【RIZIN LANDMARK06】佐藤将光が振り返る、太田忍戦─01─「あのカカト落としはめっちゃ効くんですよ」
【写真】トニー・ファーガソンにインスパイアされたカカト落としは嫌がらせではなく効かせる技だ (C)RIZIN FF
10月1日(日)に愛知県名古屋市中区のドルフィンズアリーナ(愛知県体育館)で開催されたRIZIN LANDMARK06にて太田忍に判定勝利した佐藤将光。
text by Takumi Nakamura
スクランブル発信となった一戦では、これまでのキャリアで培った「小技」を随所に効かせ、強力なレスリング力を誇る太田をMMAで攻略してみせた。試合当日には伝わりにくかったら組みの攻防で何が起きていたのかを紐解きつつ、佐藤の今後のキャリアについても訊いた。
――RIZIN初参戦で太田忍選手から勝利を収めた佐藤将光選手です。試合後の反響はいかがですか。
「色んな人に声をかけられるし、しばらく連絡を取っていなかった学生時代の知り合いからもたくさんメッセージが来て、試合が終わったあともSNSのフォロワーが増え続けています。あと僕が思ったのはRIZINにはRIZINファンがいるということ。UFCをはじめ海外のMMA団体を見る人もいると思うんですけど、RIZINだけを見て楽しむファンがいるんだなと思いました」
――今回の試合で佐藤選手の存在を知ったファンも多かったと思います。
「試合後のマイクでも触れた“にわか”論争ですね(笑)。でも実際に僕はRIZINファンの人の目に留まらないところで試合をしてきたので、急遽試合が決まって挨拶で出てきたら『誰?』となるのは仕方ないかなと思います」
――試合そのものは大会1週間前の発表で、実際にオファーがあったのは大会2週間を切った頃だと聞いています。試合に向けた練習や準備の状況はどうだったのですか。
「僕は試合の有無で練習スケジュールが変わる方ではないので、体力的な問題はあまりなかったです。練習そのものも木曜日(28日)までがっちりやって、金曜日(29日)に名古屋に移動して。試合中は普段より多少疲労感を感じたので、ちょっと脱力して(体力を)コントロールしてやらなきゃなぁと思ったくらいです。対戦相手の対策に割く時間はなかったですが、それは太田選手も同じ条件だったと思います」
――短い準備期間でどんな対策を練っていたのですか。
「太田選手はやってくることが予想がつくというか、強い部分=組み&レスリングが突出しているので、そこの対応をどうするかを考えていました」
――試合そのものは佐藤選手の想定内の展開でしたか。
「組まれてケージまで押し込まれるだろうなと思っていたので、そうなった時の腕のクラッチを切る動きと投げられたあとのリカバリー、そこは準備していたものが出せたと思います」
――佐藤選手は太田選手に組まれた時、ケージに身体を預けつつ、半身・もしくは背中を見せてテイクダウンをディフェンスしていました。正面から組まないことは意識していたのですか。
「そうですね。一本でも脇を差せていればいいんですけど、脇を差せずに正面でボディロックされたら、フロントスープレックス系の危ない投げ技を喰らったり、テイクダウンされたらそのまま動けない状況になってしまう。だったら半身になって正面で組まれないようにしていました。あとは背中を見せた時は相手の腕のクラッチを下げて親指から剥がすようにして、相手に力を使わせるもしくは腕をパンパンにさせようと思ったんです。そういうプレッシャーをかけながらギロチンチョーク、アームロック、ネルソン系の動きにつなげようと。仮にがっちり組まれてしまったら抵抗はせず、自分から膝をついて、そこから展開を作るつもりでした」
――では序盤はケージに押し込まれたとしても、太田選手のスタミナをロスさせようと思っていたわけですね。
「はい。ただ相手もさすがで予想以上にスタミナがありました」
――ケージを背にして正対したとき、足へのカカト落としを多用していました。試合後に太田選手もダメージがあった攻撃として、あのカカト落としを挙げていました。
「嫌がらせくらいにしか見えないと思うのですが、実際にやられるとめっちゃ効くんですよ。多分僕の練習仲間はあれを見て『いつものやつをやってる!』と思ったでしょうね。僕は太田選手があれを嫌がって、もっとテイクダウンを狙って動いてくると思ったんです。でも意外にそのままの態勢で我慢してくれたので、僕としてはそのまま蹴り続けました」
――実際に効いている感覚もありましたか。
「太田選手が立っている場所や足の位置がかなり遠くになって、僕にもたれかかるような形になったので効いていたと思います。あの立ち位置・足の位置だったら、投げられることはないだろうなと思いました」
――相手の動きを制するという意味では確実にダメージを与えていたようですね。ちなみにどのくらい前から使っているのですか。
「技そのものは結構前から使っていて、確かトニー・ファーガソンがやっていた技で、それを真似してやってみたんですよ。そしたらみんな嫌がってくれたので、組まれる・押し込まれる展開で使おうと思っていました。僕は対戦相手と比較して、自分の方がレスリングが強いことはほぼないんで、ああいう小技をやりながら動きを作って、その動きの中で自分が有利なところを取る意識でやっています」
――もう一点、佐藤選手は両手で太田選手の片の手を持ってクラッチさせない動きも多様していましたよね。
「あれは力が強い相手に対してツー・オン・ワンで=相手の片手を両手で持って、ボディロックさせないようにしていたんです。しっかり片手をコントロールできていれば、相手は腕一本でテイクダウンは出来ないし、そこから正対すれば僕の方がヒザ蹴りやアームドラッグで逆にバックを狙える。そういう形を狙っていました」
――1R終盤にネルソンのような形で引き込みましたが、あの狙いは何だったのですか。
「あのまま極めるというよりもひっくり返してマウントを取りたかったんです。マウントを取って削る、もしくは肩固め。でも太田選手の頭が抜けてしまって返せなかったですね。あと太田選手は上半身がごついので、ああいう体系の人にはちょっとかかりづらいっていうのもあります」
――想定通りに試合が進んでいたと思いますが、試合中に修正すべきだと思った点はありますか。
「自分からプレッシャーをかけすぎて、距離が近くなって簡単に組ませすぎたのは良くなかったですね。もっとフェイントをかけて、相手が組みに来たところを切って打撃を当てる。もしくは後半になったら組みを切ってがぶって殴る。そこまで持っていければよかったです」
<この項、続く>