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【RIZIN44】ついにクレベル・コイケと対戦、金原正徳「一緒にするなよ!という気持ちはありますよ」

【写真】RIZIN LANDMARK05で山本空良に勝利した時の会見での金原。RIZINで戦うことで、これだけのメディアの質問を試合後に受ける。彼の言葉が、一般メディアに少しでも届くことはMMA界のためになる(C)MMAPLANET

24日(日)さいたま市中央区のさいたまスーパーアリーナで開催されるRIZIN44にて、金原正徳がクレベル・コイケと対戦する。
Text by Takumi Nakamura

ビクター・ヘンリー戦後の引退表明を撤回し、RIZINで芦田崇宏,摩嶋一整 、山本空良と日本人相手に3連勝している金原。今大会でいよいよRIZINフェザー級トップ戦線の一角、元王者のクレベルとの一戦に臨む。金原はクレベル戦を己の格闘技人生を貫く試合と位置づけ、自分がやってきたことを証明したいと話した。


――RIZIN44でのクレベル戦が迫ってきました(取材日は9月15日)。クレベルは元RIZIN王者であり、RIZINフェザー級トップの一角です。日本人相手に3連勝して、そろそろこのクラスの相手と戦いたいという希望があったのですか。

「本音で言ってもいいですか?」

――ぜひ本音を聞かせてもらいたいです。

「自分の中でUFCへの挑戦が終わった時点で、気持ちが続いてなかったというか。トップを目指すという意味では、やっぱりUFCが一番であって、UFC以外はどの山を目指すにしても富士山だと思うんですよ。自分が格闘家としての終着点として、どこを目指すかを考えたときに、富士山を目指すという気持ちにはなれなくて。

もちろん簡単に富士山の頂上まで登れる=日本一になれるわけではないし、そのためにやらなければいけないことはあります。でもそこにモチベーションを向けたり、パワーを注ぐことができなかったというのが正直なところでした」

――RIZIN参戦当初は、こういったキャリアは考えてなかったんですね。

「僕がRIZINに出始めた時期はちょうどコロナ禍と重なっていて、外国人を招聘できないから、日本人同士の試合が増えている状況だったんです。自分の実力的に、コンディションを100パーセントに近い状態まで持っていければ、日本人には負ける気はしなかったし、自分の立ち位置が分かったうえで試合をしていました。だからRIZINで3連勝したからといって、自分の実力が上がっているとか、そういう勘違いはしていないつもりです」

――では僕も本音で質問させてもらうと、日本人選手のマッチメイクが中心とはいえ、金原選手からすると実績・キャリアに差がある、もしRIZINにランキングがあれば下位の選手を迎え撃つという試合が続いたことに対して「なぜ?」という気持ちはなかったですか。

「それはありましたよ、特に前回4月の山本空良戦の時は。今まで自分が積み重ねてきたものを全て否定されたような気持ちになった部分はあります。でも年齢を重ねて若い選手と戦って、踏み台にされることも自分の宿命なのかなとも思ったし。そんな気持ちがあった上で、いざ蓋を開けてみたら、自分が思った通り実力差があることを見せることができたと思うんです。だったら、これからは自分が強いと思える相手とやりたいと思って、その時はヴガール・ケラモフを指名させてもらいました」

――山本戦が王者クラスとやりたいと思うきっかけだったんですね。

「きっかけというか、どうしても選手って試合が近づいてくるとメンタル的に不安になってくるんですよ。僕が山本選手とやった大会は同じ階級のダブルメインイベント(斎藤裕×平本蓮・牛久絢太郎×朝倉未来))の注目度が高かった。自分ではその4人のなかでも俺が一番強いと思っているのに、この4人が注目されるのが日本のMMAの現状だなと思って。フラストレーションやイライラは溜まっていました。

はっきり言えば実力以上に人気がある選手がフューチャーされてしまうこの時代に、俺の格闘家としての存在価値はなんなんだろうって。だったら僕は注目されなくてもいいから、自分が強いと思う相手と戦って、自分が満足してキャリアを終えたいと思いました。僕はずっとそういう道を通ってきた格闘技人生だったから、最後もそれで終わるのがいいんじゃないかなと思います」

――自分が歩んできた道を全うする、金原正徳の道を貫く試合をやる、と。

「僕らの世代は器用じゃないし、SNSを使って上手いことやるとかできないですよ。でも人生をかけて一生懸命、格闘技をやってきた。だったらそれを少しでも多くの人に見てもらいたいという気持ちが強くなってきていますね」

――一方でここ3試合を見て、金原選手の戦い方がより洗練されてきたと感じています。

「外国人選手に勝つためにやってきたことを日本人相手にやっているだけで、もともとの地力に差があるというのは感じます。そこも含めて自分のなかで余裕やゆとりを持って戦えているとは思います」

――摩嶋一整戦のバックステージ映像では、かなり冷静に試合を振り返っていましたよね。試合展開としては逆転勝ちだったにも関わらず、一切慌てていなかったことが印象的でした。

「そこはRIZINルールとユニファイドルールの違いはありますよね。RIZINルールは仮に1・2Rをとられても、3Rに逆転できるルールで、僕はファイトスタイル的に1・2Rとることもできるし、3Rに逆転することもできるので(RIZINルールに)噛み合うと思っています。実際に練習でもRIZINルールを意識したものはやっているので、そこは大きいかなと思います」

――今回のクレベル戦、カード発表会見で「心機一転」という言葉を使っていましたが、そう感じた理由は教えてください。

「クレベルは本当に強い選手だと思うし、今までの感覚でやっていたら絶対に勝てない相手だと思います。20代、30代前半の頃の挑戦者の気持ちを思い出して、身体を作っていこうという意味での心機一転ですね」

――直近3試合のように実力&地力に差がある中で、コンディションを100パーセントに近づけて勝つという試合ではない、と。

「今回は試合に向けた考えが全く違います。ここ3試合は、正直80パーセントくらいのコンディションでも何とか勝てる相手だっと思うんですよ。でもクレベルは120パーセントまで持って行かないと勝てる相手じゃない。だから怪我を恐れず練習量を増やしました。若い頃のように2部練、3部練とやって『疲れた』とか『どこどこが痛い』は関係ない。それで怪我したらそれまでだと思って、厳しく自分を追い込んできました。それがいい方向に出るか、悪い方向に出るかは試合にならないと分からないです。でも最後はやらないよりはやった方がいいと決断して、タイ(タイガ―ムエタイ)にも行きました」

――タイでの練習は今どう影響していますか。

「試合前は不安になることが多い中、『俺はこれだけやってきたから大丈夫だ』と思うことができますよね。まさに昔の僕はそうやって自分に言い聞かせてきた部分があって、今回はそれが出来ていると思います」

――先日公開練習の様子が動画や記事で各メディアにアップされていましたが、僕は試合前にも関わらず芯をついたコメントだったと思いました。

「あれはド正論ですよ」

――公開練習後の囲み取材で「スタンド」と「先手を取る」ことをポイントとして掲げていましたが、僕もこの2つが勝負の鍵だと思っていて。

「はい。そう思ってます」

――そこまで言い切ってしまうこと、それを相手が事前に目にすることは気にならないですか。

「全然気にならないです。僕もクレベルも今更何かを隠してやるようなタイプじゃないし、それがバレたところでお互いどうにかなる選手じゃないんで。自分が試合前にあれをやりたい、これをやりたいと考えるより、リングで実際に向かい合って組んで、そこでどう感じるかのほうが大事です」

――ではそこについても聞かせてください。クレベル選手はレスリングやテイクダウンのアプローチがそこまで積極的ではない分、逆にスタンドの打撃を思い切りやっている印象があります。その意味で金原選手もスタンドが重要という認識なのですか。

「それは少し違って、こちらがスタンドで行き過ぎると組まれるリスクもあるし、逆に間合いが遠くなってクレベルの距離になるのもよくない。だからこそ、そこは試合前の決め事ではなくて、向かい合ってどう感じるかなんですよ」

――なるほど。

「その時の自分の感覚とセコンドが客観的に見たときの距離感とリズム。そこをしっかり把握して戦うことが大事で、それはもう現場合わせでしかできないことですね。僕はそれだけのキャリアも積んできたし、ラウンドごとに修正する引き出しもあるので、あまり試合前に決めきらずにやろうと思います」

――あともう一点、クレベル選手はサブミッションが強い。それは対戦相手なら誰しも分かっていることで、みんな対策を立てて試合をしていると思います。ただそのせいで試合運びがクレベル選手の寝技対策ばかりになり、結果的に受け身になってクレベル選手のサブミッションに捕まるパターンが多い。だから金原選手は「先手を取る」という言葉を使ったのではないかと思いました。

「それはクレベルに限らず、ですね。僕は基本的に先手を取って戦うタイプで、後手にならずに自分からプレッシャーをかけていきたい。仮にテイクダウンされても自分からアクションを起こした結果ならしょうがないよね、と。そうすることで、そのあとの寝技の攻防でも先手がとれるし。最初から後手に回るとテイクダウンされる、背中をつけずにエスケープしようとする…と、どんどん後手後手になるんです。それよりも自分から相手に触りに行って、展開を作っていくことが自分の理想です」

――分かりました。とはいえ過去の戦績を振り返ると金原選手の一本負けは2試合だけなんですよね。

「デビューしてすぐの頃にZSTで佐東伸哉にアームロックを極められたのと、UFCでマイケル・マクドナルドにRNCを極められただけですね。だいぶ対戦相手のレベルが違いますけど(笑)」

――確かに(笑)。ただし金原選手がサブミッションを極められる印象がないのも事実です。

「でもクレベルの試合映像を見れば見るほど『コイツ強いなぁ…』と思いますよ。だからそう感じてからは一切映像は見てないです。クレベルの動きのイメージだけ頭に残しておいて、それ以外にネガティブになる要素には触れないようにしました。勝ちパターンと負けパターン、どちらもイメージしているので、自分の動きを勝ちパターンに近づけることが出来たらベストだと思います」

――これから外国人選手の参戦が増えてくれば、RIZINの見え方や世界観も変わってくると思います。ちょうどその過渡期において、金原選手は自分がやってきた格闘技が何なのかを試合で見せたいですか。

「はい。自分が今までやってきたことは、今のRIZINファイターがやってきたこととは違う。そこを一緒にするなよ!という気持ちはありますよ。で、今回は実際に強い選手とやってみろと言われて、まさに自分がやってきたことの答え合わせだと思うんです。ここであっさり負けるようだったら、お前がやってきたことは他の選手と変わらないじゃんとなるだろうし。クレベルといい試合をして勝つことで、自分がやってきたことの証明ができると思っています」

■視聴方法(予定)
9月24日(日)
午後2時00分~ABEMA, U-NEXT, RIZIN100CLUB,RIZIN LIVE,スカパー!

■ RIZIN44対戦カード

<フェザー級/5分3R>
クレベル・コイケ(ブラジル)
金原正徳(日本)

<フェザー級/5分3R>
牛久絢太郎(日本)
萩原京平(日本)

<ライト級/5分3R>
スパイク・カーライル(米国)
堀江圭功(日本)

<ヘビー級/5分3R>
スダリオ剛(日本)
トッド・ダフィー(米国)

<キック70キロ契約/3分3R>
安保瑠輝也(日本)
宇佐美正パトリック(日本)

<フェザー級/5分3R>
中原由貴(日本)
白川陸斗(日本)

<フェザー級/5分3R>
摩嶋一整(日本)
横山武司(日本)

<フライ級/5分3R>
福田龍彌(日本)
山本アーセン(日本)

<バンタム級/5分3R>
中島太一(日本)
岡田遼(日本)

<ヘビー級/5分3R>
シビサイ頌真(日本)
ヤノス・チューカス(ハンガリーム)

<フライ級/5分3R>
征矢貴(日本)
ラマザン・テミロフ(ウズベキスタン)

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