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【RFC41】イ・イェジに逆転勝利、前澤智―01――「1Rは本当にきつかった」

Mesawa with mates【写真】前澤智は日本からの応援に来たジムの仲間たちの存在が支えとなり、一人じゃない心強さがあったと語った(C)KAORI SUGAWARA

12日(土・現地時間)、韓国ウォンジュのウォンジュ総合体育館でRoad FC 41が開催され、日本から初参戦した前澤智は地元の女子高生ファイター=イ・イェジと対戦し、判定2-0で勝利を収めた。

試合3週間前に負傷し、満足に追い込みが出来ないまま、韓国での初戦に臨んだ前沢は初回、イ・イェジの打撃を受け続け劣勢ながらも、2Rに得意とする寝技へと持ち込み、イェジを抑えて判定勝ちをした。

初の韓国での試合を迎えるまでの心境と、彼女のこれからについて、試合後の彼女をキャッチし尋ねた。


──清々しい表情ですね。

「勝利者コールで名前を呼ばれて『日本に帰れる! 』と、本当に安心しました。韓国に来て、試合が始まるまではSNSとかでも『勝ってやりますよ!!!』とか、色々と強がっていたんですけど不安でした。試合前に怪我をして治しながら調整しつつ、練習をしていたんで『治るかなぁ。練習足りているかなあ』という不安もありました」

――接戦で判定にもつれ込みました。

「アウェイで判定になったら厳しいとも聞いていいました。1Rは圧されているとわかっていました。2Rは得意な寝技に持って行って、自分はその場その場で出来る事をやったんですけど。周りから見るのと、自分が一生懸命やるのとは多分見方が違うと思うので、どうなんだろうと最後まで分からなかったです、だから今は本当にホッとしています」

──イ・イェジ選手が少しでも優勢な動きを見せる度に会場から大きな歓声が上がっていました。

「そうですね。イ・イェジ選手の応援団の声も凄く聞こえていて、巻き返したり、自分が良いポジションを取っていて、それを返されたりすると盛り上がっていました。これが地元人気かと思いました。

それによって不安にならないと言ったら嘘になりますけど、試合中に自分のセコンドの声ももちろん聞こえていたし、心が折れる事はなかったです。今日は『強気で行こう。どこかおかしくなってもいいから、最後歩けなくなってもいいから、気持ちだけは負けない』と思ってやり切りました」

──前澤選手の言う通り、1Rはイ・イェジ選手が優勢でした。アウェイの雰囲気の影響はありましたか。

「そうですね。しなしさんと戦った試合映像を見ても、投げたあとにバックを取られるのが怖かったです。打撃の方が穴があるかなと思っていましたが、以前のように大振りでなく今回は真っ直ぐ打ってきました。

私も緊張していたのか、頭を振っているつもりが振れていなかったです。手数が少なくて、何発かもらってしまったし、ちょっとビクビクしてしまいした。余裕がなくてももっと楽しんだり、ガツガツ行けばいいんですけど、MMAの難しさですね。行き過ぎてもダメだし、引くのも大事だと金原代表からもいつも教わっています。

それにしても1Rは引きすぎたと思います。終盤でちょっと組む展開があった時に相手が疲れているのが分かり、少し力が弱いかなと思ったので2R目は寝技の方に頭をシフトした感じです。1R目は本当にきつかったです」
 
──どの辺りが?

「グローブがいつものよりも薄いのか、ガツっと当たったのが結構痛く感じたり、私も狙いすぎて大振りになってしまいました。イ・イェジ選手もそれを読んで届かないような距離に居たし、届かなくて『どこまで近づいて良いんだろう。組んでいいのかな』とか、色々考えながらの1Rでしたね」

──蹴り足をキャッチしようと何度か試みました。

01「カットすれば良いんですけど、ただ単に下手くそすぎて掴んでしまうんですよね。ジムでは代表にバンバン蹴られる『根性練』と言う練習方法があるんです。だからローはちょっと蹴らせておいても良いかなと言う気持ちでいました。

でも、グラップラーの癖ですかね。取りに行ってしまう。キャッチして組みに行きたかったんですけど、イ・イェジ選手のローも結構強くて、テンポが遅れてしまって。2歩目が出なくて当てられて、キャッチし損ねてしまうという悪いスパイラルに陥っていました。本当にダメでしたね。改善すべき点です」

──2Rでは1Rとは構えが変わりました。小見川道大選手に似ているなと感じました。

02「柔道をどういう風に生かすかというのはMMAにおいての課題だと思うんですよ。投げはそれでKO取れるわけじゃないじゃないですか。難しいですよね。例えばロンダ・ラウジーみたいに徹底して柔道とMMAをミックスさせている選手はそうはいないと思うんですよね。

『癖は意識しないと治らない』とよく言われていています。もちろん癖を無くしていくというのが大事なんですけど、代表は悪い所を完璧に封じるのではなくて、柔道を少しでも活かせるようにと指導してくれています。

柔道とMMAの接着剤を多くしていこうと、柔道選手の癖をどうやって打撃とか寝技に繋げていくか、自分がシフトチェンジできるように研究してくれているんです。

そういう時に小見川さんの話にもなります。金原代表は小見川さんとも練習をしているので、アドバイスをもらって来てくれることもあるんです。『小見川さんみたいにやろう』とまで意識していたわけではないですけど、もしかしたら自然とそうなっていたのかもしれないです」

──柔道の特徴が出たことで、ペースを取り戻せたということもあるかもしれないですね。

「そうですね。今までの柔道と筋肉の貯金に助けられたような気がします。今回はケガの影響もあって、先々週の半ばくらいから、本当にギリギリで練習できるようになったんです。スパーリングパートナーもこの人だけと決めて、できる事をやり、少しずつ動きの制限を解除していきました。

フルにやり込めたのは10日弱くらいですかね。それまでも体重を落とすために有酸素運動をしていましたが、練習量が少ないことには焦りを感じていました」

<この項、続く>

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