【Special】月刊、青木真也のこの一番:2月─その参─ヤーソラフ・アモソフ✖エド・ルース「23連勝」
【写真】化けの皮が剥がれるどころか、本物ぶりを見せてしまったアモソフ(C)BELLATOR
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2月の一番、第3弾は21日に開催されたBellaor239からヤーソラフ・アモソフ✖エド・ルースの一戦を語らおう。
──1月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるのでしょうか。
「ベラトールのウクライナ人、アモソフとエド・ルースの試合ですね。アモソフはデビューから23連勝、カビブ・ヌルマゴメドフに続く記録なんですよね。
ウクライナって少し面白いです。ジョージア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバっていうあたりはEUにもまだ加盟できない旧ソ連の国で」
──政敵の排除や民主主義の後退などウクライナは問題視されていた時期があるようですね。
「決して豊かでなく、日本人からしてみればアーリー・リタイアする人にとって東南アジアよりも生活費が安いんじゃないかっていう国から、あんな選手が出てきた。ずっとローカルショーで戦ってきて」
──そうですね、戦績は素晴らしいです。ただしベラトールで戦う前は10連勝以上しているのに、対戦相手は3勝だったり、0勝2敗だったり。よくて8勝3敗とか6勝1敗で創られたレコード観というのはありました。
「そうなんですよ。それがベラトールに来てエリッキ・シウバやデヴィッド・リッケルズに勝ち、今回はエド・ルースのテイクダウンを切って払い腰で投げるわ、ダブルレッグでテイクダウンは取るわって。
女子MMAって柔道の選手は柔道過ぎるじゃないですか? それがアモソフとか旧ソ連系の選手って1周回ったというのかワキを差したり、小手を決めて投げるという風で。柔道ではなくて、柔道をMMAに取り入れているのであって、柔道ではない。そこが注目すべき点ですよね。あとはもう体が強い(笑)」
──ONEでマラット・ガフロフに勝ったユーリ・ラピクスもそうですが、まだMMAの局面が融合している部分は見えず、一つ一つの局面が強いような試合展開です。
「昔でいえばカーロス・コンディットっぽいですよね。個が強く接合している部分は緩いけど、決して穴は空いていない。だから、そこをついて攻められることがない。
僕、エド・ルースって強いと思うんです。普通にスクランブルゲームで負けるイメージがない選手ですよ。NCAAでベン・アスクレンとかよりも、勝っている。UFCにいればグッドファイターの1人でしょうが、まぎれもなく強い。だから、この試合はアモソフの化けの皮が剥がされると思っていたんです。レコードが綺麗だろうけど、そういうヤツにルースを勝たせる──アップの試合だと思っていました。
それがMMA的なまぜこちゃになった部分でなく、ルースの組みに対して組みで勝ってしまう。どんな風に練習しているのか、きっと米国でもうやっているのでしょうけど」
──ベラトールで戦うようになってATTで練習しているようですね。
「そういうことですよね。ATTかHardknocksか、ジャクソンとかヒカルド・アルメイダのところにロシア系のファイターも練習していますしね。そういうところで知識を詰め込んで、ロシアや東欧のファイターって強くなっていますからね」
──次はドゥグラス・リマの持つ世界ウェルター級王座挑戦もあり得るようですが。
「ドゥグラス・リマは強いですよ。アモソフなんかは、PFLに行っちゃったロリマクとかにやっつけてほしかったですね。ああいう荒くて強い選手を、テクニックでチョンチョンにする──そういうセンスあるマッチメイクが僕は好きなんです(笑)。
まぁドゥグラス・リマは修羅場を経験しているし、そういう相手に戦って勝ってきたわけだから、アモソフより上だと思っています」
──アモソフがひっくり返す可能性は?
「それはありますよ。だって山口芽生さんとザンボアンガみたいなもんで……イージーだろうって思っていたら、あんなことになってしまったんだから。そういうことを考えると、ドゥグラス・リマの方が強いだろうけど、アモソフは何があるのか分からない。おかしな強さを持っているかもしれないです」