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【Shooto2021#02】プロ修斗世界バンタム級王座防衛、岡田遼「凡人が辿り着く、最高到達点付近には…」

【写真】取材中、あふれ出る感情を抑え懸命に笑顔を見せようとしてくれた岡田遼に──、そしてこれまでの岡田遼に多謝 (C)MMAPLANET

20日(土)に東京都文京区の後楽園ホールで開催されたShooto2021#02のメインで、岡田遼が大塚隆史を相手に修斗世界バンタム級王座防衛に成功した。

その25分間は、コツコツと岡田が積み上げてきたMMAを象徴していた。大きな勝負にはいかない、派手な技もない。ただし、気持ちが途切らすと負ける。まるで市井の人々の営みのような厳しい戦いを勝ちきった岡田は、現役生活をあと1年と区切る発言を試合後にした。


──率直に今の気持ちを教えてください。

「防衛は義務なので、僕の格闘家人生において絶対にやらないといけない責任でした……。それを果たせたかな……」

──ザ・ワンのインタビューを傍から眺めていたのですが、『あと1年で引退する』という発言をされていました。

「もう言っちゃいました……。しんどかったです……」

──UFCに行きたかった。でも、色よい返事はなかった。その現実と戦った10カ月だったかと思います。

「届かないですね……。凡人なりに遠くに行けるように頑張って来たんですけど……ハァ……。去年、色々と動いてもらったのですが、ダメで。そのうちに正規王者になったので、このベルトを獲るまで辞めないと決めていたので……。で、正規王者になって防衛できたらもう良いなかっていう気持ちになりました」

──あと1年というのは?

「来年で僕自身のキャリアが10年になるので……う~ん、そうっすね。でも、体のこともあって本当に長くできないです。この先、修斗のベルトを防衛することで──このしんどい仕事を頑張って行けるのかって自問した時に、なかなか頑張れる気持ちになれないかと……」

──ぶっちゃけてしまうと、試合前のインタビューいや昨年末からそのような空気が岡田選手から出ていました。そうなった時に、この大塚隆史戦でどこまで死力を尽くすことができるのかいう危惧は正直ありました。

「そこは……俺は頑張り切れたし、5R、気持ちを切らさずにこれだけは守り切るんだと……。この仕事だけは最後までやり切って、俺の格闘家人生を胸の張れるモノにしたいという想いでいたので、それだけで頑張れました」

──大塚選手を相手にケージレスリングで優位に立った。それは岡田遼がここまで積んできたモノを見せることができたのではないでしょうか。

「それは凄くありました……。UFCはモンスターの集まりですけど、人間なりにATTに行って学んできて──日本でトップのケージレスリングの技量を持つ人に通用した。マジであの瞬間、試合中だけど『どうだっ!! 高島学、見たか!』って思ったんです。アハハハハ」

──光栄です(笑)。でも、それなら人間同士の会話として『なら、最後までやり切れ』って。反撃食らったじゃないかと(笑)。

「アハハハハハ。さすがに大塚選手でした」

──こういう一線から身を引くような気持ちになったなかで、鶴屋怜がデビューしたことなどは関係していますか。

「次世代の子たちが育ってきている。次に託せる子たちが出てきているので、自分は役割を終えて鶴屋道場の若い子たちにバトンタッチできるかなとは思っています。

本当にこの防衛戦をクリアできれば、それで終わっても良いと思って創ってきたんで……。5Rなので、やるべきことをやってチャンスがくれば仕留める。大きく揺さぶることはせずずに、一手一手で上回って摘んでいこうと……でも摘むことはできなかったですね(苦笑)。

5Rも最初の経験でしたし、大塚選手を相手に5Rほぼ何もさせない試合ができるヤツが、日本のバンタム級に何人いるだっていう気持ちはあります」

──それでも、UFCには届かない。その現実は岡田選手個人の問題でなく、日本のMMA界の問題です。

「…………。…………。しんどいです。でも、本当にサッカーと勉強をやっていた凡人が辿り着く、最高到達点付近には……来られたかなって……」

──オールラウンダー廻の最後に「就職して、結婚して、修斗でチャンピオンになる」っていう廻君の言葉があったじゃないですか。自分はあれが好きで。

「結婚は相手から……ですね」

──それは若干自業自得かと……(苦笑)。私はバケモノ同士が最高の戦いを見せるUFCが頂点にあるMMAを見続け、伝え続けていきたいです。そこを目指す選手たちを追っていきたい。同時に普通の人間……いえば「高校の時の自分より、喧嘩が弱そうな」人が恐怖に耐え、苦しい練習を乗り越えてケージで戦う勇気を見せてくれることに対し、心の底から尊敬心を持ち続けたいです。

「……。僕、絶対に高校の時だったら勝てなかったですよ(笑)」

──才能は枯渇しますが、努力はずっとできます。引退モードで申し訳ないですが、岡田遼はケージの外でもそれができると信じています。

「ありがとうございますっ、本当に……。パーソナルのジムでの基盤もあるし、色々とやっていこうと思います。宅建も取ろうかとか考えています。

何より3本も修斗のベルトを巻くことができて、本当にハッピーなMMAファイター人生です。修斗だから、今日の試合を良い試合だったと言ってもらえます。修斗で頑張ってきて良かったです」

※岡田遼✖大塚隆史、見逃し配信は↓から。

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