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【Road to UFC2024Ep02】河名マストと対戦、ソン・ヨンジェ「無断で大学を辞め、ジムで2年間寝起き」

【写真】1996年1月3日生まれというソン・ヨンジェ。28歳だが、大学生のように若々しい──韓国のMMAバカ (C)MMAPLANET

18日(土・現地時間)&19日(日・同)に中国は上海のUFC PIで開催されるRoad to UFC2024。2日間で4エピソードが実施されるアジア発、世界最高峰への道──その初日、エピソード02で河名マストと対戦するソン・ヨンジェ。
Text by Manabu Takashima

兵役を挟んだ7年間で僅か6試合しか実戦経験がない。それでも主戦場のAngel’s FCでバンタム級とフェザー級の2階級を制したソン・ヨンジェは、6勝の全てがフィニッシュ勝利でKO勝ちは実に5試合を数える。

日本では全く無名のソン・ヨンジェに、その歩みを尋ねると冬ソナのロケ地として有名なチュンチョン出身故に練習環境が整っておらず、ソウルに出て2年に渡りジムで寝起きをしたというエピソードが聞かれた。「人生を変えたい」──韓国にもいた、MMAバカ=ソン・ヨンジェのMMAファイター人生とは。


──明日、上海に向かうという忙しいなかインタビューを受けていただきありがとうございます(取材は13日に行われた)。今、どのような気持ちですか。

「夢だったUFCに向けての戦いなので、さすがにこれまでの試合と比べると気持ちが高ぶっています」

──もう頬がこけているように見えます。

「そうですね。今日から本格的な減量に入り、炭水化物を摂るのを止めました。あと5キロほどですね」

──ではソン・ヨンジェ選手がMMAを始めたきっかけを教えてもらえますか。

「子供の頃はテコンドーをやっていました。でも、それは韓国の子供達なら特別なことではないですよね。MMAを本格的に練習するようになったのは19歳の時です。UFCやPRIDEを視ていて興味があって、ソウルにあったワイルド・ジムというところに体験入門に行ったんです。そこで自分があまりにも夢中になっていたのを見て、オ・ウォンジン館長が『ジムに寝泊まりして練習すれば良い』と言ってくれました。結果、2年ほどジムで寝起きをしていました」

──ということは、ソン・ヨンジェ選手はソウルに住んでいたわけではなかったのですね。

「カンウォン特別自治区のチュンチョンに住んでいたのですが、当時はチュンチョンでMMAを学べるところはなかったのでソウルに見学に行ったんです。2014年、今から10年近く前になります。大学生だったのですが、親に無断で自主退学をしてMMAの練習に明け暮れるようになりました」

──なんと親不孝者じゃないですか。

「両親にバレて、母親はMMAをすることに対して反対というよりも心配をしていまいしたね。『しっかりとご飯を食べて』という風に。父は『男だから自分のやりたいことをやれ』と言ってくれました。ただ、練習をして2年を過ぎた時にワイルド・ジムが閉館され、チュンチョンに戻ることになりました」

──では練習場所がなくなってしまったのですか!!

「いえ、ワイルド・ジムのコーチの1人がチュンチョン出身でワイルド・ジム・チュンチョン支部に開くことになり、一緒に戻るかと誘ってもらったので練習場所は問題なかったです。チュンチョンでは3年ほど暮らし、それからまたソウルに出てチーム・パッシの所属になりました。

でも、すぐにコロナになってしまって。この間、練習もできないかと思い兵役に就くことにしたんです」

──なので2019年から2023年までキャリアの空白期間があるのですね。

「兵役を終えてから、やっぱりMMAを続けたくてキム・ドンヒョン選手に連絡をとり、今はハバス・ジムで練習をしています。ハバスはチーム・スタンガンから独立したチームなんです」

──なるほど。そんなソン・ヨンジェ選手ですが、キャリア6戦、全てAngel’s FCで戦っています。K-MMAといえばRoad FCやTop FCがメジャーだったのですが、一貫してAngel’s FCで試合をして来たのは何か理由があったのでしょうか。

「Road FCやTFCではアマチュアの試合には出ていましたが、所属ジムのコーチがAngel’s FCの審判をすることになり、出場予定だった選手が出られなくなったからと、急遽代役でデビュー戦を戦ったんです。そのままAngel’s FCからオファーを貰い続けたので、戦い続けてきた形です。と同時にRoad FCや他の大会から声は掛からなかったということです(笑)」

──……。兵役を挟みAngel’s FCでバンタム級とフェザー級の2階級を制してRoad to UFCで戦う機会を得ることができました。

「夢のような話です。ジムも活気づきました。ただ、なかなか正式決定しなかったので本当に自分がRoad to UFCで戦えることになると思っていなかったです」

──韓国も日本と同じような状況だったのですね。ソン・ヨンジェ選手がRoad to UFCの正式に戦うことが決まったのは、いつ頃だったのでしょうか。

「1カ月ほど前、4月の第2週ぐらいだったと思います。実際、諦めムードでもあったので遊んだり、酒も飲んでいました(苦笑)。ただ、正式に決まってからは練習だけの日々を送ってきました。正直なことを言えば、もう少し準備期間は欲しかったです」

──ショートノーティスで、しっかりと力を発揮できるか。それもUFCで戦う資質を見ているのかと思うほどです(笑)。では初戦で戦う河名選手の印象を教えてください。

「レスリングが凄く強い選手ですね。とにかく組みが強いです」

──対して、ソン・ヨンジェ選手は豪腕ファイターです。河名選手も貰うと危ないと言っていました。

「逆に自分は河名選手に掴まれると、それで終わる可能性があります(笑)」

──ソン・ヨンジェ選手はUFC好みのファイトスタイルですね。対してフェザー級に出場する日本人選手は河名選手、原口伸選手、安藤達也選手と揃ってレスリング出身です。

「自分とAngel’s FCで戦った清水俊一選手もグラップラーでした。自分のMMAキャリアは、常にグラップラー対策がついて回っていました。河名選手には申し訳ないですが、KOする自信があります。準決勝の相手が誰になるか分からないですが、ケージのなかで自分と拳を交えると怖がると思います。

自分にとって人生が掛かった大切な試合です。とにかく河名選手に勝って、準決勝も勝ち、決勝でも勝ってUFCと契約します。格闘家の人生って辛いじゃないですか? 普通に仕事をして、その上でハードな練習をしないと生きていけない。そんな人生をRoad to UFCで変えたいです」

■視聴方法(予定)
5月18日(土)
午後9時~UFC Fight Pass
午後6時45分~U-NEXT(※Ep01から引き続き)

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