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【UFN223】連敗脱出&再浮上へ、デンバ・ゴリンボ戦前の佐藤天「上になったら思い切り殴るスパーを」

【写真】正解はなく、正解を求める選択肢が広がることの大切さを佐藤は常に説いてくれる (C)TAKASHI SATO

20日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されるUFN223:UFN0nESPN+81「Dern vs Hill」に佐藤天が出場し、デンバ・ゴリンボと対戦する。

現在3連敗中、崖っぷちの佐藤は今回、試合前に所属するキルクリフFCで日本人選手が4名揃った時間を経験した。佐藤が口を酸っぱくして発言してきた「海外を知らないといけない」という現実が、日本のMMA界にようやく浸透してきた。

加えてキルクリフCFでは、勝率が下がったことで過去の成功例にこだわらず、また最新鋭という部分にもとらわれることな――ガチスパーを採り入れたという。


――今週末デンバ・ゴリンボ戦を控えた佐藤選手です(※取材は18日に行われた)。今回の試合前にエフェヴィガ雄志選手と井上直樹選手が出稽古でフロリダにやってきて、チームメイトの木下憂朔選手も加え日本人選手が4名もキルクリフFCに集まっていました。このようなことは過去の試合でなかったと思いますが、何か心境的に変わるものはありましたか。

「そうですね。やることは変わらないのですが、自分より若い選手と一緒に練習をすることで刺激を貰うことは多かったです。身が引き締まる思いもしましたし、凄く良い影響を受けました。

若い世代の選手が日本から同じタイミングでやってきた。ぼんやりとしてではなくて、上を目指す若い選手が海外で練習することが現実的になってきたかと思います。それは素直に良いことだと思っています。外に出ることが普通……どこにいても良い点、悪い点はあります。日本でもできることがある。そのなかで選手の選択肢が増えることは良いことだと思います。そして海外を選択する選手が増えるのは、自然の流れだと捉えています」

――今回はエフェヴィガ選手に限っては、ABEMAの海外武者修行プロジェクトの一環でCombate Globalで試合もしました。

「コンバテはラテンアメリカでは凄く認知された大会ですし、そこで戦えるのは大きいです。そのようなコネクションが日本にはなかったのが、この企画で実現したことは本当に良いことです。コンバテに限らず、他のプロモーションでも試合ができるようになるんじゃないかという話も聞きましたし。こういうことが増えて、日本と北米の差が縮まってほしいですね。

選手も国内にこだわらず、外に視野を広げることができる。そういう世代が増えてくるかと思います。ABEMAさんのサポートは選手にとってプラスでしかなくて。選手はこのサポートを当たり前と思わずに、やることが大事になってきます」

――本当にその通りですね。ABEMAがTVのドキュメンタリーを制作し、試合もして露出もできる。

「ハイ。ABEMAの海外武者修行プロジェクトから試合ということ自体、普通ではサポートしてもらえないものです。だからこそ、1度で終わらせないこと。継続することが大切なので。今後ABEMAがどのようにビジョンを持っているのかは分からないのですが、連続参戦できる選手が出てくるのかどうか。単発では、厳しい言い方をすると意味がない。だからこそ、もっと広がりを見せ、継続的に続いていってほしいです。選手も、本当にそうでないと強くなれないですから」

――ABEMAのサポートがあって皆が世界を知るきっかけになった。海外での練習が現実的になる。その一歩となるプロジェクトではないのかと。

「選手も自分からアクションを起こさないといけないです。選手に限らず、日本人全般が苦手なんだと思います。言われたことはできるけど……。今後はもっと自主性を持たないといけない時代が来ると思います。本当は以前からそうだったはずけど、自分で考えて行く道を決めていく。格闘技に限らず、そこが大切になってくると思います」

――日本には出る杭は打たれるという言葉があるように、目立たないで全体のなかの1人でいるという国民性がありますし、そのままでは全体で衰弱死をするのを待っているかのような状態です。

「出る杭は打たれる――アハハハハ。ほとんどの人がそこから出ない。でもMMAでは外に出られるように動いて下さっている ABEMAは本当にありがたいです。だからこそ、選手もやってもらうだけでなくて、自分でやってみないと。そこが大切になるはずです」

――今後は日本のMMAジムや産業の発展という部分で、ジムや選手のスポンサーフィーにより海外で練習できるようになっていかなければ。そして、自分に投資できる額によって、何も米国でなくても良い。韓国のKTTなど平日の2時半から5時までが選手練習でプロ選手やプロ志望の選手が20人以上も集まっています。

「ハイ、本当に韓国でも良いと思います。日本にはその環境がないので。なければ、外に求めないと。ただし、本来は日本もその環境を創らないといけない。自分のチームも毎日2部練習をやっています。その環境を今すぐ日本で創れと言われると、本当に難しい。それでも僕のルームメイトでもアルバイトをしていて、その2部練には必ず出て、UFCと契約した選手もいます。

KTTに本気で選手としてやっていこうという人が集まるのだから、日本もそれが当たり前になっていかないといけない。キルクリフFCもヘンリー(フーフト)はトレイナーですけど、オーナーとしてはそういうスポンサー獲得のために動いて、ジムを大きくしてきました。その辺りもプロのチームとしてやっていくなら、ジムとしてやっていくことも必要かと思います。日本は事情が違うので一概にはいえない難しさもあるのでしょうが。

これもいつも通りですけど、だからこそ僕自身が結果を残さないといけないと思っています」

――ちょっといつもより表情が硬い、厳しいようにも感じられるのですか。

「アハハハ。そんなことないです。いつも通りなので、それは勘違いです(笑)」

――良かったです(笑)。では対戦相手のゴリンボですが、全てにおいて粗い。ただし、その粗さが武器になっている部分もあるかと。

「極めとかも、全部粗いですよね。極めて勝っているけど、技術があるわけじゃない。全ての技術が粗くて、ミスも多い。そういう相手だし……そうですね、やるだけです。やれることは全部やってきたので。結果がついてくると信じて、やっています。全ての敗北に意味があったはず。ここを勝ち、再浮上すると思っているので。やることも変わらないし、リラックスもできています」

――キルクリフから今回は4選手が出場します。一時期、連敗を喫したこともありましたが、チーム内では危機感とかなかったですか。

「そこに限らず3年前、一昨年、去年と勝率が下がってきており、そこはコーチもシビアに捉えています。勝っても負けても、理由がある。結果に対してシビアだからこそ、練習中も厳しく選手に接しています。所属選手が増えたから、勝率が落ちたこともあると思います。だからこそ、結果を残している選手には結果を残す理由があるので、そこも力説されています。

それと今年になって連敗を喫した時から、グラウンドから始まるガチ・スパーが練習メニューに加わりました。シチュエーションも増えましたね。大きなグローブですが、上になったら思い切り殴る。そういうスパーをやるようになりました」

――パウンドを思い切り打つのですか!!

「ハイ。1日、一人は倒れているぐらいの。そういう練習を6週間ほどやっていました」

――それはなかなか……全面的に賛成はできない。でも、それだけの起爆剤をコーチ陣も必要と判断したのでしょうね。

「スパイスを投入したのだと思います。理由も説明してくれましたし。『格闘技だから。普通のスポーツの範疇に収まらない』と。結果、皆の意識は変わりました。オールドスクール的ですが、火・水で体がボロボロになる。あのスパーを経験してから、他のスパーリングでも緊張感を皆が持つようになて――選手達の意識が変わりましたね。

ケガをさせない遠慮がちのスパーから、正しい技術を思い切り使って倒すスパーに変わったことで、もちろんコーチもしっかりと目を光らせています。めちゃをやるのではなくて、正しい技術を使う。倒された選手は1、2週間休ませる。チームとして負けた理由を分析して、そのまま放置していない。だから、ガチスパーも一時取り入れて。

あと、最後の調整スパーでもグレッグ(ジョンソン)は『やって良い』って耳打ちしてきました(笑)。『試合と同じ、疲れるような感覚で行け』って。試合と同じ感覚を練習で養うスパーを3分5Rほどやりました。相手は試合前の自分を相手に強く打てないから、『ゴメン』って思いながら打っていました(笑)。

ケガのリスクもあり、絶対的に必要かといえば違うかもしれない。でも今の僕らにはそういう練習を入れる必要があった。結果、盛り返している。振るから、貰っちゃいけない。ディフェンスへの意識も、以前より高まっています。もらっても良いパンチで練習をしていると、やっぱり防御も甘くなる。だからガチスパーはディフェンス面でも、良い効果があります」

――その練習の成果を見せないといけないですね。では最後にファンに一言お願いします。

「頑張ります」

――それだけですか。

「もう、言うことはないです。勝つだけなので」

■視聴方法(予定)
5月21日(日・日本時間)
午前5時~UFC FIGHT PASS
午前4時30分~U-NEXT

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