この星の格闘技を追いかける

【ONE Winter Warriors】スタンプ戦を控えた師弟。リトゥ「ベストになる」&シアー「リトゥであれば良い」

【写真】シアーがいることで、リトゥのリラックス度合いがいつもと違っていた(C)MMAPLANET

12月3日(金・現地時間)にシンガポールはカランのシンガポール・インドアスタジアムで開催されるONE Winter Warriorsで組まれた女子アトム級ワールドGP決勝で、リトゥ・フォーガットがスタンプ・フェアテックスと戦う。

インドを代表するレスリング一家から、MMAに挑むリトゥは毎試合ごと、MMAファイターとして成長の跡を見せている。その彼女に欠かせないのが、EVOLVE MMAのヘッドコーチ=シアー・バハドゥルサダだ。

アフガニスタンから政治亡命でオランダへ一家で移住し、難民キャンプのなかで母国に戻って死の決意を持って戦うこと以外、将来の展望などなかった彼はオランダでMMAに出会い、違う人生を歩むことができた。

アマ修斗からプロ修斗、GLORY MMAを戦いUFCに辿り着いたシアーは2019年からシンガポールを拠点にEVOVLE MMAで指導するようになった。その期間は、ほぼリトゥのMMAファイター人生に当てはまる。リトゥとシアー、シンガポールで生まれた師弟関係を──スタンプとの決勝戦を前に、両者に振り返ってもらった。


──リトゥ、アトム級ワールドGP決勝進出が決まりました。準決勝のジェネリン・オルシム戦は直前で平田樹選手が欠場となってしまいましたが、その時はどのような気持ちになりましたか。

リトゥ・フォーガット イツキ・ヒラタと試合がしたかったし、とにかく彼女がリカバリーして体調が良くなることを願ったわ。そして、また彼女と戦う機会が巡ってくれば良いなって。本当にイツキと戦いたかったから。

──突然、対戦相手が代わることに焦りはなかったですか。

リトゥ 少し動揺したことは確かね。でも準備は万全だったし、誰とでもサークルケージのなかで戦える状態にあったから大きな問題ではなかったわ。

──シアーはその時、どのようなアドバイスを?

シアー・バハドゥルサダ ヒラタとオルシムはタイプが違うファイターだ。でも、リトゥに伝えたことは、自分の戦いをすることに集中しようということだった。僕自身、対戦相手が何をやってくるのではなく、リトゥにフォーカスすることが大切だと思った。そして、リトゥはケージの中で自分がやりたいことをやりきる力があることを確信していた。

対戦相手がヒラタからオルシムに代わったことで、少しだけ戦い方にアジャストを加えた。でも、大して変えていない。試合直前だったし、大きく戦い方を変えることはリトゥを混乱させてしまう。最低限、必要なことだけアジャストし、大部分はヒラタ戦を想定して準備した戦いを通した。そしてリトゥは見事にやり切った。彼女を誇りに思うよ。

──ところでリトゥはデビュー戦から試合を重ねるごとに、レスリングの力をケージの中で発揮できるようになっていますね。

シアー リトゥのレスリング能力の高さは疑いようがない。ただし、MMAレスリングはまた違う側面がある。マットとケージの違いで、レスリングも変化が必要だ。マットとケージに押しつけて殴る戦いと、マットに相手を倒す戦いは別物だからね。少しの違いのようで、大きく違う。でも、レスリングはレスリングなんだ。リトゥは瞬く間にMMAレスリングを理解し、吸収していったよ。彼女はレスリングが根付いたインドで、高名なレスリング一家で育った。彼女にはレスリングという血が流れている。だからMMAレスリングの指導をすることは、凄く簡単だった。そしてリトゥは毎試合、しっかりと成長の跡を見せている。

忘れてならないのは、リトゥのMMAキャリアはまだ2年少しということ。その大半がコロナウィルスの影響で、皆で練習ができていない。シンガポールは厳格なロックダウンを続けていたからね。それなのにリトゥは急激な成長を見せている。前回の試合、リトゥがその能力を全て使って戦う必要があったなら、きっと皆は驚いたはずだよ。『リトゥは変わった』ってね。それはスタンプ戦で発揮できるかな。僕のコーチとしての役割はそこにあるわけだからね。

リトゥ MMAファイターとしての私は、シアーの存在なくてはあり得ないわ。シアーの指示を守って、私のレスリングをMMAに生かしてきたから。私がケージの中で見せることができる技術、戦いは全てシアーに授けてもらったものよ。

シアー それができるのが、彼女の才能なんだよ。ホント、僕が何か手本を見せても、リトゥはすぐに僕より上手く動けるようになる(笑)。

リトゥ ノー、そんなことないわ。シアーはそうやって私をその気にさせるのが上手いの(笑)。彼がいつも導いてくれるから、私は高いモチベーションを保って練習することが可能になるのよ。

──オルシム戦は満足のいくパフォーマンスでしたか。

リトゥ ジェネリンのような寝技が強い選手に対し、自分の戦いができたことは嬉しかったわ。あの試合はファイナルに進出するための戦いだったし、そういう部分でやるべきことはできたと思っている。

──そして決勝進出をしっかりと決めました。

リトゥ GPで私が優勝することは、インドにおけるMMAの地位向上に結び付く。そのために戦ってきたの。これまでもインドの皆がMMAに興味を持ってほしいから、厳しいトレーニングを自らに課して戦ってきたわけだし。インドの皆が、MMAを見て刺激を受けてほしいの。そしてMMAをインドのメインストリームに引き上げたい。

──スタンプは間違いなく、キャリア最強の相手になります。

リトゥ 私にとって全ての試合がチャレンジだった。スタンプとの試合もそう。そして挑戦する準備はできているわ。

──ほぼ3カ月で3試合、タイプの違う相手の試合を戦う。これ以上ないタフな経験をしてきたと思います。

シアー GPを戦うことは、リトゥにとって素晴らしい経験になった。リトゥは本当にMMAでは新人だったんだ。特徴のある8人のファイターが集まり、1人の優勝者を決める戦いでリトゥのレスリング力は勝ち上がるのに十分な能力だと自信があったけどね。

そして彼女は試合毎に確かな成長を見せている。トーナメント戦だけど、一つ一つの試合を別物と捉え、1試合に集中して準備をしてきた。そして短期集中、その先にタイトル挑戦が確実視されている状況は、タフではあるけど集中力を維持するうえではこれ以上ないフォーマットだよ。本来なら1試合、1試合勝っていって挑戦権を手にするのにはどれぐらいの期間を要するだろうか。

そこを踏まえて考えると、このGP参戦はリトゥをこれ以上ないぐらい成長させた。タイプの違うファイターと、短期間で集中力とモチベーションを維持した状態で戦うことができているから。

リトゥ その通りだと思う。GPに出場できたことで1試合ごと、集中してたくさんの経験を積むことができたわ。技術的にも、絶対的に成長できたし。身に着けた技術を試合で試し、その成果も感じているから。

──その経験をスタンプもしてきたと思います。GPでスタンプはムエタイファイターから、よりウェルランディットなMMAファイターに進化を遂げたと思います。

リトゥ そこは私も異論はないわ。試合で魅せるパフォーマンスも素晴らしいし。でも、12月3日には私がベストだと世界に証明してみせるから。

シアー リトゥはリトゥであれば良い。そこが一番大切になるよ。

──リトゥの一番の武器は、気持ちの強さだといつも思っています。

シアー 彼女は虎だよ。タイグレス(雌の虎)として、ケージに上がるんだ。

──まるでシアーじゃないですか。シアーも技術や体力ではなく、気持ちが一番の武器のファイターでした。

シアー 確かに僕はアスリートとして、肉体的な才能に恵まれていたわけじゃない。ただしファイトIQはあったつもりだ。そして、言ってくれたようにハートで戦ってきた。でもリトゥを始め、僕が指導している選手はフィジカルも十分だ。

ファイトIQも伝授している。僕が現役時代に欲した練習完勝を、彼らには与えているつもりだ。そして、リトゥを始めEVOLVEのファイターは僕がなりたかったファイターに成長している。フィジカルがあり、技術力があり、ファイトIQを持った根性ファイターだ(笑)。

──リトゥ、シアーはそんな風に皆を指導していますが、まだ38歳です。一緒にサークルに入って戦ってほしくないですか。

リトゥ アハハハハ。

シアー リトゥ、正直に思っていることを話せば良いよ(笑)。

リトゥ 私が言えることは……シアーの試合が見たいとは思うけど、ずっと私のコーナーに居てほしいし、彼の指導が私には必要だから。しっかりと私のそばについていてほしいわ(苦笑)。

シアー つまり、試合はするなってことだよ(笑)。

──アハハハハ。

シアー 実は僕自身、もう現役で戦うことに何も未練はなかった。ただ2週間前に息子が生まれ、もう1度、もう1試合だけ現役に戻り父親の姿を見せたいという気持ちが芽生えている。でも1試合だけだし、それがいつになるのかは分からない。とにかく今は12月3日にリトゥをGPウィナーになり、ヒロキ(秋元皓貴)が勝ち名乗りを受けること。そこに集中している。それ以外のことは考えられない。リトゥとヒロキがチャンピオンになってから、自分のことは考えるよ。

──リトゥ、そしてシアー、今日はありがとうございました。では最後にリトゥ、いつものように日本のファンに一言お願いします。

リトゥ 日本のMMAファンの皆の応援に感謝しているわ。皆のためにも良い試合を見せたい。サンキュー、サンキュー、サンキュー、サンキュー・ソーマッチ!!

■ONE「Winter Warriors」視聴方法(予定)
12月3日(金・日本時間)
午後9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後9時30分~ONE Super App

■ONE「Winter Warriors」対戦カード

<キック世界ライト級選手権試合/3分5R>
[王者]レギン・アーセル(オランダ)
[挑戦者]イスラム・ムルタザエフ(ロシア)

<女子アトム級(※52.2キロ) ワールドGP決勝/5分5R>
スタンプ・フェアテックス(タイ)
リトゥ・フォーガット(インド)

<キック・フェザー級/3分3R>
チョウ・チェンリャン(中国)
レネ・カタラン(フィリピン)

<キックボクシング・フライ級/3分3R>
秋元皓貴(日本)
ダニエル・プエルタス(スペイン)

<ライト級(※77.1キロ)/5分3R>
ティモフィ・ナシューヒン(ロシア)
ザイード・フセイン・アサラナリエフ(トルコ)

<ヘビー級/5分3R>
カン・ジウォン(韓国)
マーカス・ブシェシャ・アルメイダ(ブラジル)

<フライ級/5分3R>
フー・ヨン(中国)
若松佑弥(日本)

■ONE「Winter Warriors 02」視聴方法(予定)
12月17日(金・日本時間)
午後9時30分~ ABEMA格闘チャンネル
午後9時30分~ONE Super App

■ONE「Winter Warriors 02」対戦カード

<フライ級(※61.2キロ)/5分3R>
ダニー・キンガド(フィリピン)
カイラット・アクメトフ(カザフスタン)

<バンタム級 (※65.8キロ)/3分3R>
ケビン・ベリンゴン(フィリピン)
クォン・ウォンイル(韓国)

<95キロ契約/5分3R>
ヴィタリー・ビグダシュ(ロシア)
ファン・ロン(中国)

<ウェルター級(※77.1キロ)/5分3R>
ゼバスチャン・カデスタム(スウェーデン)
ムラッド・ラマザノフ(ロシア)

<バンタム級 (※65.8キロ)/5分3R>
スティーブン・ローマン(フィリピン)
ユーサップ・サーデュラエフ(ロシア)

<バンタム級 (※65.8キロ)/5分3R 5分3R>
ジャンロ・サンジャオ(フィリピン)
ポール・ルミヒ(インドネシア)

PR
PR

関連記事

Movie