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【NEXUS29】「アイツと対戦するやろうなって」&「負ける要素は一切ない」 河名マスト戦へ、寿希也節全開!!

【写真】後光もさす、寿希也節。不言実行は伝えようがないので、有言で実行しようとしている選手は大歓迎です(C)SHOJIRO KAMEIKE

7日(月)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるNEXUS29で、寿希也が河名マストと対戦する。
Text by Shojiro Kameike

プロデビュー以降、ビッグマウスとともに3連勝した寿希也は、今年5月にフェザー級王座へ挑戦したものの、王者の山本空良に敗れている。今回は再起戦となるが、相手は元グレコU-23世界王者の河名マストだ。強豪との連戦に、寿希也は何を思うのか。そんな彼は意外なMMA観の持ち主だった。

と同時に、止まらないビッグマウス。敗北を振り返るのも、河名との対戦にしても『俺様振り』が止まらない寿希也節を堪能してもらいたい、


――試合に関するお話の前に……まず寿希也というお名前の由来から教えていただけますでしょうか。

「お父(おとう)が辰吉丈一郎のファンで、辰吉の息子と同じ名前をつけたと聞きました」

――やはりそうですよね。寿希也選手は3歳から柔道をやっていたそうですが、辰吉さんのファンであったお父さんは、ボクシングを習わせようとは思わなかったのでしょうか。

「柔道を始めたのも、幼稚園の時に自分が泣かされて帰ってきたのがキッカケらしいんですよ。兵庫県たつの市の出身で、周りにボクシングジムはなかったんですけど、何か格闘技はやらせたかったんでしょうね。お父は柔道も好きやったんだと思います。それで少年柔道教室に連れて行かれて。僕は泣き虫やったから、根性つけさせるために柔道を始めさせたという感じでしたね」

――ボクシングに限らず、当時は柔道以外のスポーツに興味はなかったのですか。

「小学校6年間は、柔道と並行してサッカーもやっていました。中学校の時はサッカーで、市の選抜や県の選抜になっていたぐらいだったんですよ。柔道も小学校の時に県3位になったりとか。それで中学校の時に、柔道を選びました。スポーツは柔道とサッカー、あと水泳ぐらいしかやっていないです」

――「ぐらいしか」、ではないです(笑)。それだけ子供の頃からスポーツをやっていると、体は強くなるでしょう。

「いや、体が大きくなったのは大学に入ってからです。高校を卒業する時の体重が、58キロぐらいでしたからね。周りと比べてもメチャクチャ小さくて、だから技術、技術っていう感じで試合をしていました。でも高校では県大会にすら出られなくて。それでも親を全国大会に連れて行きたくて、大学に入って柔道を続けようと思ったんですよね。そうしたら大学時代に急に成長期が来て、体重が70キロを超えました」

――大学に入って体を鍛えたということではなく、自然と大きくなっていったのですか。

「それもあるし、あとは自分も高校までは、柔道をやらされていたっていう感じやったんですよ。柔道は好きやけど、そこまで考えてやっていなかったというか。でも大学に入ったら寮生活が始まって、ちゃんと柔道をやらなダメやと思ったんです。そのために大学へ入ったんやからって。大学に入ってから体づくりもメンタルづくりも勉強して、大学1年生の時に日本武道館へ行きました」

――全国大会に出場したということですね。ただ、子供の頃から柔道、サッカーそして水泳をやっていると、体の内部も強かったのではないですか。

「もともと運動神経は抜群でした。小さい時から、相手の動きを見たらそれをコピーできる能力があったんですよ。漫画みたいな話で、言葉で説明するのはメッチャ難しいですけど」

――柔道時代は、誰の試合を見ていましたか。

「野村忠宏さん(柔道でオリンピック3連覇)です。他にも強い選手の試合は、全部見ていましたけど、野村さんは神様ですよ。一つの技を磨いて、背負い投げが代名詞になって。柔道にはいろんな技があるのに、あれだけ一つの技を突き詰めて世界で勝つとか。そういう柔道がメッチャ好きでした」

――なるほど。山本空良戦では敗れはしたものの一本背負いで相手を投げる場面もありました。一方で現在、MMAでは参考にしている選手はいますか。

「堀口恭司です。MMAに関しては、才能や感覚で戦うというのは、ちょっと違うと思うんですよ。試合では機械的に動いて、考えていることをそのまま出す。感情をまったく出さない。そういう選手が一番強いと思っていて、その一人が堀口恭司なんですよ。試合を見ているとシンプルにカッコいいし。あとはキム・スーチョルですかね。キム・スーチョルの動きは、MMAとして完成形やと思っています」

――キム・スーチョルですか! 当たり前の話かもしれませんが、完全にMMA思考ですね。柔道出身ということで、参考にしている選手として柔道ベースのMMAファイターの名前が挙がると思っていました。

「僕は柔道時代のプライドを全部捨てたので。元柔道家って言われるのが好きじゃないぐらいなんですよ。それはバックボーンにすぎないし、だから強いっていうわけじゃなくて。柔道やっていたから四つが強いとは限らない。それはレスリングも同じじゃないですか。MMAはMMAやと思うんで、バックボーンは気にしないです」

――その考え方は、MMAを始める前から持っていたものですか。それともMMAを始めから、そういった考えになってきたのでしょうか。

「柔道でオリンピックを目指そうと考えた時から、こういう考え方になりました。どうやったら強くなるのか。それだけで。言葉で表現するのは難しいですけど……」

――それは考えながら試合をするというより、常日頃から考えていることが試合ですぐに出るよう、染み込ませておくということですか。

「僕は両方ですね。パッと持っていくところは持っていきます。それは野性的な感覚だと思うので。壁際の攻防だったり、コンビネーションだったり……あるいは練習の時のパフォーマンスを、どれだけ試合で出すことができるか。それは日頃から考えていないと、できないことなので」

――プロ3試合目で唐沢タツヤ選手と対戦し、下から三角で捉えたあと、パウンドを連打しながら腕を伸ばして仕留めました。あの流れるような一連の攻撃は、試合を進めながら考えたものだったのですか。それとも体が勝手に反応したのでしょうか。

「唐沢戦は……実は当日計量で脱水状態になっていて、入場の時に足がつっていたんですよ。」

――えっ、そうだったのですか!

「試合を見返してもらったら分かると思うんですけど、マウントを取られている時に僕は手で足を伸ばしているんですよね。試合後にネットで『寿希也はテイクダウンを取られるとか、腰が強くない』とか書かれていて。そうじゃなくて、足がつっていたんですよ(笑)。足に力が入っていなかったです」

――……。

「でも1Rに、上を取ってパンチを打っていたら、相手が自分の体の真ん中に頭を入れてきていたんですよね。僕は三角が得意だったので、インターバルの時にセコンドへ言ったんです。『足に力が入らないので、テイクダウンに来たら下になって、ヒジを出しながら三角を狙います。だから時間を教えてください。その時間で判断しますから』って」

――足に力が入らない状態で三角を狙ったのですか。

「あれは足に力を入れていないです。打撃をメインにして、相手の動きに合わせて足を組んだんですよ。ただ、あれでは極まらないと思ったので、切り替えて上になりました。それで三角ではなくストレートアームバーで極めたんですよ」

――足に力が入らない状態で勝利できたことは、ご自身の中で自信になったのではないですか。

「いや、僕は最初から自信あったので(笑)」

――アハハハ、では次のタイトルマッチで山本空良選手に敗れたことについては……。

「試合内容については、どう見ても途中まで自分が勝っていたと思うんですよ。もちろん結果は負けたので、言い訳はしないです。でも、あれだけRIZINで活躍している選手を、MMAを始めて間もない自分が打撃で攻めることができたので。それに山本さんがどれだけ体が強いといっても、僕のことを漬けることができたかといったら、そうじゃない。僕が立って、盛り上げようと投げに行かなかったら、そのまま僕が勝っていたと思うので」

――2Rにバックを取られて立ち上がった時、寿希也選手が相手を振り落とそうとしていました。あれは試合を盛り上げるためだったのですか。

「そうです、投げられるかなかと思って(苦笑)。あれは山本さんが巧かったですよね。経験の差です。それは認めます。やっぱチャンピオンやなって。

逆にオイシイと思いましたよ。山本さんは、ずっと活躍しているじゃないですか。自分もワケ分からん選手に負けたわけじゃないので。あれだけの選手に負けたんやったら――と。だって、自分はMMAを始めてから2年ですよ」

――そういえば、まだプロデビューしてから1年半しか経っていないのですよね。

「経験は必要ですよ。MMAは経験が全てだと思うし。やることが多いから、新しい技術を身につけて、試合経験を積んで……。試合でその差が出ます。0コンマ何秒の世界で。だから経験の差はどうしようもないですよ」

――前回の試合から6カ月間で、その経験の差は補うことができているのでしょうか。

「はい、補えていると思いますよ。名前は伏せますけど、今はRIZINに出ているファイターとも練習していて。木曜日はマスタージャパンで、SASUKEさんと一緒に練習させてもらっています。今はSASUKEさんが僕の組みを嫌がっているぐらいで。RIZINファイターの練習でも、僕は負けていないです。

でも、あの人たちは試合感覚が凄いんですよね。あれだけの大舞台で、自分の力を――練習でやってきたことを、しっかり出せる。やっぱりそれは大事ですよ。良い練習ができているだけじゃダメなんやなって。

でもそういう人たちと練習していたり、それこそ山本空良っていう名前のある選手と試合したことで、自信にはなりましたよ。負けましたけど、オレはこれだけ打撃ができるようになったんやと」

――そして、次の試合も名前のある相手との対戦となりました。

「嬉しいですよね。メッチャ楽しみです。アイツが出て来た時から、アイツとは対戦するやろうなと思っていたので」

――アイツ……。

「絶対どこかで試合するわと思って試合はデビューした時から見ていました。強いですよ。僕がKOされたり、グラウンドで一本取られることはないと思います。でも試合運びが巧い。相手を自分の土俵に入れる試合運びが巧いですよね。何より、一つのことを徹底してやってきますから。厄介やと思うのは、そこです。ただ、アイツに負けてきた人たちと自分は違うところがあるので」

――それは興味深いお話です。どういったところが違うのでしょうか。

「それは試合前だから言えません(笑)。一つ言えるのは、ケージ際の攻防と距離ですね。アイツに対して、まだ誰もやっていないことがあるんですよ」

――なるほど。その攻防が試合で見られるのを楽しみにしています。

「それにね、やっぱり自分は格闘技界でまだまだ知られていないと思うんですよ。だから今回勝ったら名前も上がるやろうし……何やろう? 負ける要素が見つからないです」

――負ける要素が見つからない!!

「寝技も強くなっていると思いますよ。ロータス世田谷で練習しているわけやし。ただ、打撃はできないので。今までアイツが対戦した選手やったら、自分は全員勝てます。相手にならないと思いますよ。まぁ、ナンボ言うても試合で結果を出すしかないので、とにかく今は楽しみです」

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