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【Gladiator023】竹本啓哉がテムーレン戦&ベルト奪還を振り返る─01─「僕のことを研究しすぎていた」

【写真】竹本が開始早々の打撃で、テムーレンの研究と対策を覆した(C)MMAPLANET

9月30日(日)に大阪府豊中市の176boxで開催されたGLADIATOR023にて、竹本啓哉がテムーレン・アルギルマーをスプリット判定で下し、同バンタム級王座を獲得した。
Text by Shojiro Kameike

かつて一度巻いた――そして自らの計量失敗で失ったベルトを取り戻した竹本に、試合映像を視ながらテムーレン戦を振り返ってもらった。まずは1Rから2R中盤までの攻防の裏には、どんなことが行われていたのかを訊いた。


――ベルト奪回、おめでとうございます。テムーレンとは本来、今年12月に対戦予定でした。試合が9月に繰り上がったことは何か影響はありましたか。

(C)SHOJIRO KAMEIKE

「これは結果論になりますが、対戦が早まったのは良かったと思います。試合の随所に、テムーレン選手が僕を研究していることが分かりました。試合が先になればなるほど、その研究や対策の精度は上がっていたはずです。僕も前回の試合(6月、ジェイソン・マルガリョに横三角で勝利)でダメージが無かったですし、正直言って対戦が早くて良かったです」

――では試合を振り返っていきたいと思います。まずファーストコンタクトで気をつけていたことはありますか。

「距離感ですね。試合が始まるまで、テムーレン選手がオーソドックスで構えるか、サウスポーで構えるか分かりませんでした。そこでまず相手の構えを見てから、落ち着いて考えることを第一としていました。神田君との試合は、ずっとサウスポーで戦っているんですよね」

――神田選手も「モンゴルの試合はオーソドックスなのに、自分との初戦ではサウスポーに構えたのは予想外だった」と仰っていましたね。

試合ごとにスタンスを変えて来るテムーレン。竹本戦はオーソドックスでスタートした(C)MMAPLANET

「そうなんです。とはいえ、テムーレン選手は試合中にスイッチしますし、自分も『どちらの構えが良い』というこだわりはなかったです。どちらで構えても良いように練習していたので。そしてテムーレン選手がオーソドックスで構えたので、そこから試合を考えました」

――試合が始まると、意外とも思えるほどテムーレンが距離を詰めてきませんでした。これは竹本選手のほうから何か仕掛けていたのでしょうか。

「いえ、これはテムーレン選手のほうが警戒していましたね。対策を考えすぎていたんじゃないかと思いました。まずテムーレン選手は両手を下げて構えている。これは僕自身が『組みづらいなぁ』と思っていました(笑)。こちらとしては、もっと最初からフィニッシュに繋がるようなパンチを出してくるかと思っていて。それだけ相手は組まれたくないと思っていたのでしょうけど、そうなったら僕のほうからは組みません。

竹本の左ストレートがヒットしたシーン。確かにテムーレンの腕の位置は組みを警戒している(C)MMAPLANET

しかもガードが下がっているから僕の左ストレートがメチャクチャ当たりましたよね。であれば僕もパンチで優位に進められると思って。将棋でいえば『まず相手の歩を取りまくってやろう』という感じで、とにかく顔面にパンチを当て続けました」

――テムーレンが組んできた場合の対処としては、①絶対に倒れずに自分が上を取る②倒れても良いからガードワークやスクランブルで上を取り返す――どちらでしたか。

「②ですね。テムーレン選手の組みの強さは四つです。僕がテイクダウンするにしてもローシングルレッグで。あるいはスイープへの対応は弱いと思っていました。以前、柔術大会でモンゴル人選手の試合を見た時、テイクダウンの2Pから始まる試合が多かったんですよ。一方ガードワークはできないので、モンゴルの選手でボトムから強い人は少ないのかなというイメージを持っていました。だから、この攻防は僕が勝つポイントだと考えていました。

テムーレンも足を抜いてからパウンドを連打すればフィニッシュできていたか――(C)MMAPLANET

でも、僕が足を取りにいった時に受けたパウンドは効きました。このラウンドはテムーレン選手の10-9で間違いないと思います。それこそテムーレン選手のパウンドによるダメージを考えると10-8になっていた展開を、僕がレッグロックで10-9に戻したというか」

――それほどのパウンドを受けながら、竹本選手としてはここで足関節を極めて切ろうと考えていたのですか。

テムーレンも足関節で返そうとしたが「これは見様見真似のように感じた」と竹本(C)MMAPLANET

「ここはアオキロックかヒールで極めてやろうと思っていましたけど、1Rの最後のほうで『ここで極めるのは無理だ』と感じて――極め切ることができなかった理由としては、僕の足関節の精度という問題もあります。ただ、やはりテムーレン選手のフィジカルが強かったです。3Rを通じて、とにかくフィジカルの強さは感じました。最後まで『もう極めるのは難しいだろう』と考えていました。でもテムーレン選手も、この足関で結構ダメージを負っていましたよね。2R、3Rは機動力が下がっていたように見えました」

――なるほど。1Rは取られたと認識しているなかで、インターバルではどのような話をしていたのでしょうか。

「セコンドの鈴木社長も、あのパウンドが効いていることは分かっていて。とはいえ足関節からコントロールしたおかげで、ダメージを受けてからラウンドが終わるまで時間がありました。あとは、どう捕まえるかという話ですね。1Rと2Rで作戦自体は変わらないです。やることは同じ。ただ、テムーレン選手に足のダメージがあるので、1Rよりは捕まえるのが楽になるだろうと考えていました」

――2R開始時点でテムーレンは、グローブタッチに応じませんでした。

「そうなんですよ! あれ、何なんでしょうね?」

――インタビュアーに訊かないでください(笑)。それだけテムーレンも焦っていたのではないでしょうか。神田戦とは表情も違いました。

「あぁ、なるほど。ありがとうございます(笑)。2Rも最初は僕の左がよく当たりましたね。あれは何なのか――」

――とにかくサウスポースタンスの竹本選手が右を出し続けている。そのためにテムーレンは入ってこられず、かつ竹本選手の左が当たっていた……。ですから、こちらが訊いているんです(苦笑)。

2Rにはバックを奪ったものの、ここはテムーレンの研究と対策を感じたという(C)MMAPLANET

「アハハハ。テムーレン選手も足のダメージがあったでしょうし、スタンドではパンチの精度が低くなっていました。ここでテイクダウンしてバックに回ったのは、僕にとっては理想的な展開でした。でもテムーレン選手も、僕が得意としている展開を研究していることは分かりました。僕が直近の試合で見せた横三角に対しても、すぐに対策を講じていた。それは凄いと思います」

<この項、続く>

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