【UFC ESPN12】大勝、佐藤天に48秒を中身を尋ねる─01─「理解し、臨機応変に動けた」
【写真】UFCでの日本人の勝利は、昨年8月の魅津希 来、実に10カ月ぶりとなる(C)Zuffa/UFC
27日(土・現地時間)、ネヴァダ州ラスベガスのUFC APEXで開催されたUFC ESPN12「Poirier vs Hooker」。UFC3戦目を迎えた佐藤天がジェイソン・ウッドから48秒TKO勝ちを収めた。
度重なる対戦相手の変更、会場で試合順の変更を聞かされてなお、佐藤は動揺も見せず最高のファイトをやってのけた。
試合から2日、フロリダに戻った翌朝の佐藤に大勝を振り返ってもらうと、48秒の試合タイム、それは佐藤の成長が凝縮された時間だったことが分かった。
──「おめでとうごます」、「お疲れ様でした」。どちらの声を掛けてほしいという気持ちでしょうか。
「アッハハハ。今は『お疲れ様でした』──ですかね。終わってみれば、そういう感じですね。試合前はそんな風には感じていなかったのですが」
──UFC Fight Passの中継開始時間になると、佐藤選手の試合がメインカードに変更という説明があり、驚かされました。
「僕もあと2試合、バンテージを巻いている時に試合順が変わるって聞かされたんです」
──えっ!!
「もう笑っちゃいましたね。でも、焦ることはなかったです。まぁ、セコンドのヘンリー(フーフト)とかもっと大きな舞台で色々と経験していてまるで動じていなかったですし。チーム全体で、まるで動揺はなかったです」
──私などひょっとすると、試合が飛ぶんじゃないかとドキドキしていました……。
「その可能性もあるとは思っていました。でも、ダメならダメでしょうがない。でも試合があることを考えて集中力を切らさないようにしていました。試合前に言っていた『人に依存しない、自分のやるべきことをやるだけ』を考えていた感じです。
あそこでアタフタすると、これまでやってきたことをふいにしてしまいますからね。それにこの短期間でオファーを受けた相手も、試合場に現れた時点でやる気の固まりですから。
そうですね……ウィットが来てくれて、試合ができたことに感謝しています。何とか試合に辿り着け、あの結果を残せたことは素直に嬉しいです。結構、練習してきたことが出せましたし。冷静に戦えて、結果論として早い段階に倒せた感じですね」
──対戦相手云々でなく、この間に積んできたことを出す。それはどのような戦いだったのでしょうか。
「基本的には自分の強みを生かした打撃、出入りをしっかりとして足を止めないことを考えていました。そしてレスリングになり、相手に入られても安全にスクランブルに持ち込もうと思って。とにかく足を止めないこと、それは去年の9月の敗戦後から練習でやってきたことでしたしね」
──最後は結果として秒殺KOでしたが、やろうとしていたことの過程であの結果に結びついた感じですか。開始後はジャブを見せていた感がありましたが。
「最初の方のジャブは届いていないです。1発目は早めのジャブで反応を見ました。相手は見えていなかったです。なので2回目は敢えて遅く、モーションをつけて打ったのですが、それでも反応しませんでした。
もう一つ当てないジャブを出して、4回目は顔に一度当てようと思って殴り、やはり反応していなかったです。もともと映像をチェックした時から、攻撃に反応できない選手だということは分かっていたのですが、最初の4発でそれを実際に確認した形でした」
──そして右ジャブから左ストレートでダウンを奪ったと。
「最後はワンツーではなくて、右ジャブを当ててから踏み込んで左ストレートを打ったんです。相手の動きを見て、半歩詰めて殴ることができましたね。
これまでも当たると思って距離や位置を考えて戦うことはできていたのですが、それよりも一歩進めた感じがしました。ジャブが当たると、相手の体はのけ反る。なら、そのまま打つとKOできるようなパンチを打ち抜けない。だから踏み込んでから殴りました。
もともと距離も自分の距離で、相手の反応を見て、さらに工夫できました。それ以前のジャブで確認したことを踏まえて、ジャブ、ステップ、左ストレートという流れで倒せたことは、自分で理解し臨機応変に動けたので、成長できたところかと思います」
──そこまで考えて動いた結果なのですね。
「戦っている最中の感覚と、あとから映像を視た時の感覚も全くギャップがなかったです」
──ダウン後もウィットが、起き上りながら組もうとした。あの時も無我夢中でなく、凄く冷静に切って殴り、サイドバックで抑えつつのパンチの連打で仕留め切りました。
「パンクラスで最後に戦ったマット・ベイル戦で、ダウンを取ってから足を掴まれてテイクダウンされじゃないですか?」
──「おいっ、そこは大切なところだろう!!」という(笑)。
「あの時のことを考えると、レスリングにも力をいれて調整できていたので、冷静に戦うことができましたね。試合直前にもレスリング・コーチが、これまでやってきたことを確認するような連絡をくれて。頭がクリアーな状況で試合に挑むことができました。
だからダウンを取ってからも一回離れてアッパーを入れて、サイドバックで相手の体を止めることができましたね。詰めの部分も、終らせにいっているのですが冷静に動けました。そいう意味でも、試合時間が短い割には収穫のある試合になりました」
<この項、続く>