【Shooto2020#05】環太平洋バンタム級王座へ、田丸匠─01─「自信でなく、当然勝つということで」
【写真】既に頬がこけ始めた田丸。体重は順調に落ちているそうだ(C)MMAPLANET
8月1日(土)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto2020#05で安藤達也と田丸匠が環太平洋バンタム級王座を賭けて対戦する。
バンタム級転向以降、3連勝。10勝1敗1分という戦績を誇る田丸は、岐阜県瑞穂市のナセール・ド・ソルで磨き上げた独特なスタイルが勝負にいかないという指摘を受けることがある。そんな指摘に反論する田丸はMMAだから安藤に勝てる。喧嘩なら勝てないと断言した。
■世界王座に挑戦できるなら、僕は佐藤さんでも岡田さんでも構わない
──宜しくお願いします。
「お疲れ様です。宜しくお願いします」
──アレッ、声に張りがないですね。減量疲れですか。
「いえ、そんなことないです。ただ塩抜きを始めているからもしれないですね。バンタム級でも、何だかんだと水抜きはあるのですが、今回は緊急事態宣言期間に太ったというのはあります」
──あぁ、やはり練習に影響はでましたか。
「ハイ、対人練習はジムが1カ月ぐらいは閉まっていたのでできかったですし。その間は走る量を増やしていたぐらいでした」
──最近、お隣の愛知県は感染者数が増えていて不安はないですか。
「そうですねぇ。岐阜でも僕らの住んでいるのとは違うところで感染者が出てき始めていて。僕らのところは少ないので、自分が感染するよりも感染源になってしまうことを考えると、皆に迷惑をかけてしまうので怖いという気持ちはあります。
でも、いつまでも怖がってばかりいても前に進むことができないですしね。ワクチンが早々に創られることもないと思いますし。できることで、前に進まないと……。それに昨日(※取材は28日の火曜日に行われた)は坂本(一弘)さんが名古屋まで来てくれて、PCR検査を僕とセコンドと……それから北岡さんの大会に出る選手もしてもらって。ここまでしてくれるんだから、ちゃんとやらないといけないと思いました。
感染者が増える前に僕を応援するためにチケットを買ってくれた人たちもいて、それから増えてしまったから『無理しないでください。東京に行けなくてもしょうがないので』って伝えて……。それでも東京まで応援に来てくれる人もいますし、とにかく僕は戦って勝つだけ……ベルトを獲らないといけないです」
──首都圏でいえばプロ練習は続けているというジムも多かったです。
「ナセール・ド・ソルでいえば出稽古は禁止になっています。ただ、僕の練習は全く変わっていないです。僕は試合前に出稽古をするタイプでもなかったですし、ジムの仲間に支えられて、助けてもらっているので。
体重が落ちるのも早くて、もう65キロぐらいしかないのでコディション的にも大丈夫だと思います」
──1月に藤井伸樹選手に勝って、次は安藤選手だという予想はありましたか。
「全くなかったです(笑)。手塚(基伸)選手と思っていました。安藤さんが環太平洋王座にもう一度挑むということに驚きましたし」
──環太平洋王座……、田丸選手は答え辛いと思いますが、ぶっちゃけてどのような価値観を見出していますか。
「アハハハハ。ホント、言い辛いです(笑)。ぶっちゃけ、自分が目指しているのは世界のベルトです。いえば世界王座への挑戦者決定戦で。ただし、現状として正規王者の佐藤将光がいて、暫定王者の岡田遼がいる。2人がどうなっていくのか。時間が掛かるなら挑戦者決定戦でもないよなって。正直、この状況は歪だと思います」
──ONEと契約するなら、王座返上すべきだと?
「ハイ。そう思います。佐藤さんがやり玉にあがることが多いですけど、佐藤さん自身も返上を考えたことがあると思います。でも現実として持っているままで、なら暫定王者の岡田さんに挑戦することになるのか。佐藤さんと岡田さんがやったあとで、僕が暫定王座とか絡むのか……。まぁ、分からないです。でも世界王座に挑戦できるなら、僕は佐藤さんでも岡田さんでも構わないんです。ただ世界王座に挑戦したいだけで」
──事実上、新型コロナウィルス感染拡大で海外渡航がままならない状況では、佐藤選手が修斗で防衛戦を行うという選択肢が生まれないとは限らないとか考えてしまいますね。
「それもあるんですよね……。でも何とかならんかなって。世界王座に挑戦できる日がなかなか来ないのなら、環太平洋王座の防衛をしていくことになるのか。でも、もう24歳だし、どんどん強い相手と戦うためには修斗と他団体を行き来できるようにならないとダメかなとか考えます」
──そこまで考えていますか!! 実際、このところ修斗は暫定世界王座があることで、各階級に3人のチャンピオンがいるのかという状況です。
「前田(吉朗)選手と福田(龍彌)選手のことですか。福田選手は強いと思いますけど……」
──でも唐突ですよね。タイトルが掛かっていなくても、前田選手越えはしたいでしょうし。
「う~ん、強さの象徴ですからね……ベルトは。でも、海外から見ると、どのベルトも同じだと思います」
──安藤選手との試合を控えて、そこまで次のことが話題になるというのは……。
「自信があるということじゃないんです。当然勝つということで。客観的に考えても、一発貰わなければ負けない。そう思っています」
カウンターが当たる距離を試合のなかでセッティングしているのが分からんの?
──劣性に見えがち田丸匠スタイルですが、本人は全くブレることがないですね。
「猿田戦ぐらいから、そんな風に思うようになりました。とりあえず、負けていないので。ダメージを与えているのは、僕だから大丈夫だと思って戦っています。ただ魚井戦の時は、ちょっと分からんかったですね。あまり冷静でなく、行かないと勝てないと思っていました。対して藤井戦は2Rで、『これは勝つ』と確信して戦っていました」
──それなのに見ている方は、ポイントを失っているかもしれないように見える。非常に興味深いです。
「人がどう見ているのかっていうのは、自分も気になってはいます。あとから中継の実況とか見ていると『あぁ、こんな風に僕が劣性に見えるのか』って思いましたし」
──田丸選手は軟体動物みたいので、ドンと軸がある方が強く見えがちです。
「分かります。ドンとしている選手の回りを動くと、こっちが当ててダメージも与えているのに、向こうがペースを握っていると思われるようですし。
僕は本当に喧嘩が強くないんです。だから駆け引きとかタイミング、騙すのが上手くて勝ってこられたので」
──MMAであっても拳の届かないところに居続けると、逃げ得ているという風に言われがちです。
「それは……僕は納得していないです。『逃げているって何?』って思います。掛け逃げとか言われることが多いですけど、本当に逃げていたら攻撃なんて当たらないし、ああいう仕掛けってテイクダウンを取られるリスクがあるなかで選択して戦っているのに、逃げているとか言うなよって。そうじゃないだけどなって……思います。
逃げていて勝てることなんてないですよ。カウンターが当たる距離を試合のなかでセッティングしているのが分からんの?って。だってMMAですよ、喧嘩じゃないし、殴り合って勝つ必要はないじゃないですか。
僕、喧嘩だったらMMAをやらないです。MMAは色々と工夫して戦うことができる。僕自身、この戦い方の利点も弱点も熟知して戦っているんです。喧嘩だったら、僕は勝てないですから」
──渋谷で安藤選手と肩がぶつかって、喧嘩になると勝ち目はない?(笑)
「そうなるのが、怖いから渋谷に行きません(笑)。怖いですよ、あんなの……」
──では金津園で肩がぶつかると?(爆)
「アハハハ、勘弁してくださいよ。それはもう『僕が奢ります』としか言えないです(苦笑)。でも、安藤選手とは昔、少し話をしたことがあって、気が合う感じはしたんです。好きな感じの人だと思って……その安藤選手と試合をしないといけないので……別にぶっ倒してやろうとか思わないですけど、勝たせてもらいます」
──ぶっ倒そうとは思わない?
「思わないです。フライ級の時は減量でたまったイライラとかストレスを相手にぶつけてやろうっていうのはあったのですが、バンタム級になってからはそういうのはないですし。MMAなんだから拳が届く位置に立ち続けて殴り勝つとかっていう考え自体が、僕にはありえないです」
<この項、続く>