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【RIZIN TRIGGER03】日本随一のケージの使い手、金原正徳戦へ。摩嶋一整「森戸さんと週1で柔術を」

【写真】金原戦、摩嶋に問われるのはケージレスリングの攻撃力以上に防御力だ(C)SHOJIRO KANEHARA

16日(土)に東京都調布市の武蔵野の森アリーナにて開催されるRIZIN TRIGGER03で、摩嶋一整が金原正徳と対戦する。

摩嶋といえば2014年8月からMMAで12連勝を収め、そのうち判定勝利は1試合のみというレコードを持つファイターだ。そのなかには、クンルン・ファイト豪州大会やレベルFCといった海外での勝ち星も含まれている。

しかし2020年からRIZINに参戦したものの、斎藤裕とクレベル・コイケを相手に2連敗を喫していた。その摩嶋は今では所属する毛利道場だけでなく森戸新士がヘッドインストラクターを務めるレオス柔術アカデミーで出稽古を行うようになったという。3年振りのケージでの試合となる金原戦に向け、摩嶋に話を訊いた。


――摩嶋選手は今もずっと、山口県内のみで練習しているそうですね。

「はい、ずっと山口県内だけですね。仕事もあるので。昼は工場のプラントの中で、配管やタンクのメンテナンスをやっています」

――平日であれば、どのようなスケジュールで1日を過ごしているのですか。

「仕事が朝8時から、定時であれば17時には終わります。ジムの練習は20時から22時ぐらいまでですね。その間に子供の世話があって」

――今、お子さんのお話を出した瞬間、幸せそうな表情になりました。

「アハハハ、そうですか。3歳の娘と0歳の息子がいるんですが、朝は起きて自分の支度をしてから、子供を起こして支度させて。保育園に連れて行ってから、自分の仕事に向かうんです。仕事が終わってからは、子供をお風呂に入れてから練習に行って……毎日が楽しいです。子供をお風呂に入れたあと、そのまま一緒に寝てしまいたいなぁと思うこともありますけど(苦笑)」

――ご結婚されたのは、いつ頃なのでしょうか。

「25歳の時なので、5年ぐらい前ですね。娘は田村一聖選手と対戦(2019年5月、肩固めで一本勝ち)する前ぐらいに生まれました」

――結婚前と、結婚してからお子さんが生まれた後では、ファイターとしての気持ちに何か変化はありましたか。

「気持ちは、今のほうが充実しています。今の生活のほうが賑やかで楽しいですし。でも身体的にはキツくなっていますね」

――毎日そのようなサイクルで生活していると、疲労もたまり続けるのではないかと思います。そこで、どう折り合いをつけているのか……。

「もともと練習する回数は、プロ選手の中でも少ないと思うんですよ。だから、もう自分が頑張るしかないですよね。他の選手が、どれだけ練習しているか分からないですけど、僕は多くても週4回ぐらいしかジムに行くことができないので」

――週4回……ずっと、そのスケジュールは変わらないのでしょうか。

「変わらないですね。ただ、今は岩国の森戸さんのところで、週1回ぐらい柔術を習っています」

――森戸新士選手のレオス柔術アカデミーですか。

「はい。僕はクレベル戦まで、柔術の黒帯選手と練習したことが、ほとんどなかったんです。柔術は週1回、ジムの柔術クラスに参加するぐらいで、そこまでガッチリと柔術を教わったこともなくて。でも同じ山口県内に、同じ年代で日本一の柔術家がいるのに練習しないのは勿体ないと思って、森戸さんと練習させてもらうようになりました」

――クレベル・コイケ戦が昨年3月に行われているので、それ以降ということですね。

「クレベル戦の前から、ちょくちょくレオスには行っていたんですよ。でも最近は毎週土曜日、仕事がなければ必ず行っています。おかげで全然違いますね」

――どのようなところが一番違いますか。

「僕はずっと柔道をやっていたんですけど、柔術はずっと寝技で、腕もパンパンになるし、練習では一番疲れるなと思いました。アハハハ、それぐらい凄かったです。柔道もやっていたから、正直ソコソコやれるだろうと思っていたんですよ。でも、やっぱり柔術の黒帯が相手となると……技とか全然知らなくて。森戸さんと練習し始めて、こんな状態ではクレベルに負けるよな、って思いました(苦笑)」

――ちなみに、LEOSへの移動時間は……。

「車で1時間ぐらいですね」

――以前のインタビューで、パラエストラ広島の神田T-800周一選手も、車で1時間かけてLEOSへ行っていると仰っていました。

「そもそも森戸さん自身が、住んでいるところから1時間かけて岩国へ来ているので、皆がそんな感じですね」

――なるほど。LEOSでは、どのような練習メンバーが集まっているのでしょうか。

「森戸さんとジムの会員さん――岩国にいる米兵の方たちが中心です。あとは出稽古で、黒帯の柔術家やプロMMA選手が来ています。おかげでグラップリングや柔術の面は充実しています」

――これも以前、LEOSでも練習している藤井章太選手にお聞きしたのですが、米兵の会員さんの中にはレスリングの州王者もいるとか……。

「みんな力はヤバいです。なかにはテクニックのある選手もいるし、荒っぽい選手もいます。まずデカい人たちばかりで……みんな、90~100キロぐらいあるんじゃないですか? 100キロを超えている選手もいますよ。LEOSの会員はほとんど外国人の方で。それも米軍基地がある岩国市ならではですよね。そういう人たちとグラップリングをやっていると、学ぶこともたくさんあって楽しいです」

――レオス柔術アカデミーでは、道着の練習が中心なのですか。それとも道着のないグラップリングを行っているのでしょうか。

「両方やりますね」

――それは競技としてのブラジリアン柔術ではなく、MMAを意識した組み技の練習なのでしょうか。

「MMAのための練習もやっています。森戸さんはケージのグラップリングにも出たじゃないですか(今年1月、GLADIATORで行われたプログレス提供試合で、濱村健に三角絞めで一本勝ち)。ジムでも壁レスをやっていますし、メチャクチャ強いです。そのままMMAをやれるんじゃないかっていうぐらいで(笑)。

もともと毛利道場でも壁レスやケージレスリングの練習もやっていました。でも、森戸さんレベルの選手と組む機会はなかったので。今はレオスで森戸さんと、ケージレスリングをガンガンやっています」

――金原戦は2019年5月の田村一聖戦以来、3年ぶりとなるケージでの試合です。

「僕はケージのほうが好きですね。感覚的にもやりやすいし、技術的にもリングだとロープから出ないように――という意識が入っちゃいますよね。それだと押し込む技術が使えずに、やりにくさが出てきますから」

――摩嶋選手は、これまでケージでの試合経験も多いですからね。

「最初はVTJのジャックナイフ・ツネオ戦(2014年6月、判定負け)ですね。その頃からケージを意識してやってきました」

――それだけケージを意識したキャリアを積んできている場合、試合舞台がリングになると、どのように感じるのでしょうか。

「最初は、そんなの関係ないと思っていたんですよ。でもやってみると違います。テイクダウンする時もロープに引っかかると面倒だし、組んでもロープ際から中央へ戻される時には間が出来てしまうので。そういう間が空くと面倒くさいですよね」

――そこで今回、3年ぶりにケージで戦えるというのは……。

「久々なので嬉しいですね。しかも相手が、有名な金原選手です。2連敗していても強豪選手を当ててもらえるのは、まだ僕にも期待を持ってくれているのだと思います。僕もそういう有名選手とは試合でしか会えないから、常にそういう選手と戦って、刺激をもらいたいです」

――金原選手の印象を教えてください。

「金原選手は、打撃でKOすることもできるし、寝技で極めることもできる。今、39歳ですよね? それで前回は芦田選手をKOしていて、強いなぁと思っています。凄い選手です。

僕もRIZINに出始めてからは、もしかしたら金原選手と対戦することもあるのかな、と思っていました。でも、もともとは単に格闘技を見ていただけの人間なので……自分がテレビで見ていた選手と対戦することになったら、オォッと思いますよね。地方にいると、そういう有名選手を見ることがないので。僕、東京の会場で知っている選手を見るだけで興奮しますから(笑)」

――試合を9日後に控えていますが(※取材は4月7日に行われた)、かなりリラックスしているように感じます。

「いつもこんな感じですね。あまり緊張することはないです。もちろん練習や試合に対しては緊張感を持っていますけど、結局は開き直っちゃうので」

――そのようななかで金原戦では、どのような試合をしたいと思いますか。

「やっぱり自分は極めるか、極められるかの試合をしたいです。判定は嫌なので。今回はケージの試合ですし、ケージで戦う自分の魅力や強さを発揮したいですね」

――摩嶋選手のキャリアを振り返ると、これまで判定勝利は1度のみですね。

「田中半蔵選手との試合(2016年9月)、その1回だけですね。柔道の頃から、判定になったら負けと思えって指導されていたんですよ。それが身についているのだと思います。試合では常に極めに行かなきゃって」

――ただ、先ほど言われたとおり金原選手は打撃でKOすることもできるし、寝技で極めることもできる相手です。その金原選手を相手に一本勝ちを狙い続けるのは、リスクではないですか。

「やられたらやられたで、仕方ないです。前の試合も、クレベルが柔術で黒帯を巻いていて、海外のプロモーションの王者であることも分かっていました。それでも極めに行きましたし、結果的に極められても仕方ないと思っています。それが自分の戦い方ですから、僕は極めるか極められるかの勝負をします」

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