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【ONE107】デルフィーノ戦へ、和田竜光─01─「DJと試合して『OKじゃねぇ?』と思っているところは…」

Tatsumitsu Wada【写真】常にMMA頭脳が明晰なので、MMA以外で成り立っている人なのだからと感じる (C)MMAPLANET

31日(金・現地時間)にフィリピンはメトロマニラのパサイ・シティ、MOAアリーナでONE107「Fire & Fury」が開催され、和田竜光がイヴァニウド・デルフィーノと戦う。

本来は昨年3月の日本大会で組まれていたこのマッチアップ、デルフィーノの欠場から10カ月を経て実現されることとなった。

この情報化社会にあって、まるで実態が掴めないデルフィーノ戦を前に和田をインタビュー。まずは昨年8月のデメトリウス・ジョンソン戦を振り返ってもらい、あの試合が和田竜光という人間にどのような影響を及ぼしたのかを尋ねた。


──DJとの試合から5カ月、この時間というのは他の選手と戦った後の5カ月間と違うということはありましたか。

「気持ち的にはDJに触れ合えたことで、単純に嬉しさがありました。彼と試合をしたことに対して、そのような気持ちになっている期間は確実にありましたね。ただ、ある程度の時間が過ぎると普通の日々に戻りました。凄い経験をしたとは思いますが、あの試合があったから自分が急に強くなるわけではないので、どれだけの変化があるのかといえば……それほどないです」

──改めてDJ戦ですが、初回にバックを取った後のデメトリウス・ジョンソンの対応力が他のファイターと違うように感じることは?

「相手が苦手なところ、自分が攻められるところをついていくのセオリーなのですが、初回にアレがはまったので2Rからも攻めることができると思ってはいました。でも簡単にさせてもらえなかったですね。普通はDJのようには、なかなか対応できないモノだと思います。

Wada vs DJ初回にバックを取った時──お竜ロックは、バックにつくところまでがお竜ロック1で。あそこから相手の反応に合わせてトップ、マウントを取るまでが流れなんです。でも、DJはあそこで動くともっと危険になるということを察知したのか、動かなかった。

普通だったら動くところを敢えて動かず回避しました。トップを取ることができればポジション的にも優位になるし、攻撃もしやすくなります。初見殺しではないですが、知らない人は動くものなんです。普通は。DJはそこに行ったらヤバイというのが分かるんだと思います」

──さすがにUFCで世界王座防衛11度のDJならではですね。

「頭で考えて判断したのか、数ある経験値のなかでそれを予見できるのか。DJって他の試合でも危険なポジションになることがない。ヤバイと感じたら、違う動きをする。その引き出しの多さが僕らなんかよりたくさんある。

あの場面は僕が得意なところ、DJの苦手なところをつけたのですが、DJにはその逆のパターンがちゃんとある。DJがロッタンと立ち技の試合をしたら、KO負けします。グラップリングをやれば……、もしかしたら岩本(健汰)選手の方が強いかもしれない。でもMMAなんで。DJはMMAファイターとして強かったです」

──DJと触れ合えたことは和田選手の人生として、素晴らしい経験になったかと思います。しかし、プロフェッショナルMMAファイターとしては勝たないと現状の変化はまるでないことかと感じたのですが。

「う~ん、結果なので。そういう取れば、そういう風に取ることはできます。白か黒なので。ただし、僕にとっては一番好きな競技をやっていて、そこの一番凄いヤツと触れ合えた時点で……まぁ、勝ったようなもんというか。いや勝ったようなもんは、言い過ぎですね。

どの業界にいてもそうだと思うのですが、世界一の人間と真剣に戦うってそうないことです。向こうもこっちも倒そうとする経験ができたことは、それだけで『OKじゃねぇ?』と思っているところは、正直あります。言ってみれば僕は世界一だと思っていない。でもDJは思っていて、周囲もそう思っている選手なので」

──バックを取ることができたことで、見ている我々もわきました。「凄いぞ、和田竜光」と感動を覚えました。それから10日後くらいに堀口恭司選手の取材をしたときに「DJは弱くなっている」と平気で言い切った時に、ふと……これは自分の取材姿勢に対してですが、「やはりMMAは勝たないといけないのか。バックを取って喜んでいてはダメなのか」と感じた次第なんです。

「その記事は僕も読みました。遠まわしに堀口君にディスられていると思いましたけど……僕は堀口君をディスるつもりもなくて、本当に強い選手。多分DJの次に強い選手なんだろうと思っています。堀口君は今なら勝てると思っているはずですが。その堀口君が朝倉(海)選手に負けました。きっと大会を背負って、こういう勝ち方をしないといけないとか……あったと思います。

舐めていたわけじゃないですが、戦いとは違う余計な脳とかあって……。朝倉選手が強いのはもちろんで、アクシデントでもないですが──誰もが、きっと本人も思いもしなかった敗北を喫した。でもDJはそういうことはしない。勝手にそう思っています。それぐらい僕のなかでDJという選手の評価は高いです」

──ファンのため、日本の格闘技のためという発言ができるようになった堀口選手は、本当に人として魅力的でした。戦うサイボーグではない。心を持った人が、色々なものを背負って戦う。だけどDJは大会のために戦うという思考はない?

「ハイ、ないと思います。堀口君の戦うスタイル、生活スタイル、どちらも僕にはできないことで、ファン目線で僕も堀口君がDJともう一度戦うことがあれば『勝ってくれ!!』と思っています。ただし背負ったり、複雑な背景があったからああいう結果になった──本当のところは分からないですが、僕のなかではそう思っています。堀口君は『そんなの関係ない』って言うかもしれないですが(苦笑)」

──言いそうです(笑)。

「勝手にそう思っていたんです。同時にDJはそういうミスはしない。ワンパンを食らって負けにつながるような動きをしない。KO勝ちなんてしなくて良いという精神構造なので」

──その前にDJは体がボロボロなら試合をしない、と。

「ハイ。そう思います。堀口君は日本人のなかでスター過ぎて、戦わないといけない状況になっていた。そういう気持ちがある選手の方が、熱い方が僕も好きです。KOを狙いにいく選手の方が……ホントは。だからコナー・マクレガーが好きだし……。だから、堀口君──『DJは弱くなっている』と言わなくて良くない?というところもありました(苦笑)」

──DJが弱くなったというのは、堀口選手の中でUFCが一番強いという想いがあるのかと……これは私の勝手な想像で、『そんなの関係ない』と彼は言うかもしれないですが(笑)。そしてDJはONEもUFCも関係なく、一番の待遇の下で戦う。

DJ vs Wada「戦いだけじゃない気持ちの変化があって、堀口君はあの結果を招いた。だから、僕はDJの凄さが余計に分かった気がしました」

──そんな和田選手には、もう反則まがいのギリギリのことをしてほしかったというのはあります(笑)。

「テイクダウンされて、立てなくてコントロールされている時点で、DJの上手さに抑えこめられていたので。動いて向き合ったりとか、立ち上がって打撃を打ち合える展開に持ち込むことができなった。まぁ……強かったです。

ただ怖いなということはなかったんです」

<この項、続く>

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