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【ONE156】世界に立ち向かうJ-MMAファイター(04)川原波輝「悩んでいる自分が凄く小さく思えた」

【写真】和風なサクラメントでの棲家。コーンヘアーで戦うために、髪の毛を伸ばしているそうだ (C)MMAPLANET

22日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE156「Reloaded」で川原波輝がダニエル・ウィリアムスと対戦する。

ウィリアムスはONEのムエタイ戦で、ロッタン・シットムアンに判定負けも大健闘といえる奮闘ぶりを見せたストライカーだ。ムエタイ2団体で王者となり、日本ではK-1にも出場経験がある。その後、2月にMMAでデェダムロン・ソーアミュアイシルチョークを右ボディストレートで下している。打撃は滅法強い。ただしMMAファイターとしては未知数。そんなウィリアムスと川原が戦うONEストロー級戦線は、UFCに無い階級で文字通り世界一の陣容が揃っている。ここで頂点に立つことは、世界の頂点に立つことを意味する。

2022年、春~世界に立ち向かうJ-MMAファイター特集~。第4弾は、ONEストロー級という場で世界一になるために、アルファメールで練習を積みウィリアムと2週間後に戦う川原波輝に話を訊いた。


──22日にダニエル・ウィリアムスと戦います。今サクラメントですが、いつ頃にシンガポールへ向かうのですか。

「1週間後、来週の土曜日ですね(※取材は4月8日(金・同)に行われた)」

──東京経由でシンガポールですよね。日本からだと7時間程度、サクラメントから現地入りするより相当に楽かと思われます。

「そうなんですよねぇ。サクラメントからサンフランシスコ、日本までで12時間ぐらいあって……トランジット、そんでシンガポールですからねぇ。ただ、これから僕はビザも取ってこっちに住んでやっていこうと思っています。だからアルファメールで最後まで調整し、サクラメントから試合に向かいたいんです。

アルファメールの人間は世界中から集まっていて、皆、サクラメントから試合に向かいます。だから特別、自分がしんどいことをしているわけでもないですし。それがアルファメールの選手のファイトライフなんで。実際2週間前に一回帰国して、時差ボケをなおして最終調整を日本ですることも考えました。でも、アルファメールで最後まで調整して、アルファメールの皆に送り出してもらいたいって思ったんです」

──当初はワクチン接種をしないと聞いていたのですが、アルファメールで練習するために主旨変えしたと聞いています。

「人生、賭けていますからね。ワクチンを接種しようが、コロナがあろうが……あるまいが人間なんていつ死ぬか分からないです。やっぱり大切なのは今、で。今を思い切りやらんで、何年後とか老後とか考えても……。僕、今が勝負時なんです。接種するかしないかと考えすぎて、鬱になるんちゃうかって。それぐらい考えました。でも、それって接種していなくても鬱になりそうで(笑)。結局、マインドなんかなって」

──ワクチン接種に関しては、色々な指摘があります。ただ、川原選手はそういうことではなく、以前にアナキラシーショックがあったと聞いていました。

「過去に2回なっているんです。揚げ豆腐とミカンで」

──えっ……。

「アレも今となったら、マインドやったって思うんです。だって揚げ豆腐もミカンも食べることできますから。多分、ああいうアレルギー症状って精神的なことが関係しているって判断したんです。もちろん僕の場合は、ですよ。でも、ミカン食ってそんなんなるって他に聞いたことないですし。それまでは食べていたわけやし。

でも、アレになった時は夢もなく、やりたいこともない。凄く迷っている時やって。皮膚に異常が出たりして。アレルギーなんて、結局のところ原因はあんまり分からんことが多いじゃないですか? 僕は自分が弱っているからやって解釈したんです」

──う~ん……。それで接種を決めたと?

「怖かったですよ。米国にいると、反対派も賛成派もハッキリしていて。日本みたいに何となくっていう論議じゃないんです。アカンって言う奴は命を懸けているかの勢いで反対理由を説明してきますからね。あんな風に本気で、こっちの目を見て話されると……信じちゃいそうになります。だから、接種するのも怖かったですし」

──MMAのサイトで話すことではないかもしれないですが、自分は「どうなるか分からん。でも、接種しないと海外でMMAの取材ができなくなる日が来るかも。それなら接種しよう」という一択でした。息をするのと生きるのは違う。MMAの取材ができないなら、俺の人生ではないなって。無責任ですけどね(笑)。ただ消費税も決まった額を文句言わず支払う。所得税も払う。『こんなに高いのか』と不満があり、将来の保障にもならないけど払う。そういうシステムのなかに生きているので。それで好きなことをやるしかない、と。

「それ分かります。一択の人って強いですよね。打たざるを得ないポジションの人っていると思うんです。ノーという選択がない人が率先して接種している。その人達の方が、確固たるものがあって。接種しない人も、そこまで確固たるものがあれば良いと思うんです。

それが海外で試合も練習もできない。日本でやっていく……これが終わるまでっていうのも選択の一つですよね。どっちだろうが選択肢の無い人の強さと比べて、悩んでいる自分が凄く小さく思えたんです。僕はアルファメールで練習したいし、ONEで世界一になりたい。それなのに悩んでいたんか……一択の人のように覚悟がないって。MMAで食っていこうとしているのに、自分の好きなことも我慢して生きている。なんか、苦しくて……」

──もう、これには答がなくて。選択肢がないから、覚悟があるわけでもないと自分は思っています。ただ一つ言えるのは、川原波輝は真面目で、本当に真剣に生きているなと。

「接種するって決めたら、気持ちが固まって──もう平気です。それにABEMAの北野さんが、接種後にアナキラシーショック症状が出た時のため、その万が一のために色々と用意までしてくれて。こんな俺のために、こんだけしてくれるんやって……。ワクチン接種の是非は分からないんです、僕には。でも、色々と経験できました」

──そう本人が思えるなら……。人生の分岐点、どちらを選んで後悔しないことはないですからね。ところでサクラメントに戻るまで、日本ではカルペディエム芦屋でグラップリングのプロ練だけでなく、一般の柔術クラスに出ていたと伺いました。

「自分が岩崎(正寛)さんのところへ行くんやったら、柔術のクラスで指導を受けるのが礼儀やと思うんです。ちゃんと教えてもらうなら、それなりの姿勢で臨まなアカンって思って。最初、飛び込みで体験クラスに行ったんです。何て言うんか……柔術家とMMAファイターは自分のなかでは別なんです。

柔術家の岩崎さんに、柔術を教えてもらいに行く。僕は青帯ですから、柔術は。なら青帯が柔術の黒帯の先生に習うように道場に通うのが当然なんで。だから月謝も払うつもりでしたし。そうしたら岩崎さんが『前にプロ練習で会ったことあるし。払ってくれたお金も返す』って言ってくれて。僕はそんなつもりはなかったので、ご厚意には甘えさせてもらいましたけど、その言葉を聞く以前に支払ったモノだけは受け取ってもらいました」

──いやぁ、このインタビューを読んでもらえると、川原波輝ファンが増えちゃいますね(笑)。なんて、良いヤツなんだって。岩崎さんにしても。格闘技界が良いところだって勘違いされますよ(笑)。

「アハハハ。でも岩崎さんはホントに親身になって、面倒見てくれました。2カ月程度ですけど、本当に教わって良かったです。米国でやってきたことも、言葉の問題もあって細かいニュアンスが分かっていなかったです。それでも岩崎さんの教えがスッと入って来たのは、自分がこれまでやってきた練習、ヨガも含めて体創りとか基盤があったからやと思います。

体が柔軟やから、いきなりできる技もあって。この柔らかさがあるから、教えてもらえた技もありました」

──それでも細かいニュアンスが分からない、アルファメールに戻って来るわけですね。

「新しい技をバンバン増やす必要はないですからね。自分がやってきたことを、こっちでスパーリング相手にぶつける。ダニエル・ウィリアムスのことも岩﨑さんには話していたし、試合が決まってからサクラメントにやってきたので。だからダニエル・ウィリアムス戦に向けた練習しか、まだこっちに来てからやっていないですからね」

──カルペディエム芦屋効果をアルファメールで感じることは?

「ぶっちゃけ、これまでやられていたヤツから取れるようになったというのはあります。でも、逆にやられることもあります。自信がついたと思えるところもあるし、自信を失くした部分もあります(笑)」

──なるほど(笑)。そのウィリアムス戦、1年3カ月振りの試合になります。しかも、前回はスクランブル発進でした。しっかりと調整して戦うのは、1年8カ月振りになります。ウィリアムスの印象を教えてください。

「ムエタイのチャンピオンとかでしょ、強いでしょ。そりゃ。アハハハ。強いッスね」

──MMAは前回のデェダムロン・ソーアミュアイシルチョーク戦しか見たことがないのですが、あの距離はMMAとしておかしくないですか。

「ねぇ、僕はあの距離で戦うことはないでしょうね。だから参考にならないですよね。未知数ッス。アイツはムエタイの距離でしか戦えないと決めつけるのは良くないですけど、詰めてくるでしょうしね。あの距離が強いんやから。でもMMAなんで、ムエタイではないですからね。デェダムロンはムエタイ出身やから、ムエタイの距離で戦ったんでしょうけど。そこに関しては、どんだけ強いキックボクサーが来ようがMMAなんで、あんまり気にしていないです。そりゃあ怖いですけど、ムエタイとMMAは違う競技やと思っているんで」

<この項、続く

■放送予定
4月22日(金・日本時間)
午後5時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後5時30分~ONE Supper App

■ONE131対戦カード

<ONEキックボクシング世界ライト級選手権試合/3分5R>
[王者]レギン・アーセル(オランダ)
[挑戦者] アリアン・サディコビッチ(ボスニアヘルツェゴビナ)

<ONEムエタイ世界女子ストロー級王座決定戦/3分5R>
スミラ・サンデル(スウェーデン)
ジャッキー・ブンタン(米国)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
ボカン・マスンヤネ(南アフリカ)
ジャレッド・ブルックス(米国)

<ムエタイ・バンタム級/3分3R>
リアム・ハリソン(英国)
ムアンタイ・PK・センチャイ(豪州)

<ヘビー級(※102.01キロ)/5分3R>
マーカス・ブシェシャ・アルメイダ(ブラジル)
ウマウ・ログログ・ケニ(セネガル)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
川原波輝(日本)
ダニエル・ウィリアムス(豪州)

<ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
猿田洋祐(日本)
グスタボ・バラルト(キューバ)

<キック・ライトヘビー級/3分3R>
アンドレイ・ストイカ(ルーマニア)
ヤンニス・ストフォリディス(ギリシャ)

<ムエタイ・女子ストロー級/3分3R>
アニッサ・メクセン(フランス)
マリー・ルーメット(エストニア)

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ウインジソン・ハモス(ブラジル)
ウ・ソンフン(韓国)

<バンタム級(※65.8キロ)/5分3R>
チェン・ルイ(中国)
ソン・ミンジョン(韓国)

<女子ストロー級(※56.7キロ)/5分3R>
三浦彩佳(日本)
ダヤニ・ソウザ(ブラジル)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
アブラォン・アモリン(ブラジル)
パク・デソン(韓国)

<ウェルター級(※83.9キロ)/5分3R>
アギラン・タニ(マレーシア)
ジン・テホ(韓国)

<グラップリング・143ポンド(64.86キロ)契約/15分1R>
マイキー・ムスメシ(米国)
今成正和(日本)

<フェザー級(※70.3キロ)/5分3R>
ケアヌ・スッバ(マレーシア)
ジェームス・ヤン(米国)

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