【Pancrase】シカゴに出稽古へ。バンタム級KOP石渡伸太郎<01>「負けてもベルトが残る防衛戦は……」
【写真】練習後、前髪がかなり垂れたカワイイモードの石渡。盟友・神酒龍一への苦言から、ジョナサン・ブルッキンズへの怒りを捲し立てることなく、噛み砕くように話した (C)MMAPLANET
7月24日に体重超過のジャスティン・ブルッキンズを相手にバンタム級KOP王座の防衛に成功した石渡伸太郎が、9月の第1週から米国イリノイ州シカゴを訪れ、当地のイジー・スタイル・レスリングクラブで3週間の出稽古を行う。
ジャクソン&ウィンクルジョンMMAの名レスリング・コーチであるイジーことイズラエル・マルチネスとは、5年前に出会い、彼のレスリング指導に石渡は心酔した。そのイジーの下を今、訪れる真意とは何か。石渡に尋ねる前に、ブルッキンズ戦をまずは振り返ってもらった。
──ジョナサン・ブルッキンズを判定で下し、バンタム級KOPバンタム級王座を防衛した石渡選手ですが、専門誌等で話を聞く機会がなかったので、改めてあの試合のことから話を聞かせてください。
「Fight&Lifeでは神酒龍一と一緒に試合後に取材をしてもらいましたよ(笑)」
──えぇ、拝読させていただきました。2人の掛け合いが楽しかったのですが、ブルッキンズ戦に関してはあまり触れられていなかったので。
「アレはですね、ホントに途中で頭に来ちゃって。神酒に対して。本気でムカついてしまって、取材どころでなくなっちゃって。でもあんな風にちゃんとまとめて貰ったんです」
──本当ですか(笑)。なぜ、取材中にも関わらず盟友・神酒選手に腹を立ててしまったのですか。
「アイツは自分で口にしたことをなかったようにする性格なんですよ。今から言うこと書いてくれますか?」
──もちろん、メディアの倫理に外れていないことなら、何でも書かせていただきます(笑)。
「あのう……3カ月ほど前なんですけど、アイツが『電子レンジが欲しい』って言ってきて。使っていないのをプレゼントしたんですよ。値段もそこそこする、結構良いヤツを」
──ハイ。
「そうしたら、つい最近ですけど『あのな伸太、電子レンジっていうのは使わない方が良い』って、何も悪びれた様子もなく言ってくるんです。『電子レンジは捨てた方が良いぞ。俺は使わねぇ』って、堂々と言うんです。これがですね、『お前に貰っておいて悪いんだけど、色々考えてやっぱり電子レンジは使わないことにする』って言ってくれば別に構わないんです」
──フフフ。
「ホントに。それを『あのな、アレは使わない方が良いぞっ!!』みたいに、スパッと言い切って。この話があの男の性格を象徴しているエピソードなんですけど、Fight &Lifeの取材の時も……。神酒さんは修斗のベルトを失ったあとで目標を失っていて、もう辞めるって感じだったんです。
その時に2人で話し合って『一緒にパンクラスでやろうや』って僕が話をしたっていうことを取材でしゃべったら、『俺、辞めるなんて言ってねぇじゃなぇかよ』なんて言い始めて……。『全部、お前の決めたことか。格好良いな、おい』って。もうカーッと頭に血が昇ってしまい、僕はもうマジで怒っているのに、向こうはヘラヘラしていて……」
──それは取材をされた高崎(※計三)さんも困ってしまったでしょうね。
「いえ、面白いって喜んでいました(笑)」
──ハハハ。最初から最後まであの調子だったのは、石渡選手が腹を立ててしまったからなんですね。
「途中からインタビューにならなくなりました」
──そういうこともあったのですが、改めてブルッキンズ戦について。負けられないロードを戦い続けるなか、リベンジ戦でもあったブルッキンズとのタイトル戦だったのですが……。
「そこで凄い肩透かしを喰らってしまいました」
──ハイ。本来なら最高に燃えて戦えた状況下で、ブルッキンズが計量失敗。石渡選手が勝った時だけ防衛成功という変則的なタイトル防衛戦になってしまいました。
「MMAPLANETでは減量失敗でも、ブルッキンズ強し──って書いてありませんでしたか? ソレ違う気しないですか?」
──減量を失敗してシュンとなると思いきや、やる気満々でもなくダラダラと5R戦い切ったブルッキンズを仕留め切れなかったなぁと思ったのですが。
「いや、減量に失敗したから……、減量を途中でやめたから強かったんですよ。再計量で同じ体重だったから、もう落とす気はないんだと思いました。端的にいうと、ケガをしないよう守るファイトをされてしまったんです」
──減量失敗でも強し……ではなく、減量失敗で強固な守りに……と書くべきだったのですね。これは失礼しました。
「そうファイトしてくれなかったんですよ。デカい相手に守られてしまうと、厳しいですね。しかもダーティでしたからね」
──それは何か、故意の反則のようなモノがあったということですか。
「指で狙ってきていましたから」
──本当ですか!!
「ハイ。指をコチラに向けて戦うのは、ルールで禁じてほしいです」
──ユニファイドだと、マットに水平にして指を伸ばしていけないことになっていますよね。
「水平にしているだけでなく、当たる瞬間にインパクトを取っていましたからね」
──えぇ、そこまで……。
──あの調印式のメローかる善人的な雰囲気はどこにいったのでしょうね。
「良い人モードは嘘ですね。本人も『ファイトになったら切り替わる』と言っていましたが、ああいう風に変わるヤツなんですね。まぁ、良いですけど……反則される方が悪いんです」
──そんなことはないと思います。それは、ない。ただし、カッカしてしまっていた感は否めないです。終盤のパンチの振りの大きさ。決して、あのような戦い方を石渡選手が望んでいたようには思えなかったです。
「そうなってしまいました……(苦笑)。前半は思うように動けていて、だんだん深く当たってきたという感触もあったんです。その辺からブルッキンズが凄く守り始めました。それで本気で当てに行ったパンチも、50センチぐらい離れて空振りしていて……。『これは当たんねぇ』って思いました。
あの背の高い選手に、後方に頭を引かれると想像以上の距離ができてしまう。距離を合わせることが全然できなくなって、そのまま終わってしまいました。
勝つことは勝ったんですけど、あの試合を見てUFCも石渡が欲しいとはならないですよね……」
──体重も落とせない相手と戦うことで、試合前からどこか集中力が削げたということはなかったですか。
「もし……ですよ、パーンと負けてベルトを取られるなら、もうしょうがないです。構いません。でも、そんな風になってもベルトは手元に残る防衛戦っていうのは……。
ブルッキンズが体重を落とさなかったから、会場でもヒール扱いになっていたし。そんな状況で、もし負けてしまったらという想いは凄くありました。負けたらベルトなんて返上したかったし、でもそれはきっと許してもらえない。そうなると、ベルトを取られるより辛いですよね。
なら、勝つしかない。僕もブルッキンズとは意味合いは違うかもしれないですが、守る気持ちは出てしまっていました。で、互いに攻め手を欠く試合になってしまったのかと思います」
──変則的なタイトル戦よりも、ノンタイトル戦の方が良かったですか。
「でも、ボーナスが違ってきますからね(笑)。負けてベルトが残るっていう状況は辛かったです。ホント、試合をしたくなくなったんですが、興行として穴は空けられないし。もう、ブルッキンズとは関わりたくないです」