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【UAEW45】藤田大和が振り返るアディロフ戦「カーフとギロチンでMMAの幅が広がった」

【写真】2試合連続ギロチンで一本勝ちした藤田。海外挑戦へ向けて磨いていた技だ(C)UAEW

10月17日(火・現地時間)にUAEはアブダビのアルジャジーラ・クラブで開催されたUAE Warriors45にて、カザフスタンのサンスハル・アディロフにギロチンチョークで勝利した藤田大和。
text by Takumi Nakamura

UAEW初参戦となった8月大会でのフィルカドベク・ヤクボフ戦に続き、2試合連続同じ技での一本勝ちだった。UAEW参戦が決まるまで約11カ月間のブランクがあった藤田だが、フィニッシュのギロチンはブランクの期間で習得した技であり、試合序盤でペースを掴んだカーフキックはUAEW参戦以降に磨きをかけた技だ。

海外挑戦までの準備期間で取り組んできたことが身を結ぶ形となった。今回のインタビューではギロチンを極めるまでにどんな過程があったのかを聞くと共に、急速に拡大しているUAEでの戦い、そして目標に掲げるUFC参戦への想いを訊いた。


――UAEW45ではアディロフからギロチンチョークで一本勝ちを収めました。これでUAEWでは2連続一本勝ちという結果になりました。

「こんなに上手くいくとは思っていなくて、出来すぎで怖いくらいです。うれしいを通り越して不思議な感じがします(笑)」

――そんな出来過ぎな(笑)アディロフ戦について聞かせてください。事前のインタビューでは「足を使ってジャブを突くパンチ主体の選手ですけど、自分から組みに行く場面もある。対して相手が組んで来るとスプロールすることもできて、何でもやれるタイプ」とアディロフを分析していましたが、比較的早い段階から組んで来ましたよね。

「実はアディロフが想定していたことと全く逆のことをしてきたんですよ。事前に映像を見た限り、構えはオーソドックスでパンチ主体&基本的には組まずに打撃で来ると思っていたら、すぐに構えをサウスポーにスイッチして蹴りを出してきて。それで僕も少し離れた距離を取っていたら、今度はテイクダウンに来るという(苦笑)。戸惑いまではいかなかったですが、ゲームプランを考え直さないといけないなと思いました」

――相手が想定外のことをやってくることはあると思いますが、そこまで逆のことをやるのは珍しいですね。

「でもMMAは色んな局面があるので、想定外のことが起こりやすいと思うんです。今回も事前に見た映像で相手がオーソだから、スパーリングの相手もオーソで揃えるということはしなかったですし、満遍なく色んな選手と練習しました。むしろうちのジムにはサウスポーの選手も多いので、サウスポーは問題なかったです」

――アディロフは開始直後はオーソドックス、藤田選手がカーフを蹴ったあとにサウスポーにスイッチしましたがが、あれは相手がカーフを嫌がっていたのでしょうか。

「間違いなくそうですね。あれは右カーフが効いたからスイッチしたんだと思います。僕が右カーフを蹴ってアディロフがサウスポーにスイッチして、また一瞬オーソに戻したんですけど、その瞬間に右カーフを蹴ったんです。そうしたらすぐに構えをスイッチしたんで、完全に嫌がっているなと思いました。ケージに押し込まれている時にアディロフの左足を見たらかなり腫れていたので確実に効いていたと思います」

――カーフキックは練習していた技なのですか。

「数年前にみんなが使うようになって、自分も練習していた技ではあります。ただUAEWに出るまでは相手のバランスを崩すイメージの蹴り方で、効かせようと思って蹴ったのはUAEWに参戦するようになってからです。練習でもピンポイントで効かせられるようになってきて、カーフは今の自分にとって一つの武器になりました」

――カーフを効かせたあとはケージに押し込まれる展開が続きますが、あの場面ではどんなことを考えていましたか。

「僕自身、ケージを背負った状態は得意というか、試合で寝かされることはほぼないんですよ。普段から倉本(一真)さんや山北(渓人)と組み合っているので(寝かされる)怖さはなかったですし、逆に少し先の展開も考えながらやっていました。あのままラウンド終了までいっちゃうとポイントを取られるので、立ち上がるタイミングを計ってましたね」

――慌てずに対処できていたわけですね。

「相手はかなり力を使っていたと思いますが、僕はほとんどスタミナも使わず、息も上がっていなかったです」

――そこからギロチンを狙っていく流れとなります。

「トータル3回ギロチンを狙って、3回目で取ったんですけど、1回目でトライしたときに『(アディロフは)あんまりギロチンを取られ慣れてないな』と思ったんです。だから1回目はギロチンに固執しなかったし、2回目もギロチンの態勢にはなりましたけど、そこまで極めの形にはなっていなかったので、どちらかというと立てればいいやという技のかけ方でした」

――私見ですがギロチンは何回もトライして極まるというよりも、タイミングを合わせて一発で極めるイメージのサブミッションなんです。なので2回トライして極まらなかったところを見て、もうこの試合でギロチンでフィニッシュするのは難しいのかなと思ったのですが、実際は逆だったんですね。

「はい。僕もギロチンを失敗すると力も使うし、下になるリスクもあるので、何度もトライしないのですが、あの時は取れる感覚があったので、無理な態勢から取りにいく必要はないと思いました」

――そしてフィニッシュのギロチンですが、アディロフがダブルレッグに来た時点で「もらった!」と思いましたか。

「はい。あれはがぶった瞬間にガッチリ入っていました。あのまま両足を組んでも極まりそうだったんですけど、相手も動いてきたので、何度か回転して極まる形でした」

――ギロチンで2連続一本勝ちという結果になりましたが、いつからギロチンが得意になったのですか。

「具体的な時期は覚えていないですが、UAEWに参戦するまで1年ほど試合が空いて、そこで色々と練習して覚えましたね。試しにやってみたら自分にしっくり来たというか。最初は若い選手やアマチュア選手に極まるようになって、UAEWに出る直前くらいからはプロ選手にも極まるようになっていきました」

――UAEW参戦ではケージレスリングも強い中央アジア系の選手と試合が続いて、期せずしてその対策になっていたようですね。

「予習みたいな感じになってました(笑)」

――ここ2試合はギロチンでフィニッシュして、今後はギロチンを警戒されると思います。

「でもギロチンを警戒してくれればケージレスリングや組みの時間が短くなる=打撃の時間が長くなると思うので、それは自分にとってはやりやすいです。カーフキックとギロチンを覚えて、自分のMMAの幅が広がりましたね」

――さて次戦についてですが、何か具体的な話は進んでいますか。

「まだ話はしていないですが、今後も継続してUAEWには参戦したいですし、UAEWにはフライ級のタイトルがないので、これをきっかけにベルトを作って欲しいですね。ベルトという形を残せばUFC参戦という目標にも近づけると思っています」

――藤田選手はいつからUFC参戦を視野に入れていたのですか。

「明確に目標になり始めたのは(2021年2月に)DEEPで暫定王座を獲ってからですね。(2022年5月に)神龍(誠)くんと統一戦をやる前にはこれで勝ったらいけるかもしれないと思っていたのですが負けてしまって。そこからまたキャリアを尽くり直そうと思い、海外で試合をやりたいと思いました。UAEWが決まるまでの空白の期間も幾つか話があったのですが、最終的にまとまらなくて。結果的にUAEWで試合を組んでもらって、現にUAEWからUFCに行った選手もいますし、そこで2連続一本勝ちできたことは大きなアピールになっていると思います」

――ずばり藤田選手がUAEWで戦ってきた相手はRoad to UFCよりも手強い・厳しい相手だと思います。レコードに黒星がつくリスクもありますが、そういった相手と戦って自分のレベルを上げていきたいですか。

「はい。僕は野蛮なヤツとやり合いたいので(笑)。人間は本能的にも相手が強い・怖いと思っている方がいいパフォーマンスを出せると思っています」

――UFCを目指すうえで色んな方法や道があると思いますが、藤田選手が選んだ道がUAEWということですね。

「はい。今はUAEWが主戦場になっていますし、ほかにUFCにつながるチャンスがなければ、UAEWで戦っていきたいです」

――UAEという国自体もMMAが盛り上がっているのですか。

「かなり格闘技熱は高いですね。もともとADCC発祥の国ですし、国営放送でUFCやUAEWはもちろん、柔術やグラップリングの試合も放送されているんですよ。僕も帰りの空港で『昨日試合して勝ったヤツだろ!?』みたいに声をかけられたりもしました。国全体でMMAが盛り上がっている空気を感じるので、これからすごい選手が出てくる可能性もあると思います」

――サッカーではサウジアラビアリーグのクラブがオイルマネーを使ってネイマールやクリスチアーノ・ロナウドといったスーパースターを次々と獲得しています。MMAでもオイルマネーが動き出すと今までの常識が覆るようなことが起きるかもしれないですね。

「全然あると思いますね。僕はいつチャンスが来てもいいように、このまま勝ち続けていきたいと思います」

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