【WJJC2021】レポート<04>終了45秒前のペナルティ。橋本知之、準々決でジョナス・アンドレイジに惜敗
【写真】これがムンジアル──ということなのか……(C)NARITA SATOSHI
8日(水・現地時間)から12日(日・同)まで、カリフォルニア州はアナハイムのアナハイム・コンベンションセンターにて、IBJJF主催の世界ブラジリアン柔術選手権が行われた。
Text Isamu Horiuchi
2年半ぶりに開催された、道着着用柔術の世界最高峰の大舞台。第4回は、橋本知之が世界トップレベルと伍したルースター級に準々決勝の模様をレポートしたい。
<ルースター級準々決勝/10分1R>
ジョナス・アンドレイジ(ブラジル)
Def. by 2-2 アドバンテージ 2-1
橋本知之(日本)
黒帯2日目の幕を開けたのは、群雄割拠のルースター級の優勝候補同士による潰し合い第1ラウンド──昨年のヨーロピアン王者・橋本と、今年のアブダビ・ワールドプロ優勝者のアンドレイジによる準々決勝だ。
お互いに引き込んでダブルガードの状態となった両者。橋本がすぐにベリンボロを仕掛けるが、アンドレイジもすかさず対応して正対し、ややして互いにペナルティが与えられた。
その後もう一度同様の攻防が繰り返されて仕切り直しとなると、またしても引き込む両者だが、ここでアンドレイジが上を選択してアドバンテージを獲得する。
橋本はアンドラージの体を引き付けて一度前に崩すが、アンドレイジが堪えてダブルガードの体制に。ここで橋本はベリンボロのモーションを一度見せておいてからシットアップへ。
うまく上になって2点を先制した。が、アドバンテージはアンドレイジが先行しているため、上になればアンドレイジが逆転するというシーソーが成立したことになる。
左腕で橋本の襟を取ったアンドラージは内回りを仕掛けるが、橋本もすかさず上からのベリンボロのカウンターを合わせる。対応して下に戻るアンドレイジ。橋本のセコンドのカイオ・テハからは「トモ、パーフェクトだ!」という声が飛んだ。
アンドレイジは再び内回りで崩しを試みるが、橋本はうまく距離を作って深く入らせない。戻ったアンドレイジが右でラッソーを作ると、「ブレイク・イット!」というテハの指示に従って、橋本は下がってそのグリップを切りにかかる。
やがてラッソーのフックが外れると、アンドレイジは左に回転しながらの崩しを仕掛ける。橋本が耐えると今度はシットアップを狙うアンドレイジ。が、橋本はここも反応して押し戻した。アンドレイジの激しい仕掛けに、橋本はうまく対応している。
橋本は右で片足担ぎの体勢を作ると、アンドレイジは右足で橋本の足元を借りながらのスイープを仕掛ける。が、ここも橋本が堪えて、両者の体は場外に。試合は中央から再開となった。
残り4分半。相手にスイープを取られても逆転されないように、アドバンテージを取れというテハの指示が飛ぶ中、橋本はダブルアンダーの体勢に。アンドレイジはその右足首を掴んで崩してのシットアップを狙うが、ここも防いだ橋本は右腕をマットにポストし、そのまま右に大きくステップオーバーしてのパス狙いへ。
アンドレイジもすぐにインヴァーテッドで対応して正対。橋本の攻撃はアドバンテージとしては認められなかった。
アンドレイジは再度前に崩してからのシットアップを狙うが、橋本は耐える。ワキを閉めている橋本に対して、アンドレイジはその腕の上から三角絞めのロックを作る。しばらくその形をキープしてから離してレフェリーを見るアンドレイジだが、ここもレフェリーはアドバンテージを入れなかった。
残り時間が少なくなってくる中、橋本はワキを閉め、また必ずどちらかのヒザをアンドレイジの足の間に入れることで強烈な下からの煽りを防いでいる。
なんとかして上を取りたいアンドレイジだが、橋本の守りを崩せないまま時間が過ぎる。そして──残り45秒のところでなんとレフェリーが橋本に膠着のペナルティを宣告。これでアンドレイジに2点が与えられ、ポイントが逆転してしまった。
残り45秒で突如として劣勢に立たされてしまった橋本は、左にパスを仕掛ける。が、アンドレイジは自らの左足を橋本の後頭部から回して左ワキに差し込んで体勢を固定し、そのままリードを守り切った。
難敵アンドレイジを相手に、着実に勝利への道を進んでいたかに見えた橋本だが、終盤のレフェリーの判断で状況が一転──この世界最高峰の戦いにおいて、あの時間から上攻めで再逆転するのはほぼ不可能であることを考えると、なんとも気の毒な敗戦となってしまった。
が、終盤の橋本が守勢に回っていたことも否めず、あのペナルティ自体は不当な判断ではないともいえる。これが競技ブラジリアン柔術最高峰の駆け引き。世界制覇のためには、この強敵を相手にしてなお、明確な差を付けるような実力が必要というのは余りにも過酷な戦場だ。
ともあれ今回、世界最高峰の実力を改めて証明した橋本が、さらに力を増して世界の舞台に戻ってくることを期待してやまない。