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【Japanese National BJJ】フェザー級出場の加古拓渡、ワールド2日目へ向け「本命は杉江さんですよ」

Takuto Kako【写真】加古にとって目標はあくまでも6月の世界大会。ジャパニーズ・ナショナルは実戦トレーニングか(C)MMAPLANET

いよいよ明日16日(土)と17日(日)に東京都大田区の大田区総合体育館にて開催されるジャパニーズ・ナショナル柔術選手権2016。群雄割拠のアダルト黒帯フェザー級には、ライトヘビー級で世界に挑んできた加古拓渡が出場する。すでに今年のワールド出場のためのポイントは獲得している加古、モダン柔術の国内第一人者は、どのような思いで記念すべき第1回大会を迎えるのか。
Text by Tsubasa Ito

頭脳的なファイトスタイルの印象そのままに、聡明さを感じさせる言葉をところどころに散りばめながら、冷静に、淡々と言葉を紡いでいく。昨年の全日本選手権ライトフェザー級王者にして、ポイント制になっても引き続き世界柔術への出場を果たし、日本柔術界のトップを走り続けている加古。だが、その素顔はどこまでも謙虚で、優勝候補として臨む新たな国際大会にも気負う様子は一切感じられない。

「どの大会でもみんな強いので、他の大会と特に気持ちは変わらないですね。現時点での自分の力を発揮できるようにというのが一つと、もちろん優勝したいと常に思っているので、優勝目指してがんばりたいと思います。全日本チャンピオンと言っても今回は階級も違いますから、その面でのプレッシャーはないですし、意識もしていません。それに、優勝候補は僕ではなく杉江(アマゾン大輔)さんですよ」

一世代上、かつては同門で先輩だった杉江の名を挙げつつ、加古は苦笑いを浮かべた。他にも色帯時代から何度も激闘を繰り広げ、昨年11月の西日本選手権で戦っている塚田市太郎などフェザー級には強豪が揃っている。そんな加古といえば代名詞のベリンボロをはじめ、最先端技術を取り入れたモダン柔術の国内第一人者として知られているが、本人はその点についても否定する。

「たくさんある技術の中のひとつとして取り入れたものが、いわゆるモダン柔術と言われているだけです。まわりの方から第一人者と言っていただけることが多いんですが、使い始めた時にたまたまメディア等で取り上げていただいたので、タイミング的に何となく目立っているだけです。日本国内の他の選手と比べて、その分野で突出しているわけではないと思いますし、僕より上手な人もいますから。でも、どんなスポーツでも技術体系はどんどんアップデートされていくものだと思いますので、新しい流れが出てきたのであれば、取り入れることはもちろん必要だと思います」

第一人者であるかどうかはともかく、つねに探究心と向上心を持ち、変化を恐れずに新たな技術を取り入れるセンスに長けていることだけは確かだろう。「世界的な流れにはなるべく目を向けたいと思っています。できれば自分もそこに加わっていたい」。常日頃から心の中で世界を意識していることも、そうした姿勢につながっているのかもしれない。世界大会は色帯だった2011年を含め、2015年まで5年連続で出場しているが、そのつど厚い壁に阻まれ、黒帯では2日目のマットには立てずにいる。

「正直、世界に近づいている実感はないですね。技術、フィジカル、体力。トータル的な面で足りていないと思います。僕は何回も世界選手権に出させてもらっているので、自分の立ち位置がどのあたりなのかは何となくわかっています。だから『世界選手権で優勝したいです』とか、そんな大それたことは言えないんですよ」

世界を知る男の言葉は重い。18歳から柔術を始め、「新世代未来戦士」と言われた男も今年、30歳を迎える。体力と技術のバランスが取れた脂ののったピークと取られることができる一方で、20代前半の頃から比較すると心境の変化を感じているという。

「年齢的な体力面での変化は感じませんが、体重が落ちにくくなってきた気がしないでもないですね。危機感まではいかないですけど、40歳、50歳になっても今のままできるとは思っていないので、チャンスはあと何年かしかないのかなと思います。漠然としたものですけど、そういうことは22、23歳くらいの頃は考えもしなかったので。ポイントが掛かった国際大会で必ず優勝できるという自信はないので、世界選手権に出られるのはもしかしたら、今年が最後かもしれないという気持ちはあります」

時間が無限ではないことを実感するからこそ、やはりムンジアルへの思いは強くなる。冷静さの中に見せたたしかな情熱が、そこにはあった。

「世界選手権の2日目はちょっと様子が変わって、アダルト黒帯のベスト8以上だけの大会になるので、やっぱりベスト8に残ることが目標ですね。もちろん、できれば3位、2位を目指していますし、優勝できればとんでもないことですけど。現実化するかもしれない目標としていつも思っているのは、2日目のマットに立つことです」

スポーツクラブでの仕事や所属するGSBでの指導の合間を縫って、加古はほぼ毎日、練習を行なっているという。練習は深夜まで及ぶことも頻繁にあるが「時間は2時間くらいですし、実際に自分がアクティブに動いている時間は1時間くらいだと思うので、そんなにハードだという意識はないですね」とあっけらかんと語る。努力を努力と見せない、彼なりの美学か。まずは第1回ジャパニーズ・ナショナル。そして、その先にある世界選手権。ひとりの柔術家の生きざまをかけた戦いから、目が離せない。

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