰を求めているなら多分勝つだろうっていうぐらいで。同時に勝てば復帰しようとは決めていました」

──現役復帰、奥様の青野ひかる選手はどのようなリアクションでしたか。

「『やりなよ。逆になんで辞めたのは分からない。今でも戦えるのに』って言っていました(笑)。『じゃぁ、やるわ』みたな」

──アハハハ。復帰の場をDEEPにしようと思ったのは?

「バンタム級で取り忘れたモノが残っているので、DEEPと決めていました。佐伯さんには凄くお世話になっていますし。佐伯さんはどう思っているか分からないですけど(笑)。

ただ僕はフライ級で何の実績もないので、発言権もありません。これはアピールでなく、聞かれたから答えるだけであって……。自分がやり残したことは、国内のメジャー団体でベルトを獲ることでした。

修斗、DEEP、パンクラスでチャンピオンになること。父は修斗のベルトを獲っているし、自分のなかでコンプレックスがずっとある。レスリングでもMMAでも、父を越えることができないままで。修斗かDEEPかパンクラスでチャンピオンになって、ようやく父と同等になれる」

──本来は試合に勝って発言しようと思っていたDEEPフライ級奪取宣言。ここで明かしてしまって良いのでしょうか。

「ハイ。取材をしてもらって、自分が何をしようと思って復帰をするのかを分かってもらえるので有難いです。またRIZINかって思われているかもしれないのですしね(苦笑)。DEEPで一番になることしか、目指していないです。それが成ったら、その先があるかもしれないけど……今はDEEPのベルトを目指すために戦います。たださっきも言いましたけど、実績がないので、これは目標を話していると思ってください」

──ハイ。承知しました。フライ級で実際に戦うことを決めて、バンタム級との違いは感じられますか。

「もともとバンタム級では水抜きもしていなかったです。食も細くて、無理矢理たくさん食べて大きくしようとしてしんどくて。ほぼ毎日のように液キャベを飲んでいました。それでも67キロぐらいまでにしかならない。そこから減量をして、リカバリーをしても64キロ程度。それで試合をすることは、正直しんどかったです」

──胃薬を飲んで、たくさん食べる。生きるという部分で、基本が違っていましたね。

「ハイ、全く不健康でした。今は炭水化物……糖質、脂質、たんぱく質はしっかりと摂って、スイーツは和菓子にした。菓子パンは食べない。そうやって、食事を普通にすると普段から61キロになりました。これならフライ級で十分にやれるかと」

──練習での動きの方は?

「軽くなりましたね。周囲の人は組み力は、変わっていないと言ってくれていますけど……。でも実際に戦ってみないと分からないと思います。ただ自分では弱くなったとは思っていないです。胃薬を飲みながら、食べるなんてことはせずに健康的になれたので。そのことは良かったと既に思っています」

──では、対戦相手のKENTA選手の印象を教えていただけますか。

「間違いなくDEEPフライ級のトップです。こないだ村元(友太郎)選手にスプリットで負けたけど、勝っていたらタイトル挑戦だったはずです。安谷屋(智弘)選手、杉山(廣平)選手にも勝っていますし。KENTA選手が自分と戦ってくれるとは思っていなかったです。僕に勝ってもタイトルとかってならない相手だし、自分からすると最初からトップ選手と戦わせてもらって凄くありがたいです。DEEPにもKENTA選手にも感謝しています」

──この間もグラップリングの試合に出続けていたので試合勘は鈍っていないかと思うのですが。その辺りは如何ですか。

「全く変わらないです。試合勘は全く途切れていないすし、以前のようにガツガツとスパーリングをするだけでなく、ここ(FIGHT LINXS)でドリルや技術練習が増えて。練習であまり制圧されることはないです。ただ、それは練習だからで。結局、試合が全てです」

──また試合前に足が震えるという恐れは?

「それはないと思います。今、負けることに不安がないので。やってみないと分からないですけどね。以前は負けることに恐れを感じていましたが、今はそこに恐れがないので。不安がないので、震えることはないと思います。

やっぱり1回終わって自由になったからかと。このMMA引退期間でポジションもより確立されたというか。何の縛りもなく、出たい舞台で戦ってきた。渡部修斗という存在を唯一無二にしたかったのですが、そういうポジションが確立できたと思います。もう負けたら終わりとか考えることもなくなったので、全く怖くないですし。自信が凄くあるわけじゃないけど、恐怖がない。自分のやるべきことを思い切りぶつけて、勝ちに行くだけです」

──このMMA引退期間が、良い方向に動いていそうですね。試合で何を魅せたいと考えていますか。

「技術的に何か変わったといえばないです。ただ気持ちの部分が凄く変わったので。新しい自分を見せたいとかでなくて、ただ試合をすることが楽しみです。グラップリングも含めて、人と試合をすることが楽しくて。なので、勝ちに拘るとかでないピュアな自分を見てもらえるかとは思います。

以前は勝利に拘って、ガチガチになっていました。もっと思うがまま、本能で動くような試合になると思います。試合映像はチェックしますが、対策練習よりも自分の動きを磨くことに重点を置いていますし。より渡部修斗らしい、一転突破のファイトになると思います。色々できるなんて、逆に自分らしくない(笑)。このスタイルで上って行くと姿を見て欲しいです」

■DEEP121 視聴方法(予定)
9月16日(月・祝)
午後5時35分~U-NEXT、YouTube DEEP/DEEP JEWELSメンバーシップ、サムライTV

■DEEP121 対戦カード

<DEEPバンタム級王座決定戦/5分3R>
福田龍彌(日本)
瀧澤謙太(日本)

<DEEPライト級選手権試合/5分3R>
[王者] 江藤公洋(日本)
[挑戦者] 野村駿太(日本)

<メガトン級/5分3R>
水野竜也(日本)
大成(日本)

<フライ級/5分2R>
KENTA(日本)
渡部修斗(日本)

<フライ級/5分2R>
関原翔(日本)
杉山廣平(日本)

<フェザー級/5分2R>
五明宏人(日本)
相本宗輝(日本)

<バンタム級/5分2R>
雅駿介(日本)
谷岡祐樹(日本)

<バンタム級/5分2R>
力也(日本)
鹿志村仁之介(日本)

<ストロー級/5分2R>
多湖力翔(日本)
中務修良(日本)

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