この星の格闘技を追いかける

【GFC10】フライ級転向の手応えを掴んだ勝利、中務修良─01─「KIDさんのパウンドが頭に浮かんだ」

【写真】ポスチャーもしっかりしていたキム・テフン戦のパウンド連打(C)GFC

4日(土)、韓国はクミ市で開催されたGFC10で、WARDOGストロー級王者の中務修良がキム・テフンをTKOで下した。
Text by Shojiro Kameike

試合直前で対戦相手が変更となったものの、従来のストロー級ではなくフライ級の試合で、中務はキム・テフンをテイクダウンからパウンド連打で仕留めている。そのパウンド連打によって、フライ級でも戦うことができる自信を掴んだという中務。まずはキム・テフン戦の内容を振り返ってもらうと、彼の脳裏には憧れだったファイターの姿があった。


――キム・テフン戦のTKO勝利、おめでとうございます。

「ありがとうございます!」

――中務選手にとっては、今回が初の海外試合でした。

「そうですね。今までも海外の試合のオファーは頂いていました。でも当時は、それほど海外の試合に魅力を感じていなかったことと、タイミングも合わなくて今回が初めての加害遠征になったんです」

――では海外での試合に興味が大きくなったのは、いつ頃なのでしょうか。

「前から海外で試合をしてみたいとは思っていましたが、その気持ちが強くなったのは最近ですね」

――格闘技とは関係ないお話になりますが、これまで海外旅行の経験はあったのですか。

「はい。旅行ではないですが、いま勤めている会社の出張で、中国とカンボジアに行ったことがありました。コロナ禍になってからは出張もなくなっていましたけど……。
あとは勤務体系も変わったんですよ。RIZINで砂辺光久選手に勝ったあと、勤めている会社が格闘技に対してすごく理解を示してくれて。それまではフルタイムで勤務したあと、夜に練習していました。それが砂辺戦のあとは週2回、昼まで働いたあとに練習へ行って良いことになっています。その日の夜はしっかり休むことができるようになったことも大きいですね」

――なるほど。今回は初めての海外での試合といえど、それほど不安はなかったわけですね。

「思っていたよりも、日本との違いは感じなかったです。対戦相手も韓国の選手だし、もっとアウェイな感じを味わうと思っていたんですよ。でも全然――もともと時差がないためかコンディションも良かったですし、韓国の人たちも温かく迎えてくれました」

――それほど現地で不都合を感じることもなかったのですか。

「いや、それが――出稽古で行かせていただいているISHITSUNA MMAの林巧馬代表に、『海外遠征で何か注意することはありますか?』と相談していたんです。ISHITSUNA MMAの選手が中国で試合をした時の話を聞いていて」

――あの中国遠征ですね(2017年8月8日、中国四川省で大地震が発生し、予定されていたイベントが中止となった。詳細はこちら)。

「計量でプラス500グラムはOKと聞いていたのに、現地へ行ったら無しになっていたとか。そういうことも含めて、今回の窓口になってくれていたワードッグの柿原勇気代表にも、いろいろとプロモーターに確認してもらっていました。

その中で大変だったのは、ホテルにサウナがあると聞いていたのに、行ってみると無かったんですよ。僕は現地で1.5~2キロぐらい水抜きをする予定で。でも帯同してくれていた現地のワードッグ関係者の方が、ホテルの近くでサウナを探してくれたので大丈夫でした。困ったことといえば、それぐらいでしたね」

――契約体重がフライ級で良かったですね。ストロー級契約だと水抜きの量も多くなるでしょうし……。

「それは本当に良かったです。ただ、海外にストロー級の選手って少ないのでしょうか。海外でストロー級の相手や試合を探しても、なかなか見つからなくて」

――ストロー級は少ないかもしれません。まずUFCをはじめとして北米では男子ストロー級を実施していないのと、アジアでもONEのストロー級は実質フライ級ですから。中務選手としてはフライ級で試合をしてみて、いかがですか。

(C)GFC

「いやぁ、メチャクチャ調子が良かったですね(笑)。以前、NavE君と練習していた時には、すごくフィジカルの差を感じていました。当時は『フライ級のNavE君がこんなに力が強いんやったら、自分がフライ級で戦うのは無理かなぁ』と思っていて。でも、そのあとに体づくりを始めて、実際にフライ級で試合をしてみると、これからはフライ級でもやっていけるんかなっていう自信を持つことはできました」

――キム・テフン戦でも相手がスクランブル出場で、しかも実力差があったとはいえ、開始早々のシングルレッグはスピードが速かったです。あのスピードもフライ級で体づくりができていたことも影響していたのでしょうか。

「ありがとうございます。でも、あのシングルレッグはミスってしまったんですよ」

――えっ、そうだったのですか。ミスしているようには見えませんでした。

(C)GFC

「マットの上にスポンサーのバナーが貼られているじゃないですか。あのあたりがダブついていて、滑ってしまったんですよ。だから本当は相手の前足に組みつきたかったのに、結果的に奥足を掴む形になってしまいました」

――オーソドックスのキム・テフンに対し、かなりのスピードで奥足である右足を触っていたので「凄い!」と思っていました。あれはミスというか偶然性が高かったのですね(苦笑)。

「アハハハ、実は狙って奥足に入ったんじゃないです。でもメチャクチャ調子は良かったですね。そのあとのパウンドも――ずっとパウンドは強化していて、試合でもストロー級の試合とは違う出力と回転力が出ました」

――確かに、キム・テフンに背中を着かせてからパウンド連打に至る動きもスムーズで、また重心もしっかりしていたように感じられました。

(C)GFC

「MMAにあって他の格闘競技にないものって、やっぱりパウンドじゃないですか。僕は東京にいた頃、KIDさんのファンでKRAZY BEEに入っていました。KIDさんのパウンドって凄かったですよね。MMAで面白いものを見せたいと考えた時に、KIDさんのパウンドの凄さが頭に浮かんで――だから僕もパウンドで魅せたいと思うようになっていました。ストロー級の時には出なかったパウンドが、フライ級では出せるようになって良かったです」

<この項、続く>

PR
PR

関連記事

Movie