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【Special】フィリピンMMAを知る。マーク・ストリーグル─01─「ONEとUFC、有名になれるのは?」

【写真】ここまでしっかりとレスリングの練習が行われているMMAジムはフィリピンにはそうはないか。ちなみにストリーグルやラウンドワンMMAのメンバーはコンバットサンボの国家代表でもある (C)MMAPLANET

フィリピンMMA界の今──をプロモーター&マネージャー、ファイター、そして指導者の目を通して伝えたい。その第2弾は世田谷育ちの元ONE&UFCファイターのマーク・ストリーグルの登場と相成った。

東京、世田谷の有名インターナショナル・スクールから南カリフォルニアサンディエゴの大学に進学。日本でテコンドー、レスリングを学び和術慧舟會GODSで柔術のMMAの手ほどきを受けたストリーグル。アジア各国で戦い、LEGEND FC、PXCを経てONEへ。その後はUFCとの契約を目指し、実現させるも0勝2敗でリリースされた。

そのストリーグルはラウンドワンMMAを母国フィリピンで率い、選手育成と現役生活とプレイング・マネージャー的な活動をしている。日本を知り、北米を知り、アジアを知るストリーグルにフィリピンMMAの今を尋ねた。


──フィリピンに初めて取材に来た10年前に、ここマニラにあったアーヴィン・タグレが主宰するサブミッション・アカデミーでマークに初めてインタビューをさせてもらいました。正直、あの頃はもっとフィリピンのMMAは世界に進出できると期待していたのですが、決して簡単ではなかったです。その一方で、選手たちの技術、理解力はしっかりと上がっています。

10年前、2012年11月のマーク・ストリーグル

「イエス、あの頃と比べるとフィリピンのMMAシーンはすっかり変わったよ。

当時はフィリピンのMMA大会はURCCとPXCだった。そのPXCはなくなった。でもONEチャンピオンシップをはじめ、多くのプロモーションが活動している。当時とは全然違うよ」

──当時と比較してMMA人気の高さはどのようなものでしょうか。

「凄く人気があるよ。10年前よりずっと人気は上がっている。ONEのような大きな大会があり、フィリピンのローカルショーで最大のURCCは今も活動している。それだけでなく、フィーダーショー的な高いも凄く増えている」

──コロナの影響でMMA大会は少なくなったという意見も聞きましたが……。

「確かにCovidの影響で政府がとても厳しい感染対策を行っていた時期は、MMA大会は開けなかった。でも今ではオープンになり、多くの大会が行われるようになったよ。ONEの開催数も増えるだろうし、URCC Globalは明日もオカダ・カジノ(ニノイ・アキノ国際空港の西隣に位置するシーサイドト開発地域ある、全室にジャグジーを備えた高級ホテル・カジノリゾート)でイベントを開く(※取材は12月5日に行われた)。ヘッドラインは3✖3の試合なんだ」

──……なんとも悪趣味な。

(C)URCC

「アハハハハ。クレイジーだよ。チーム・フィリピン✖チーム・コリアっていうのが組まれていて」

──ノー。私は勘弁です。そういうのは……。

「アッハハハハハ。ただし、その試合以外のカードは良いんだ、そんなにクレイジーでなくて、ワイルドでもない試合で。これからの選手のファイトが多く組まれている。それにウィル・チョープが暫定ウェルター級王座決定戦に出場するよ(※結果はアーヴィン・チェンを破りベルトを巻いた)。

URCCを筆頭にUGB(Underground battle)やWFP(Warriors Fighting Promotion)、他にもグラスルーツのショーはたくさん行われている。そこで活躍してONEチャンピオンシップやURCCにステップアップするための大会がね」

──ファイトマネーで生活がしていけるのは、ONEの選手ぐらいでしょうか。

「5万ドルのボーナスを手にした選手は大丈夫だろうけど、それ以外の選手は仕事をしているだろう。年に2、3試合と戦える選手も大丈夫かな。でも年に1試合ぐらいの選手は仕事を持たないと生きていけないよ」

──現状、若い選手にとってUFCとONEどちらがメインゴールとなっているとマークは考えていますか。

「正直、彼らはそのどちらかに行きたいと思っていて、どちらかが絶対ということはないはずだ。UFCかONEを選ぶことはないよ。片方のプロモーションから声が掛かれば、若い選手たちはハッピーに違いない。フィリピンの若い選手にとってUFCとONEの2つがゴールだからね」

──とはいえONEはコロナを経てなお、フィリピンで大会を開いています。一方UFCは2015年に1度イベントを開き、2016年にショーがキャンセルされて以来マニラに戻ってきていません。

「それこそが、フィリピンにとって悲しい事実だよ。UFCは6月にシンガポールで大会を開いたけど、フィリピンだけでなくアジアで活発な活動をしていないから」

──UFCはRoad to UFCをアジアで開きました。

「凄く良いことだ」

──ただし、そこにフィリピンの有力な顔触れはいなかったです。アジアのパワーハウスから参加選手は1人でした。

「その通りだ。それもUFCがアジアではそれほどイベントを開いていないことが影響していると思う。ONEチャンピオンシップのようにね。ONEはいつもアジアでイベントを行っている。だからフィリピンのファイターもONEに興味を持っている。それでも、UFCでも戦いたいんだよ」

──UFCで戦う困難さを理解しているからこそ、ONEで戦いたいという気持ちも膨れ上げるのでしょうね。

「イエス、イエス、イエス」

──マークも知っての通り。

「ホント、身に染みて分かっているよ(笑)。アジア以外で戦う、米国のチームに合流して時差ボケを解消して戦わないといけない。正直、アジアの選手がUFCで戦うことは簡単じゃない」

──UFCが世界最高と分かっていても、日本では知名度がない。だから国内トップのRIZINで戦うという選択も当然のようにあります。RIZINで戦う方がUFCで戦うより有名になれるので。同じようにフィリピンではONEの選手の方が、UFCファイターより有名になれることはないですか。

「そこはね、もう選手個人がどれだけソーシャルメディアを活用するかだよ。今のディジタル世代にとっては、個人の個別のマーケティングにかかって来る。日本でもアサクラ・ブラザースはYouTubeのコンテンツであそこまで有名になっているじゃないか。彼らが有名になったのはYouTubeで活動しているから。

実際に僕が自分のブランドを確立できているのも、ソーシャルメディアで積極的に活用しているからでもあるんだ。YouTube、Facebook、TikTok、Instagramでしっかりと活動している。UFCもそうだろう。ショーン・オマリーのようにね。もう10年前じゃないんだ。ファイターはエンターテイメントとして、自分自身で自分を売りださないといけない。これまであったコンテンツから飛び出して、人々に自分を知ってもらう。練習だけをやっていれば良い時代ではないんだよ。日々を自分で伝えていく。そこがハマれば、自分のブランドはより大きくなる」

──そこばかりが注目されて、実力不足に陥ると業界はおかしくならないですか。

「そりゃあダメだよ(笑)。ちゃんと練習して、ソーシャルメディアも活用するんだ。バランスを取らないとね。どちらかに偏っているのは良くない。練習に専念して、ソーシャルメディアを一切にやらない。それでも良いだろう、試合に勝てばね。でも、試合に負けると誰もその選手のことは知らないままだ。ソーシャルメディアを駆使して、自分でファンを開拓しないと誰もその選手に興味を抱かない。ファンがいない選手になるよ。

トレーニングをベリー・ベリーハードに行い、自分をソーシャルメディアで売り込む。そのバランスを取ること。若い選手がソーシャルメディアで自分を売り込むことばかり考えて、ファイターとして技術が備わっていない状況に陥ると、どううやって戦えば良いのか。その一方で、YouTubeボクサーに見ても分かるように、スキルに関係なく人々は彼らの試合をチェックしているからね」

<この項、続く>

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