【Interview】堀口恭司(01) 「バンタムでデカいヤツを倒したい」
【写真】10月31日、都内某所のスタジオで堀口恭司はひかりTVのUFC中継の解説の音入れを行った。この際、水垣偉弥と入れ替わりでスタジオに入り2人の対面が実現。新旧UFCファイターという表現に水垣は「インタビュー、堀口選手だけですか? 僕は旧式なんで」と周囲を笑わせていた(C)MMAPLANET
10月19日のダスティン・ペイグ戦で、UFCデビューを鮮烈なパウンドによるKOで飾った堀口恭司。待望の舞台に立ってから2週間、改めて初オクタゴンを振り返ってもらった。
自らへの信頼感と、これからの課題の両方をしっかりと見極めている堀口は、自信と謙虚さを絶妙のバランスで合わせ持っていた。
――9月の第2週ぐらいにUFC参戦が決った堀口選手ですが、10月10日に共同記者会見が開かれるまで、なかなかメディアへの露出がありませんでした。やはり初めてのUFCでナーバスになっていたということでしょうか。
「いや、自分の方では取材を断っているつもりとかなかったんですよ。それに緊張もしていなかったし。ただ、マネージメント・サイドの方が、取材は1日でまとめて済ませようと気を遣ってくれたみたいで」
――事実上、試合まで1カ月。この間の練習で最も気にしていたのはどのようなところだったのですか。
「UFCでは誰と戦っても強いので、自分の一番良い動きを出せるように練習していました。対戦相手がどうのこうのっていうよりも、自分の動きができるようにという部分を大切にしていたんです」
――2R、KO勝ちというデビュー戦でしたが、初回にはバックに回られRNCも狙われました。堀口選手にとって、自分の動きができた試合になったのでしょうか。
「30点です(苦笑)。自分が求めていた動きではなかったです。本当に動きが固かったし。言い訳になってしまうのですが、試合前に尿検査とかあって、アップもできずにオクタゴンに入ったんです。だから、動きが固いままで。特に緊張したとかっていうこともなかったのですが、アップができない影響はありました」
――1Rにバックを取られたシーンなどは、あの態勢と動きだと普段の練習では背中に張り付かれることはなかったのではないですか。
「そうですね。やっぱり手足も長いし、ああいう風にバックを取られることは日本ではないですね。あんなに巻きつかれ、振りほどけないというのは。でも、UFCなんだし。こういうもんなんだろうと思って戦っていました。絞めはそりゃあ、苦しかったですけど、手を一本取っていたので極められることはないと思って淡々と戦っていました」
――1R、終了時もスイープからトップを許した状態でした。初回をポイントで取られ、そこでも焦ることはなかった?
「なかったです。まず、ポイントをそれほど気にしていなかった。如何に決める(倒す)のかという部分で戦っていたので。1Rを落としても、2R、3Rのなかで決めようと試合を組み立てていました」
――緊張しなかったということですが、計量のときなど、あまり日本では見られない笑みを見せていました。
「そうですか? 緊張は全然していなかったですよ。『おお、UFCか』って会場を眺め、『このあと向かい合うんだ』って思うとにやけてしまって(笑)」
――さすがの強心臓ですね。ところでセコンドではもともと田村一聖選手が同行する予定でしたが、RFCでの負傷で急遽、矢地祐介選手に変更されました。先輩の田村選手が訪米できなくて、セコンドが代わるという緊急事態にも動じなかったのでしょうか。
「動じなかったですね。もちろん、田村さんが必要だから、セコンドをお願いしていたのですが、戦うのは僕なので。周囲に何かが起ったり、米国だから日本と違うとかってことで動揺していたら、自分のやるべきことができなくなる。それって、本当に意味がないと思うんです。まずは自分が戦うということ。そこが大切なんで。
自分がコントロールできないことを色々と考えてもしょうがない。自分は自分だって考えています。セコンドが田村さんから矢地君に代わっても、僕がやることは変わらないんです。精神状態も変わらないです。まずは自分の考えを纏めて、それから人の意見を聞く性質なので試合中もまぁ、同じなんです」
――なるほど。ダスティン・ペイグはリーチの長い選手でしたが、ああいう選手がジャブを使ってフットワークを駆使してくると厄介だとは思いませんでしたか。
「それは厄介ですが、戦っていて皮膚感覚でペイグは前に出てくるという確信がありました。だから、どう決めるか。自分のなかでシナリオはできていました。ただ、これからリーチと足を使ってくる選手と戦うこともあるだろうし、レスリングを強化し押し込んでから、テイクダウン。そこからパウンドっていう流れを強化していきたいです」
――8月に水垣偉弥選手が、エリック・ペレスと対戦したとき、打撃戦のなかで見事なテイクダウンを決めています。
「その試合は見ていないのですが、水垣さんの試合は何度か見ていて、打撃戦から相手を押し込んで倒すという部分は、ああいう戦い方もあるだって頭にインプットしています。ポイントを取られている時は、しっかりとああいう風にいかないといけない場合も出てくるって覚悟しています」
――堀口選手はストライカーですが、ブローラーではない。闇雲な打ち合いはしないです。
「ハイ、ステップを踏み、フットワークを大切にしています。ただ、ああいう動きを米国のジャッジが理解しているのか分からない部分があるので、今回も試みたのですが、頭を振って入るボクシング的な動きも取り入れていこうと思っています。そこに従来からのステップを加えていきたいんです」
――空手のステップにボクシングの動きを加えたスタイルで、UFCを戦っていくと。
「UFCはポイント合戦になる。だからこそ、打撃だけでなくレスリングや寝技をしっかりと強化したい。それと打撃戦も打ち合いじゃなくて、自分だけ当てる。そんな戦い方で接近戦も仕掛けていきたいです」
――減量に苦労しない堀口選手ですが、連敗していたクリス・カリアソが復活の勝利を挙げる前の時点で8位。それだけバンタム級と比較すると層が薄いフライ級への転向は視野に入れていますか。
「カリアソには勝てそうですけどね。ハハハハ。でも、バンタム級で戦っていきます。デカい選手を倒したいというのが、根本の部分であるので」
――小よく大を制すというのは空手家としての考え方なのですか。
「KIDさんです。自分の憧れはKIDさんで、KIDさんはデカい選手をバコバコと倒していました。自分もそういう選手になりたいんです。簡単ではないことも理解していますが、バンタム級に拘りたいですね」
――UFCと契約を果たした選手は、即タイトル戦線に割って入る選手と、サバイバル戦に放り込まれるファイター、2種類があると思います。堀口選手は後者に当てはまると思うのですが、どれぐらいでトップ集団入りできるという見込みでいますか。
「2年は掛かると思います。5試合ぐらいですね。そのためにもレスリングと柔術、この二つを伸ばしていきたいです」