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【UFC ESPN29】グィダ戦へ、五輪グレコ銀=マーク・マドセン─01─「もしTOKYOを目指していれば……」

【写真】溢れんばかりの自信、MMAということでなく自身の歩んできた人生に自信を持っているという雰囲気だったマドセン (C)MMAPLANET

21日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXでUFC on ESPN29「Cannonier vs Gastelum」が開催され、デンマーク人ファイターのマーク・マドセンがクレイ・グィダと戦う。

マドセンはデンマーク史上最高のレスラーで、2016年リオデジャネイロ五輪グレコローマン75キロ級で銀メダルを獲得。世界選手権でも4度のシルバーメダリストに輝き、ノルディック選手権では6度の優勝──デンマーク選手権に至っては69キロから96キロまで4階級で11度の優勝を誇る。

まさに不世出のレスラーながら、ロンドン五輪とリオの間にMMAにデビューし2連勝──ここからレスリングに戻りメダルを獲得すると、レスリングを引退し通算8連勝でUFCと契約を果たした。UFCでも2勝0敗、キャリア最強の相手グイダ戦を前にしてオリンピアン、そしてメダリストがなぜMMAで戦うのか。加えて、グレコの技術はMMAに効果的なのか等を尋ねた。


──土曜日にクレイ・グイダとの試合が控えています。今、どのような気分ですか。

「とてもエキサイトしている。クレイ・グイダの試合をずっと見てきた。その彼とUFC3戦目で戦えるなんて、とんでもないチャンスだ。そして、凄く光栄なことだよ」

──ところで東京五輪が終わったばかりですが、レスリングはチェックしていましたか。

「もちろん。NBCでは24時間、ずっとオリンピックが流れていた(笑)。今回はキャプテン・エリック・アルバラシンの下、アリゾナでキャンプを行ったけど、キャプテンとはずっと昔に五輪の準備をしていたコロラドスプリングスのオリンピックセンターで出会って以来の仲でね。今回は、彼と一緒にレスリングをチェックしながら、『ああだ、こうだ』って話していたんだ。

そうだね、僕自身はレスリングだけでなく、どんな競技でも見ていたよ。アリゾナに3カ月間いたけど、五輪の間はずっとデンマーク代表のあらゆる競技を応援していた。デンマーク代表は素晴らしい活躍をしていたよ」

──デンマークでは、レスリング人気が高いのですか。

「そうだね、とてもとてもニッチなモノさ。米国や日本と比べると、凄く小さい。でも東京でも1人、デンマーク代表がレスリング競技に参加していた。デンマーク人レスラーが予選を勝ち抜くことだけでも、本当に大変なんだ。1回戦負けだったけど、グレコローマンレスリング67キロ級で戦ったフレデリクホルムクイスト・ビャレフーを心の底から尊敬しているよ」

──日本ではレスリングのトップ選手は一流企業に就職できたり、学校や自衛隊に就職して安定した生活を送ることができます。マークは2度五輪に出て、銀メダルを獲得していますが、MMAに転向しました。

「訂正させてもらうと、僕は3度五輪に出ているんだ(笑)」

──おお、スミマセンでした。では北京、ロンドン、リオと五輪を経験しているのですね。そしてロンドンとリオの間にMMAデビューをしています。

「世界大会では5度、メダルを取っている。それが人生をレスリングに捧げてきた、結果さ(笑)。日本のように、ロシアや旧ソ連の国々、米国でもレスリングは素晴らしい安定した人生を手に入れることができるプラットフォームを持っている。

きっと僕もそういう人生をレスリングのおかげで送ってきたはずだ。自分でいうのもなんだけど、デンマークでは誰よりも認識されたレスラーのはずだからね。3度の五輪出場は初めてだし、84年の歴史で初めてメダルを獲得したのだから。自分のデキることは全てやり、最高の結果を残せたと思っている。

ただ2016年にメダルを取った時も、MMAで結果を残せるのかって自問自答をしていた。レスリングとMMAを同時に戦うのではなく、100パーセントMMAに専念したくなった。もし、東京を目指していれば4度目のオリンピック出場もなっていたと思う。でも、2016年にレスリングは引退した。もうやり切ったし、MMAにフォーカスしたかったんだ。

MMAをやり切りたいと思ったからね。自分の可能性を最大限に引き出すチャレンジがしたかった。幸運にもレスラー時代から、世界を回って色々な国のオリンピック・センターでトレーニングもできた。レスリングでやるべきことはやり遂げたと思っている。だから、MMAでも同じように自分の力を出し切れる環境で練習をしたいと思い、今回はキャプテンとヘンリー・セフードの下で3カ月間、試合の準備をしてきたんだ。

この環境で練習していると、放っておいても自分が強くなっていることが分かる。ライト級のトップとしてやっていけるという確信を持てたよ」

──デンマークでは、米国のような練習はできないということですか。

「デンマークのMMAは、もの凄い勢いで成長しているよ。それでも正直、MMAではまだ第3世界だ。それでも、ここ3年のMMAの発展は凄いし少なからずとも、僕も寄与できていると思う。僕がUFCデビュー戦を戦った大会は、コペンハーゲンのロイヤル・アリーナで行われ1万2000人以上のファンが集まったんだ。

ただし、それ以前はデンマークにMMAの歴史はなかった。僕自身、MMAに転向を考えた時に相談した相手はデンマークのレジェンド、マーティン・カンプマンだったんだ。当時、クレイ・グイダの所属しているチーム・アルファメールのコーチを辞した彼は、デンマークに帰国した直後だった。

そしてマーティンは僕がMMAファイターになる手助けをしてくれた。どういう練習から始めれば良いのか、そこからマーティンに指導を受けた。ただし、僕が住んでいた街からコペンハーゲンまで車で片道90分も掛かり、朝の練習をして夕方の練習まで時間をつぶさないといけない。夜の練習を終えて、家に戻ると11時だ。全くもってチャレンジングな日々だったよ(笑)。

フェラーリと馬ぐらい、米国とデンマークでは環境が違うけど……あの日々は、僕にMMAファイターとしてやっていけるという自信を与えてくれたんだ。そして、さらに強くなるために、自分の能力を最大限に引き出してくれる練習環境を求めるようになった。それを今回、アリゾナで見つけたんだよ」

<この項、続く>

■ UFN ESPN29視聴方法(予定)
8月22日(日・日本時間)
午前8時00分~UFC FIGHT PASS

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