【PFL Europe2025#02】PFL欧州でワールドクラスのバンタム級=UFC6勝2敗のラピルース×中東の覇者タレブ
【写真】この試合はタレブ目線だと、さらに興味深い(C)PFL
5日(土・現地時間)、ベルギーはブリュッセルのINGアリーナでPFL Europe2025#02が開催される。
Text by Manabu Takashima
2025年のPFL欧州リーグは3月に英国、北アイルランドのベルファーストで戦いの幕が切って落とされライト級トーナメント準々決勝が実施された。第2回大会は5月23日にパリで予定されていたが、キャンセルに。結果、1カ月2週間遅れで隣国ブリュッセルにおいて開かれることになった。
今大会はバンタム級準々決勝4試合が用意され、メインは無敗のご当地ファイターで、プロアマ通算14連勝(プロでは6連勝)中のパトリッキ・アビホハが、ダニー・ロバーツと戦う。ロバーツはUFCからGFLに新たな戦場を求め、旗揚げ戦でネイマン・グレイシーとの試合が組まれていた。が、ご存じのように同大会は行われることはなかった。
いずれにせよAres FCやPFL Euroで快進撃を続けるアビホハが、UFCで7勝7敗だったロバーツに対し、どのような戦いを見せることができるのか。ある意味、PFL欧州路線の成果が問われる一戦となる。
そんなメイン以上に気になるのが、コメインのバンタム級戦=テイラー・ラピルース×アリ・タレブの一戦だ。33歳のラピルースは2度のUFC在籍期間で、それぞれ3勝1敗と勝ち越しているばかりか、2度とも白星を得た後でUFCを離れている。つまりはオクタゴンで6勝2敗の好成績を残しているラピルースは、今も完全にワールドクラスの実力を誇っているといえるだろう。
21勝4敗のラピルースに対し、アリ・タレブは12勝1敗の27歳。8月2日にUFCで平良達郎と戦うアミール・アルバジと同様に、政情不安定の母国を離れ移民としてスウェーデンに移住したイラク人選手だ。タレブはプロデビュー2戦目直後に、コロナ・パンデミックが起りブランクを経験した後、UAEWと契約をした。
砂漠のフィーダーショー=UAEWで5連勝を飾り、その5戦目では現UFCファイターのヴィニシウス・オリヴェイラを右オーバーハンドでKOしてバンタム級のベルトをタレブは巻いている。2022年にPFLと契約して2023年にPFL Europeに参戦、バンタム級T準決勝でクルシェド・カフロフに判定負けを喫し、プロ初黒星を経験した。昨年はPFL MENAにリーグを変えて出場するとバンタム級を制している。
中東&北アフリカ・リーグを完全制覇したタレブは、ワールド・トーナメント出場が期待されたが、50万ドルを賭けた8人トーナメントの枠は与えられなかった。
タレブは前述したオリヴェイラを倒した右オーバーハンドだけでなく、前手の左フックをカウンターで打ち込んでのKO勝ちも記録している。
「5年間も紛争状態の国に住んでいた。ガキの頃から頭の中も戦争状態だったんだ。そのうえ言葉も通じないスウェーデンにやってきて、拍車が掛かった」と本人が語るほど、タレブの精神力、そして闘争心を尋常でないほど強い。
その気持ちの強さに裏付けされたファイトスタイルは、ガンガンとプレッシャーを掛けて近い距離で拳を思い切り振るうというもの。しかも、相手の攻撃を被弾しても目を広げて抜群のタイミングでカウンターも打ち込める。強い振りに反応させて、次の一手を打ち込むことも多い。一発目に意識がいった相手は二発目が見えていない。それがKO率7割の要因だ。加えて打撃に圧された相手の逃げのテイクダウンを切って落とすギロチンも、タレブは得意としている。
そんなタレブに対し、ラピルースは遠目の距離が強い。サウスポーの構えからジャブと前蹴りで距離を取り、ステップインしてする相手にヒザ蹴りを合わせ、クリンチではヒザだけでなくヒジという攻撃手段も持つ。
ロングレンジとゼロ距離はラピルース、ショートレンジはタレブ。勝負の行方を伺うと、タレブは遠い距離には付き合わないだろう。そこでラピルースが足を使ってくると、追いかけたところで拳やヒザを被弾する可能性はある。
ただし、ラピルースが攻めのステップ、サークリングをしないとタレブの爆発力に巻き込まれてしまうだろう。とにかくタレブは気が強い。1度しか経験していない負け試合もKO負け直前まで追い込まれながら、打ち返してピンチを乗り越えている。
ペースの速い、ガチガチの打撃戦になればタレブ有利、その勢いをラピルースがいなすことができれば、タレブの戦意を逆手に取ることができる。MMAとしてすかし合いも含めて、スリリングな攻防と精神戦が見られそうな要注目の一番だ。
なおパリで組まれていたマンチェスターユナイテッドやユヴェントスで活躍し、81キャップを誇る元レ・ブルーのパトリス・エヴラのMMAデビュー戦は、今大会にスライドはされていない。
■視聴方法(予定)
7月6日(日)
午前0時45分~U-NEXT