【RIZIN LANDMARK04】金網RIZIN最恐──倉本一真と戦う、元谷友貴「相手の距離は無視します」
【写真】岡田遼的なファイトは、元谷も得意なところだろうが──2年半前と比較すると、MMAをより理解した倉本は圧が違うという見方ができる。それだけに元谷の距離の取り方は非常に興味深くなる(C)SHOJIRO KAMEIKE
6日(日)、名古屋市中区のドルフィンズアリーナで開催される「RIZIN LANDMARK 4 in NAGOYA」で、元谷友貴が倉本一真と対戦する。
Text by Shojiro Kameike
2011年にプロデビューし、翌年にDEEPフライ級王座を獲得した元谷も、キャリア11年を数えるベテランファイターとなった。昨年行われたRIZINバンタム級GPでは2回戦敗退となったものの、以降は3連勝。現在は地元の石川県から名古屋へ活動拠点を移している元谷に、現在の練習と心境を訊いた。
勢いに乗る倉本といかに戦うのか。そのポイントは、元谷の距離だ。
――石川県出身の元谷選手ですが、現在は活動拠点を名古屋に移しているのですね。
「はい、名古屋にいるんですよ。プロ練みたいな形でガイオジムと志村道場でお世話になっていて、名古屋のプロ選手が集まってスパーリングしています。あとはstArt Japanですね」
――なぜ名古屋に移ろうと思ったのでしょうか。
「一度、2年ぐらい東京に行っていたじゃないですか。トーナメントで負けて(2021年9月、RIZINバンタム級GP2回戦で瀧澤謙太にKO負け)、石川に戻ったんですよ。そこから石川で、どうやって練習していこうか考えながら週末は名古屋へ練習しに行っていて」
――ずっと名古屋では練習していたのですね。
「そうです。東京へ行く前も名古屋には来ていて、その時も東京へ行くか名古屋に行くかって考えていました。その時は良いタイミングがあって、東京へ行くことになったんですけど」
――では名古屋に移住したのは、最近のお話なのですね。
「去年の大晦日――金太郎戦までは石川にいて、名古屋に引っ越してきたのは今年の2月ぐらいです。おかげさまで練習しやすくなってきました」
――今回の倉本一真戦は名古屋で行われます。現在は、名古屋に対して地元意識のようなものはあるのでしょうか。
「あぁ、それは結構ありますね。地元感というか。もともとプロデビューしてから初期は、DEEP公武堂ファイトとか名古屋で戦うことも多かったですし」
――では今年に入ってから、名古屋での練習で新しく始めたことや、それが試合で出せたものなどはありますか。
「まだ試合では出てないんですけど、良い感じにはなってきていると思います。うーん……」
――試合前なので、具体的なことは言いにくいですか(笑)。
「アハハハ、そうですね(苦笑)。技術的な面でも新しいことを学べていますよ。やっぱり日沖さんのパーソナルトレーニングを受けているので」
――stArt Japanでは、日沖さんのパーソナルトレーニングを受けているのですか。
「はい。パーソナルを受け始めたのは前回の試合(今年7月、太田忍に判定勝ち)のあとからで、週1のペースですけど、それでもすごく勉強になっています。名古屋に来たのも、いろんな人と練習したいからで。なかでも日沖さんは強くて、キャリアも長くて、何でも知っているMMAの教科書みたいな人ですから。その日沖さんの技術を学びたいと思いました」
――パーソナルトレーニングを受け始めたのは太田戦後ということは、今回の試合がケージであることは影響しているのでしょうか。
「いや、それは関係ないですね(笑)。特にケージの練習をしているっていうわけではなくて、ケージの試合も含めたいろんな練習をさせてもらっています」
――そうだったのですね。ケージでの試合は昨年2月の昇侍戦以来となるので、ついそうではないかと思ってしまいました(笑)。
「アハハハ。ただ、やっぱり自分の中ではケージのほうが得意だとは思っていますよ。でもケージだからっていうことじゃなく、自分がずっと全て足りなくて。ずっと全てやらないといけないと思い続けています」
――元谷選手のプロデビューは2011年で、もうキャリア11年のベテランです。それでもまだ、全て足りていないと思いますか。何か足りないものを補っているということではなく。
「それは思いますよ。練習でも試合でも、いつも自分は何も分かっていないなぁと感じています(苦笑)。MMAはやることが多いので、やってもやってもゴールがないというか。もう無限な感じがしますよね。だから今も、どの局面でも、まだまだやなって思います。打撃でもレスリングでも、寝技でも。自分はどの競技でもトップを取ったとか、そういう経験がないので」
――それでも最近は、テイクダウン・ディフェンスというより倒されても早く立ち上がるという意識は強まっているように感じます。以前はどのポジションからでも極めにいくような印象がありました。
「そうですね。最近は下にならないようにしていて、寝技でも下から狙うことは少なくなっていますね。やっぱり対策されていて、下からの技は掛かりにくくなっているんですよ。特に太田選手はガブりが強いから、倒されてもすぐに立つ練習はしていました。下から狙っても極めることができずに、そこで疲れちゃったら盛り返すことが難しいじゃないですか。だから今はずっと、下にならないことは意識しています」
――では今回対戦する倉本選手の印象を教えてください。
「すごい爆発力がありますよね。以前はジャーマンで投げているイメージがありましたけど、最近の試合ではパウンドが強いっていう印象です。あと、試合は見ていないしパウンドじゃないけど、掌底で相手の顔面を破壊したんですよね? とにかく攻撃力が強いです」
――ずっと同じバンタム級で戦ってきた選手ですが、これまで倉本選手のことを対戦相手として意識したことはありますか。
「それが、無いんですよ。意外と今まで対戦するかもっていう話もなかったので。もしRIZINのトーナメントで、お互い勝ち上がっていたら――っていうぐらいで」
──元谷選手が倉本選手より上回っているところは、どこだと思いますか。
「上回っているところ、うーん。レスリングとパワーは負けると思います。でも、それ以外は……。これは打撃でもレスリングでもなく、MMAなので」
――元谷選手の年齢とキャリアで、瀧澤選手に敗れたとき、その後のキャリアについて考えることはなかったのでしょうか。
「とりあえず、また一歩ずつ頑張っていくしかない。どう練習していこうかと、ゆっくり考えました。ただ、自分の年齢やキャリアは気にしていないです。今まで怪我もないですし」
――キャリア11年で、大きな怪我をした経験はないのですか。
「そうですね。ダメージも……日頃からダメージを溜めないよう、そんなにハードなスパーはしないんです。それはキャリア初期から意識していました。とにかくダメージを受けたくないから、ハードなスパーは避けてきて(笑)。試合でダメージが見えてきたら、その時はその時で考えます。
でも僕って、試合でそんなにダメージを受けている印象ないですよね? 堀口戦(2017年4月、堀口恭司に判定負け)のあとは頭痛があったり、あとはKO負けした時ぐらいで。もともと被弾することも少ないし、試合後もダメージが残ることは少ないんですよ。自分の距離で戦えている時は、自分のほうがずっと削ることができていると思います」
――ご自身の中で一番大切にしているのは、その距離ですか。
「はい。距離は大事だと思っています。絶対に自分のしたいように動ける距離で――相手の距離は無視します。練習でも、相手の良い距離に入るか入らないか、それぐらいの意識で。入る時にどうするか、入らない時にどうなるか。まず足を止めて打ち合うということがないんですよ。打ち合うような距離になったら、すぐテイクダウンに行ったりだとか」
――確かに、これまで元谷選手が打撃で打ち合っている印象はありません。
「キャリア初期はよく打ち合っていましたけど、それも打ち合いというか自分がバーッと手を出していただけで(笑)。相手の攻撃を被弾した経験は、そんなにないです」
――先ほどMMAはゴールがないと仰いました。ではファイターとしてのゴール、今の目標はどこにあるのでしょうか。
「やっぱりベルトは欲しいです。今すぐにでもベルトを巻きたいんですけど、最近はそれも叶わず、ズルズルここまで来ていて(笑)。反対に、いつまで戦い続けるかっていうことは考えていないですね。たぶん――壊れるまで、じゃないですか。アハハハ」
――壊れる……これまでダメージを溜めないようにキャリアを送ってきて、これから壊れるようなことは起こりえますか。
「もちろん、格闘技ですから。十何年やってきて、年齢も重ねて、いろいろ少しずつは溜まってきていますよ。KO負けすることもあるし。壊れたり、あとは連敗して気持ちが乗らなくなったら、どうするか考えますね」
――今はまだ、気持ちが乗り続けているということでしょうか。
「そうなんです。まだまだ……悔しいっていう気持ちが強いんですよ。練習でも試合でも。勝っても負けても。その気持ちがなくなったり、上を目指すことができなくなったら、すぐに辞めますね。ずっと上を目指していきたい。だから続けています」
――なるほど。試合まで残り4日となりました(※取材は11月2日に行われた)。現在の仕上がりはいかがですか。
「ここまで怪我もなく、体調も崩さず来ているので。ただ、調子が良い時は試合で調子が悪いんですよね(苦笑)」
――えっ……。
「なぜでしょうね? コンディションが良い時は、調子こいちゃうんでしょうか。コンディションが悪くて練習できていない時のほうが、試合は良かったりするので。今から減量でコンディションを落として試合当日を迎えます(笑)」
――アハハハ、そう言えるほど調子は良さそうですね。では最後に、MMAPLANET読者の皆さんへ意気込みをお願いします。
「今週末の倉本戦でしっかり勝って、次につなげたいと思います。応援よろしくお願いいたします!」