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【Fighter’s Diary con on that day】「試合がない日々」を生きる堀口恭司の声 on 2013年10月31日

Horiuchi Kyoji【写真】堀口恭司が水垣偉弥となぜ、一緒なのか……は元記事で確認ください (C)ABEMA & MMAPLANET

全世界を巻き込む新型コロナウィルス感染拡大の影響は当然のように日本の格闘家たちの人生にも影響が出ている。試合がない、大会が開かれない、練習場所の確保も困難だ。

そんな今、格闘技を愛する全ての人へ──ABEMA格闘CH が公式YouTubeチャンネルで Fighter’s Diary Ep.01というドキュメンタリームービーが12日(日)より、アップされている。

第1回でクローズアップされた格闘家は平田樹、若松佑弥、中村K太郎&杉山しずか夫妻、堀口恭司、青木真也の6名だ。

Fighter'sDiaryFighter’s Diaryは3週に渡り、3つのエピソードで総勢16人の格闘家たちの声をYouTubeで伝え、26日(日)午後7時より、ABEMA格闘CHにて Fighter’s Diary完全版が放送される。

そんなFighter’s Diaryでは「試合がない日々」を格闘家たちはどう生きるのか? ──という今の声を集めた。MMAPLANETでは、タイアップ企画ならぬボーディング企画を提案。MMAファイター達が今を発せられるようになった原点を探る上で、あの日の彼らや彼女達の声=on that dayとして、MMAPLANETインタビュー初登場時の声を紹介したい。

題してFighter’s Diary con on that day、第5回は2013年11月1日公開、10月31日に取材が行われた──UFCデビュー戦となったダスティン・ペイグ戦後の──堀口恭司のあの日の声をお届けしよう。


<リードを含めた完全版はコチラから>

――9月の第2週ぐらいにUFC参戦が決った堀口選手ですが、10月10日に共同記者会見が開かれるまで、なかなかメディアへの露出がありませんでした。やはり初めてのUFCでナーバスになっていたということでしょうか。

「いや、自分の方では取材を断っているつもりとかなかったんですよ。それに緊張もしていなかったし。ただ、マネージメント・サイドの方が、取材は1日でまとめて済ませようと気を遣ってくれたみたいで」

――事実上、試合まで1カ月。この間の練習で最も気にしていたのはどのようなところだったのですか。

「UFCでは誰と戦っても強いので、自分の一番良い動きを出せるように練習していました。対戦相手がどうのこうのっていうよりも、自分の動きができるようにという部分を大切にしていたんです」

――2R、KO勝ちというデビュー戦でしたが、初回にはバックに回られRNCも狙われました。堀口選手にとって、自分の動きができた試合になったのでしょうか。

「30点です(苦笑)。自分が求めていた動きではなかったです。本当に動きが固かったし。言い訳になってしまうのですが、試合前に尿検査とかあって、アップもできずにオクタゴンに入ったんです。だから、動きが固いままで。特に緊張したとかっていうこともなかったのですが、アップができない影響はありました」

――1Rにバックを取られたシーンなどは、あの態勢と動きだと普段の練習では背中に張り付かれることはなかったのではないですか。

「そうですね。やっぱり手足も長いし、ああいう風にバックを取られることは日本ではないですね。あんなに巻きつかれ、振りほどけないというのは。でも、UFCなんだし。こういうもんなんだろうと思って戦っていました。絞めはそりゃあ、苦しかったですけど、手を一本取っていたので極められることはないと思って淡々と戦っていました」

――1R、終了時もスイープからトップを許した状態でした。初回をポイントで取られ、そこでも焦ることはなかった?

「なかったです。まず、ポイントをそれほど気にしていなかった。如何に決める(倒す)のかという部分で戦っていたので。1Rを落としても、2R、3Rのなかで決めようと試合を組み立てていました」

――緊張しなかったということですが、計量のときなど、あまり日本では見られない笑みを見せていました。

「そうですか?  緊張は全然していなかったですよ。『おお、UFCか』って会場を眺め、『このあと向かい合うんだ』って思うとにやけてしまって(笑)」

――さすがの強心臓ですね。ところでセコンドではもともと田村一聖選手が同行する予定でしたが、RFCでの負傷で急遽、矢地祐介選手に変更されました。先輩の田村選手が訪米できなくて、セコンドが代わるという緊急事態にも動じなかったのでしょうか。

「動じなかったですね。もちろん、田村さんが必要だから、セコンドをお願いしていたのですが、戦うのは僕なので。周囲に何かが起ったり、米国だから日本と違うとかってことで動揺していたら、自分のやるべきことができなくなる。それって、本当に意味がないと思うんです。まずは自分が戦うということ。そこが大切なんで。

自分がコントロールできないことを色々と考えてもしょうがない。自分は自分だって考えています。セコンドが田村さんから矢地君に代わっても、僕がやることは変わらないんです。精神状態も変わらないです。まずは自分の考えを纏めて、それから人の意見を聞く性質なので試合中もまぁ、同じなんです」

――なるほど。ペイグはリーチの長い選手でしたが、ああいう選手がジャブを使ってフットワークを駆使してくると厄介だとは思いませんでしたか。

「それは厄介ですが、戦っていて皮膚感覚でペイグは前に出てくるという確信がありました。だから、どう決めるか。自分のなかでシナリオはできていました。ただ、これからリーチと足を使ってくる選手と戦うこともあるだろうし、レスリングを強化し押し込んでから、テイクダウン。そこからパウンドっていう流れを強化していきたいです」

――8月に水垣偉弥選手が、エリック・ペレスと対戦したとき、打撃戦のなかで見事なテイクダウンを決めています。

「その試合は見ていないのですが、水垣さんの試合は何度か見ていて、打撃戦から相手を押し込んで倒すという部分は、ああいう戦い方もあるだって頭にインプットしています。ポイントを取られている時は、しっかりとああいう風にいかないといけない場合も出てくるって覚悟しています」

――堀口選手はストライカーですが、ブローラーではない。闇雲な打ち合いはしないです。

「ハイ、ステップを踏み、フットワークを大切にしています。ただ、ああいう動きを米国のジャッジが理解しているのか分からない部分があるので、今回も試みたのですが、頭を振って入るボクシング的な動きも取り入れていこうと思っています。そこに従来からのステップを加えていきたいんです」

――空手のステップにボクシングの動きを加えたスタイルで、UFCを戦っていくと。

「UFCはポイント合戦になる。だからこそ、打撃だけでなくレスリングや寝技をしっかりと強化したい。それと打撃戦も打ち合いじゃなくて、自分だけ当てる。そんな戦い方で接近戦も仕掛けていきたいです」

――減量に苦労しない堀口選手ですが、連敗していたクリス・カリアソが復活の勝利を挙げる前の時点で8位。それだけバンタム級と比較すると層が薄いフライ級への転向は視野に入れていますか。

「カリアソには勝てそうですけどね。ハハハハ。でも、バンタム級で戦っていきます。デカい選手を倒したいというのが、根本の部分であるので」

――小よく大を制すというのは空手家としての考え方なのですか。

「KIDさんです。自分の憧れはKIDさんで、KIDさんはデカい選手をバコバコと倒していました。自分もそういう選手になりたいんです。簡単ではないことも理解していますが、バンタム級に拘りたいですね」

――UFCと契約を果たした選手は、即タイトル戦線に割って入る選手と、サバイバル戦に放り込まれるファイター、2種類があると思います。堀口選手は後者に当てはまると思うのですが、どれぐらいでトップ集団入りできるという見込みでいますか。

「2年は掛かると思います。5試合ぐらいですね。そのためにもレスリングと柔術、この二つを伸ばしていきたいです」
――レスリングと柔術を伸ばすために、どのような工夫が必要だと考えていますか。

「グランドスラムのプロ練習に参加させてもらいたいと思っています」

――互いに将来性を買われ、ある意味、ライバルでもある田中路教選手が所属するジムでの練習となりますが。

「強くなりたいので、そういうことに拘ることはないです。強くなるためなら、どこにでも足を運びます。そして、僕を強くしてほしいです」

――8月に矢地選手のセコンドで訪れたPXCで見たカイル・アグォン。レスリングとスクランブルの強さを認めていましたが、彼が田中選手に挑戦した試合はチェックされましたか。

「見ていないです(苦笑)。自分、水垣選手の試合もそうですが、どうやって見たら良いのか分からないんです……。動画とか落ちていないと」

――なるほど(笑)。田中選手がシングルをスイッチで切り返されたり、やはりアグオン強かったです。際で取られそうになったり、一瞬は取られて、田中選手が返していくという展開が何度も見られました。セコンドの勝村(周一朗)選手も、『ポジションをキープできる選手と戦うと、あれが通用しなくなる』って課題を見つけていました。

「自分、そういう会話をしたいんですよ。どうやって、修正していくのか――とか。そういうのが、今、自分のジムにはないんです。やっぱり、KRAZY BEEは選手同士なんで、皆が皆、自分中心になってしまうんで。アドバイスはできても、指導ではない。だから、組技に関しても、僕は伸びていない。一時期、植松(直哉)さんが朴(光哲)さんとの関係で来てくれていた時期があったんですが、今は来られていないし……。

ホント、ずっと来てほしかったんです。だから、技術を教えてほしいので立川まで訪ねていって、指導してもらおうかと思っています」

――馬込から立川まで通うということですか。

「時間が勿体ないという考えもありますが、とにかく強くなりたい。そのためには何でも……、ハイ」

――技術を学びたいというのは、田中選手も立ち技に関して言っていました。スパーだけでなく打撃の技術を指導してもらいたいと。

「その通りだと思います」

――グラップリングが堀口選手の強化すべき部分であり、それは田中選手の得意分野です。田中選手の強化すべき点が打撃にあり、堀口選手の得意分野である。田中選手から打撃の練習をしたいという申し出があった場合はどうしますか。

「全然、構わないですよ。僕が役に立てるなら」

――某元UFCファイターが、堀口選手に打撃の指導を受けて、凄く分かりやすく勉強になると言っていました。

「自分の打撃のスタイルしか教えることはできないですけど、そこで何か掴んでもらえるのであれば。人それぞれスタイルっていうものがあると思うので、その人に合った動きというのは教えることはできないのですが、僕がやってきたことで何か勉強にしてもらえるなら、自分の技術を伝えることは問題ないです。それで良ければ……って思っています」

――ちなみに田中選手のことは、おかしな表現になりますが、認めているのですか。

「もちろんですよ。強いッスよ。PXCのチャンピオンですし。あの場で勝てる選手、ベルトを持っているんですから」

――今年の1月にFight&Life誌の取材で、堀内選手、田中選手、佐々木憂流迦選手を一つのレポートで掲載するとき、鼻にもかけていない雰囲気がありましたが……。

「いやいやいや(苦笑)。違いますよ。アレは、ハッキリ言って憂流迦にムカついていたんです。彼はいろいろ、僕のことを言っていたから。『何だよ、コイツ』って思っていて。だから、あのときは憂流迦……佐々木選手に言いたかったことと一緒になってしまったんです。田中選手には、何もなかったです(苦笑)。

でも、もう今は佐々木選手とだって練習したいです。同じ階級であの長身で、リーチも長い。そして寝技が得意っていう選手、なかなか日本にはいないですし。でも、UFCだと佐々木選手のような体格の選手ばかりになる。ダスティン・ペイグだって、そういう選手だったじゃないですか。だから田中選手だけでなく、佐々木選手とも一緒に練習していきたいです。強くなるためなら、何だってやるんで」

――なるほど、そんな練習が実現すれば、お金を払っても見てみたいですね。ところで打撃に関しては、KRAZY BEEと栃木の一期倶楽部で二瓶弘宇先生以外に指導を受けているのでしょうか。

「ほとんど一期倶楽部です。あと、ボクシングもちょっとやっています。ウィービングしてフックとか、ペイグ戦で使ったのもボクシングの動きでした。ボクシングジムで習ったことを二瓶先生に伝えて、そこからどう動きたいのかも報告していました。『あのフックは良かったぞ。ちゃんと体重が乗っていた』って言ってもらえました(笑)」

――二瓶先生にセコンドについてほしくは?

「先生はあれでいて、あがり症なんですよ。だから、先生があがっているのを見ると、僕も迷いが生じるので。先生もそこを分かっているんです。でも、常に見ていてくれていますから。先生が見てくれているから、負けられないっていうのが一番です」

――ところで10月の中旬から、続々と日本人選手がUFCと契約をしています。同じバンタム級でも清水俊一選手が参戦することも決りました。負けていられないですね。

「そりゃあ、負ける気はないですよ。アハハハハ。ていうか、負けないですよ。でも、急に日本人選手の契約が増えて不思議ですよね。僕は結構、時間が掛かったのに。何か傍から見ていると、パッパッパッと決まったみたいで。ちょっと納得いかないんですけど、まぁ、自分が結果を残せば良いことなので」

――修斗ではずっとリングで戦っていましたが、VTJでケージを経験しました。VTJに参戦したことは、UFCで戦うときに助けになりましたか。

「VTJで戦うときには、壁を使った練習を続けていたので、ケージに戸惑うことはなかったんです。もう、自分は練習でできていたので。それでも、リングしか経験していないよりも、VTJを経験したことでより動けたと思います」

――対戦相手もTPFバンタム級王者イアン・ラブランド、そしてキング・オブ・パンクラシスト・バンタム級王者の石渡伸太郎選手でした。あの2人と負けられない試合を経験したことも大きくなかったですか。

「負けちゃいけないのは、いつものことで、それは修斗の試合も変わりないです。どの試合だって負けちゃいけない。ただ、ラブランドのように前に出てくる選手、石渡選手に実戦でケージに押し込まれる経験をしたのはデカかったです。

あの経験があったから、押し込まれた時の対処方法も分かってきたし、前に出てくる選手にどうすればカウンターを合わせることができるのかも分かったので。自分が下がりっぱなしじゃダメだっていうのも分かって、良い経験になりました」

――そんな経験を経て上がったオクタゴン、そこから見える光景は今までのキャリアで見られたモノと違ってくるのでしょうか。

「あそこでチャンスを掴めば、そこから先が違ってくるという意味で、全然違いますね。練習に熱も入るし、ほんと内面から変わってきます。UFCで勝っていれば、これ一本で食っていけるので。MMAが仕事になったのはデカいです。やっぱりお金の心配とかしていると、集中できないですから」

――どんどんノックアウト・オブ・ザ・ナイトを獲得してください(笑)。

「そうッスね。あの大会、KOばっかりだったので……。自分は一番最初だったんで、KOしても即ボーナスが貰えるほど甘くなかったですね(笑)」

――ボーナス狙いなら、パンチで効かせたあとに絞めですよ。KOよりサブミッション・オブ・ザ・ナイトは競争率が普通は低いですから。

「なるほど。そういうこともできないと……ですね。極めを磨いていきたいですね。まずはポジションを取って殴ることが先決なんですが、そこができるようになると極めまでできる選手になりたいですね」

――では最後にUFCで勝ったあと、マッチメイカーのショーン・シェルビーから何かお褒めの言葉はもらえましたか。

「いえ、ショーン・シェルビーとは試合後は会わなかったですね」

――そうですか……。

「でも、ダナ・ホワイトに声を掛けてもらえました。『KOできる選手は好きなんだ』って言ってもらえました。嬉しかったです。自分も決めて勝ちたいんで。そういう部分で評価してもらえて良かったです」

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