【ONE129】トノンの挑戦を受けるフェザー級王者タン・リー―01―「ゲイリー対策は付け焼刃では無理」
【写真】口にすることがイチイチ真っ当でも、実践していないだろう――と思ってしまうファイターは少なくないが、この人は言葉通りのことをやっているのだろうなと思う (C)TSP
11日(金・現地時間)、シンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE129「Lights Out」でゲイリー・トノンの挑戦を、ONE世界フェザー級王者タン・リーが受ける。
2020年10月の王座奪取から試合がなかったリーだが「試合勘が鈍らないか」という問いへの返答が、まさに彼がLife Time Martial Artist前としていた。そしてトノンとの戦いを想定した日々もまた――彼がMMAを戦うファイターではなく、マーシャルアーティストそのものだった。
――金曜日にゲイリー・トノンの挑戦を受けます。今の調子はいかがですか。
「凄く調子は良いよ。絶好調だ。試合に向けて考えうる限り、最高の準備ができた。この1年以上の間、多くのトレーニングをこなし、凄く戦いやすい状態になっている。だから戦うことが楽しみでしょうがないよ」
――タイトル奪取からほぼ1年と4カ月が過ぎました。これだけ長期間、試合がないと多くのファイターは試合勘を失うということを口にしています。タンもその心配はないですか。
「ノー、ないよ。正しいトレーニングを正しいアプローチの下、行ってきた。5分×5R、その一つ一つのラウンドで、どのように戦うべきかを丁寧に掘り下げ、練り上げてきたんだ。どういう動きが有効で、何をすべきか。どういう局面でそれらの動きをするのか。ラウンド毎に体に染みついているから、全くリングロス的なことは僕の身には起こっていない。
ベストバージョンのタン・リーが何かを考えたとき、どのようなパフォーマンスを見せることができるのか。若いころは、ベストの自分、最高のパフォーマンスとは少しでも速く試合を終わらせることだったんだ。本当に分かっていなかったよ。
経験を積む、より普段から戦うことを身近に考えると、僕のベストパフォーマンスはそういうことではなくて、いかにスマートに戦うことができるかという部分に集約されると気づいたんだ。フィニッシュすることが全てじゃない。いかに自分が動きたいように動くことができるか。
1年4カ月以上、試合はなかった。でも、今後のキャリアを考えても過去にないベストバージョンに近い、本当に近い僕を見せることができると信じている」
――そのベストバージョンのタン・リーとは攻撃だけでなく、防御面も含めてのことですか。
「絶対的にね。いかに自分が戦いやすくできるか。特にゲイリーはグラップリングのスペシャリストだ。対して僕はストライキングのスペシャリストだから、いかに彼の領域で自分の身を守るべきか、そして僕のエリアで戦い続けることができるか――を、ずっと練習してきた。
この試合はいかに自分の領域で危険になれるか、相手のエリアで危なくないよう戦えるかに掛かっている。幸いにもMMAは立ち技から始まる。そこで、僕がどう戦うのかを長い時間をかけて、丹念に練習してきたんだ」
――キャンプでの仕上がりも、上々でしょうか。
「しっかりと準備はできている。ただし、ファイトキャンプ云々ではないんだ。スイッチのオン・オフがあるファイトキャンプでなく、この間、ずっとゲイリーと戦うことを想定して日々を送ってきた。毎日、ずっと高いモチベーションをキープしてやってきたんだ。これだけ時間があるということは、僕のなかでこれまで培ってきたこともそうだし、新しい面も試合で出せるだけ色々と積み上げてきた。
そういう1日1日が本当に楽しくて。これこそマーシャルアーチストとしての生活だと実感できた。僕の大好きなマーシャルアーツをやり続けること――試合のためじゃない、マーシャルアーツが好きだから、試合に向けての日々のなかでこれだけ充実した練習を行うことができたと思っている。トレーニングキャンプの時に思いきり追い込むのは、試合をして金を稼ぐこと。そこに練習の成果が集約しているからね。
僕は普段からマーシャルアーツの練習を好きだから続けている。好きこそモノの上手なれ――だよ」
――それでもゲイリーの寝技は、本当に危険だと思います。
「ずっと準備はしてきた。僕のキャリアで最も長い付き合いになるライアン・ホールとともに積み上げてきた成果を発揮できるだろう。ライアンとは本当に長い間、ずっと一緒にやってきたからね。ゲイリーと戦ううえで、僕が最高の打撃を見せるには、彼の組み技のアプローチを見抜く必要がある。
間違いなくゲイリーのグラップリングは世界の最高峰の領域にあり、誰もが理解できているわけじゃない。それを理解し、分解できる数少ない人間の1人がライアン・ホールなんだ。そういう意味ではライアンは僕にとってただのコーチでなく、師匠にもなるね。50/50柔術アカデミーで学んだことをルイジアナに持ち帰り、さらに磨いてきた。絶対にライアンとのトレーニングの成果を、試合で見せることができるはずだよ」
――松嶋こよみ選手がトノン戦の直後に『寝技の対処をメインに練習し過ぎました。やられないことを念頭に、自分が攻める練習ができていなかった』という風に言っていました。それだけゲイリーの組み技というのは、MMAにあっても特別なわけですが。
「わかるよ、コヨミ・マツシマの言いたいことは。彼はしっかりとゲイリーに敗れたことを消化できていると思われる、賢い意見だね。3R、スタンドの攻防でもっと攻めることができたはずなのに、彼はそれができなかった。攻撃的な打撃が、彼本来のモノではなかったよ。きっと自分が動けると思っていることと、実際の動きにギャップがあったんだろうね。
だからこそ、練習してきたことが試合にマッチしていなかった。そういう風に振り返ることができるなら。きっと、そういうことなんだろう。それだけゲイリーの寝技への対処に関して、試合前のキャンプで時間を費やしたんだろう。確か、マサカズ・イマナリと練習していたんだよね。何かで見たよ。こういうとアレだけど、それが問題だったんだろう。
試合前にゲイリーの強い部分から、いかに逃れるかをいつもと違うトレーニング・パートナーと対策する。ほんの数週間で、ゲイリーのグラップリングに対抗しようなんて、ちょっと難しいよ。
僕とゲイリーとの試合で重要になってくるのは、ゲイリーと戦うことが決まる前から僕が彼と練習してきたことなんだ。さっきも言ったようにライアンは僕にとって、最も一緒に練習してきた期間が長いパートナーだから。そう、付け焼刃でゲイリーからやられないなんて対策は難しいよ。そいうモノじゃないんだ、僕がライアンと積み上げてきたことは」
<この項。続く>
■放送予定
3月11日(金・日本時間)
午後9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後9時30分~ONE Super App