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【Bu et Sports de combat】武術的な観点……フルコンタクト空手で見るMMA。下段回し蹴り

【写真】長い間、顔面パンチがないことによりMMAで効果的な蹴りは少ないと考えられてきたフルコンタクト空手の蹴りだが、カーフで負傷続出の状況でその有効性が分かってきた (C)MMAPLANET

MMAと武術は同列ではない。ただし、武術の4大要素である『観えている』状態、『先を取れている』状態、『間を制している』状態、『入れた状態』はMMAで往々にして見られる。

武術の原理原則、再現性がそれを可能にするが、武術の修練を積む選手が試合に出て武術を意識して勝てるものではないというのが、武術空手・剛毅會の岩﨑達也宗師の考えだ。距離とタイミングを一対とする武術。対してMMAは距離とタイミングを別モノとして捉えるスポーツだ。ここでは質量といった武術の観点──から、少し離れ、ダスティン・ポイエー✖コナー・マクレガーにも見られたカーフを蹴った選手が負傷するという事例の多さについて追及したい。

現代MMAの距離が80年代、90年代のフルコン空手の距離に近くなっている。当時のフルコンタクト空手は、この距離での蹴りの発達の顕著だった。進化の背景には足のどの位置で、相手のどの箇所を、どのような角度で蹴っていたのかという研鑽が日々行われていた。今回は、そんな当時のフルコンタクト空手の下段回し蹴りを実演した。


回し蹴りとは腰をまわすのではなく、脚の骨が回ることで角度を作る。そして相手を蹴る箇所によって、蹴り方が変わってくる。ただし、自身の足の当てる位置は変わらない。この3点を大前提として頭に留める。

脹脛への下段回し蹴り

ヒザからの下、カーフを蹴りたいのであれば脚をそれほど回転させずに、45度の角度で蹴る


自身の足を角材に例えると、脛骨の付け根の内側を角材の角とイメージして当てる


足首から爪先へいくほど弱くなる。ただし、靭帯のある部分で急所になるので必ず避ける


脛骨の付け根の内側で蹴ると、『ほとんどケガはしません』(岩﨑) しかし、当てる箇所を考えずに弱い箇所で当てると、痛める要因になる。また当てる位置はカーフ、インロー、太腿へのローでも変わらない

インロー

インローの場合は


カーフの角度で蹴ると、力が加わる方向が上になるので効かない


ヒザというのは上へ力には耐久力があるが、外側への力には弱い。この特性を理解し、カーフとは違い横にスライドさせてけるようにする

太腿への下段回し蹴り

フルコン空手で修得できた太腿への下段蹴り


70年代はカーフと同じ45度の蹴りで太腿を蹴っていたが、顔面への突きがあることを想定していた時代からフルコンルール内で勝つことを想定するようになり、距離が近づくように


こうなると、45度では腿の中心を捕えることができなくなり、蹴っても効かなくなった。その結果、中段回し蹴りの角度から途中で軌跡を変え、振り下ろす下段に変化した

漫然とローを蹴るのではなく──正しい位置を当てる。蹴る箇所によって、角度を変える。これらのことを意識することで、無暗な蹴りによる負傷は減少すると考えられる。

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