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【Special】魂を受け継ぐ者──高阪剛&神部建斗・対談<02>「変る時が来たのか、と」(高阪)

Kento Kanbe【写真】成田で気付いて試す、それを本部のプロ練習でぶつける。自分を理解できるという高阪氏の話に通じる、神部の事故情報処理能力の高さがこの成長を支えているのだろう (C)MMAPLANET

12月13日にはキング・オブ・パンクラス・ライトフライ級王座決定戦に挑むことが決まった神部建斗。中学卒業と同時に高阪剛氏率いるアライアンスに入門した彼は、今年に入って突然変異のように自分の進化を感じた。

そんな神部の素養を見抜いていた師との対談の第2弾をお送りします。
<高阪剛&神部建斗対談Part.01はコチラから>

──神部選手も練習の取り組み方で大丈夫だと思えた点とは、どのようなトレーングだったのですか。

高阪 いわゆるマスができない人間って、自分の世界に入ってしまって視野が狭くなるんです。建斗はそこで力を抜いて、相手の動きを見て、攻撃を受けながら駆け引きを楽しんでいました。そうやって自分の技量を見極めることができていたので。軽く練習する、動きながら練習できる。中学3年生の時点でそれができる。これは本当に好きなんだと思えましたね。

──駆け引きを楽しむことを神部選手は意識してやっていたのですか。

神部 もう動画とか、今はいくらでも視ることができるので。動画を見て、練習場に持って行って試す。動いてみて、分からないところが出てくると先生にどうすれば良いのかを尋ねる。先生のアドバイスを聞いて自分が使えるモノ、使えないモノを分別していくんです。

遊び感覚でトリッキーな動きも。それは純粋に楽しかったです。格闘技の動画を見るのも大好きだし、気が付けば1時間、2時間が過ぎています」

──成田は自分も訪れて、米国の郊外都市のような雰囲気でモールで購入したものを自宅に持ち返って楽しむ。そんな夜の時間帯があるような街に感じました。

神部 だからずっと格闘技の動画を見ていました。どれだけ格闘技が好きでも、地元で友達がたくさんいて、遊ぶところも知っていたら、そこに流されていたと思います。そういう部分でも、先生に成田でやるように最初に言われて本当に良かったです。純粋に格闘技に没頭できました。

──入門を直訴してきてから3年半、この間の神部選手の成長を高阪さんはどのように捉えていますか。

高阪 思っていた通りの成長度合いだったのがすが、ここ1年の加速は予測できなかったです。単純にストレングスが強くなってきて、動きでカバーしていたところを圧力でモノにする場面が出てきたんです。テイクダウンでも打撃にしても。これは本当に体の成長とともに伸びた部分でしょうね。

現状をどれだけ理解できるのか、そこが格闘技をやるうえで本当に大切だと思います。背が高い、リーチが必要な動きを建斗がやろうとしても無理です。自分の体の状態、できる動き、技をどれだけ認識できているのか。ここは試合になると、かなり浮彫になります。試合中に『アレッ?おかしい』ということがない方が良い。建斗はその部分でも、自分が理解できているんですよね」

──8月の曹竜也戦は自分の思ったように動けたのか、アグレッシブにどんどん技を仕掛けることができ、それが若さのように感じたのですが、神部選手の良さは決してそうでない部分にあるのですね。

高阪 今、そこは色々とやっている部分はあります。体力が上がったので、そんな風に動くこともできますし。そこを理解しているから、あの試合になった。ただ、加速力がつき、スピードが上がると、どうしてもケガも増えます。それはもう格闘家ある限り、背中合わせです。

建斗の場合はその前の状態から、ここに来る段階で、ほとんど繋ぎ目がなかったんです。トントンとここに来ました。

──うんうんと神部選手も頷いていましたが、それは自覚できていましたか。

神部 ハイ、急に『あれっ』と思うことがありました。2月の下川(雄生)戦前からですかね。『なんか、俺変だな。自分じゃないみたいだ』って。曹さんとの試合のように、僕は勢いでバンバンやるような感じじゃなかったんです。スパーでもパートナーにやらせて返すという風で。それが自分の方からやりたいようにできるという感覚になって。

最初は練習パートナーの調子が悪いのかって思うほどだったのですが、そんな動きが続くと自分が変わってきたことが分かりました。これまでも重いものをガンガン持ち上げるということではなく、自重を使ったトレーニングは先生の指導の下でやってきたので、そこで培ってきたものがでるようになったのかと思います。

高阪 建斗にその感覚的な変化を伝えてもらって、変るときが来たのかもって話したんですよ。

神部 それで戦い方を変えてみようかと。勢いでいけるなら、自分のやりたいように戦えた方が楽ですし。でも、そういかない場合の戦い方はこれまでやってきたので。勢いでいけなかったところが、いけるようになればできることが増えてました。

──一見して、体が大きくなっていることも分かります。それでもまだ成田支部であり、本部常駐とならないのは?

高阪 タイミングですね。建斗自身も、向こうでバイトもあるし、人のつながりも形成し始めたというのもあるので。高校を卒業して、彼の環境も変化しました。格闘技とは別の部分も大事にしたいので。ただし、試合が近づいて圧力を掛け合う練習が必要になってくると、東京での練習も増やしていこうかと話していたところなんです。

神部 成田は成田でできる練習があり、東京では東京での練習があります。削られるのが東京で、試して気付きがあるのが成田です。成田で気付いたモノ、試したものを東京でぶつける。通用すれば、試合でも絶対に使えます。本部の人たちの強さはけた違いなので(笑)。プロ練習だから持っているオーラや雰囲気も違いますし。成田は一般の練習なので和気あいあいと楽しくて、こっちに来るのは緊張します。ピリピリしていて、ヘラヘラしている余裕はないです。

<この項続く>

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