【WJJC2022】世界に立ち向かう日本の柔術家 橋本知之─01─ 「昨年はカイオの指示に身を委ね過ぎた」
【写真】現地入りしてから取材を受けてもらい感謝の限りです(C)SHOJIRO KAMEIKE
2日(木・現地時間)から5日(日・同)にかけて、カリフォルニア州ロングビーチのウォルター・ピラミッドにて、IBJJF主催のブラジリアン柔術世界選手権が行われている。
Text by Shojiro Kameike
4日(土・同)からはアダルト黒帯のトーナメントがスタートするが、ルースター級には日本から橋本知之がエントリー。今年4月のパン大会ではライトフェザー級で3位を獲得した橋本が、そのパン大会から現在までの変化を語ってくれた。
――現地入りしてから試合直前にインタビューを受けていただき、ありがとうございます。日本時間では6月3日の0時、ロスは6月2日の朝8時です。6月4日の試合に向け、減量も順調に進んでいるのでしょうか。
「日本を発つ時が59キロ半ばで、今は58キロぐらいです。ルースターが道衣込みで57.5キロなので、道衣なしで56.2~56.3キロぐらいまで落とします」
――今年のパン選手権はルースター級ではなくライトフェザー級で出場し、3位となりました。そのなかで筋量も増えていたそうですが、それは意識的に増やしていたのでしょうか? それとも練習していて自然と増えていたのですか。
「ライトフェザー級に出る時は、食事や筋トレで意識的に増やしていました。ライトフェザー級だと自分は、身長は低いほうではないですけど、サイズは小さいので」
――ライトフェザー級で戦うための体づくりを行った結果だったのですね。
「はい、そうです」
――ということは、ムンジアルもライトフェザー級でエントリーする予定だったのですか。
「それは迷っていました。自分としてはルースターかライトフェザー、どちらでもよかったです。それでパン選手権はライトフェザー級で出場してみて、どんな感じなのかを試してみようと。あとはパンからワールドまで減量が続くと、ストレスになってしまうので。だから、そんなにコンスタントに減量したくなかった。その2つが、パンはライトフェザー級に出た理由でした」
――そのパン選手権で3位入賞となりました。橋本選手にとって、手応えのある3位だったのか、何か新しい発見がある3位だったのか。
「3位という順位については、世界大会に出るためにはポイントが必要なので、そのポイントを獲得できたという意味では良かったです。あとはライトフェザー級のトップ選手とも試合ができたし、どんな感じなのかはチェックできたので。そのうえで、世界大会まで2カ月でライトフェザー級の体を作って出場するよりは、ルースター級のほうがクオリティの高い状態で試合をすることができるのかな、と思いました。どちらかといえば、という感じなんですけど」
――試合内容、技術面はライトフェザー級で感じた内容を、ルースター級で出場する世界大会までの2カ月間で修正してきたのでしょうか。
「そうですね。たとえばパン大会の1回戦(ライトフェザー級準決勝でペドロ・クレメンチにアドバンテージ差で勝利)は、自分の中で早く極めようという意識が強すぎたんです。それで力みすぎて、初戦なのに消耗してしまいました。それはシンプルなミスじゃないですか。だから気を付ければ修正できる。
普段の練習から――もちろんリラックスしすぎるのは良くないですけど、力みすぎないように練習していくとか。もちろん技術的な部分で修正すべきところは山ほどあるし、そこは突き詰めればキリがないので、世界大会に向けて完成しきったという感覚は今もないです。でもその時その時で、試合に向けてスタイルを作って戦ってきたという感じですね」
――それは実際に試合、特に世界レベルの選手とのトーナメント戦を経験しないと分からないことですよね。
「試合をイメージして練習していても、実際に試合をしてみるとギャップがあったり、自分のイメージと合っていないこともありますからね。そこは自分のイメージが正しいのかどうか確かめるためにも、ある程度は定期的に出たほうが良いなと思いました」
――パン大会はムンジアルの2カ月前に行われます。そのためムンジアルの前哨戦の意味合いも強くなるでしょうし。
「世界大会に向けて、全試合でベストなパフォーマンスを出そうとしている感じはありますよね。でも、世界大会は特別なものですけど、そこで優勝したからって全てがメチャクチャ変わるっていうわけでもないので」
――えっ!? どういうことでしょうか。
「世界大会で優勝したら、大きなプロの大会に呼ばれたりとか。そうやって続いていくものなので」
――ここ十数年で大きく環境が変わりましたよね。柔術でもグラップリングでもプロの大会が増え、UFCファイトパスなどインターネットを通じて世界中に配信されたりと。
「まず競技人口が増えました。子供の頃から柔術をやっている選手は、昔からいたと思うんです。でもその人数が違うし、子供の頃からしている練習のクオリティが高くなっていますよね。その結果、10代の頃から強い選手が出てきていて。どんどん競技レベルは上がっているし、それは良いことだと思います」
――なるほど。試合の話に戻ると、パン大会の初戦で早く極めようと意識したのは、昨年の世界大会の結果も影響しているのでしょうか。昨年は準々決勝のジョナス・アンドラージ戦で、残り45秒で膠着のペナルティが入り敗れました。
「うーん……いや、パン大会の初戦は、トータルで見て僕のほうが上だと思っていたので。だから『ちゃんと差を見せつけよう』という意識が強すぎた結果で、昨年の負けと違うんですよね。昨年の反省点としては、カイオ(・テハ)がセコンドに就いてくれていたんですけど、僕がカイオの指示に身を委ねすぎたというか」
――というと?
「自分自身でその時の状況を細かく考えていなかったんです。もっと動けという指示もなかったし、このまま対処していれば良いかなと考えていたら反則のルーチが入ったので……。それは予想外ではあったんですけど、自分自身でそのシチュエーションを理解していれば、もうちょっと上手く戦えたのかなと。もちろん簡単なことではないですが、もうちょっと戦い方はあったかなと、今は思います」
<この項、続く>
■WJJC2022 黒帯ルースター級放送予定
6月5日(日・日本時間)
午前3時00分~ FLOGRAPPLING