【Special】第1回、MMA版あいつ今何してる? 神部建斗─02─「1月に4年振りにMMAのスパーリングを」
【写真】神部が歩んできた4年間、苦しみから這い出した後の2年半を今回は振り返ってもらった (C)MMAPLANET
MARTIAL WORLD Presents新訪問シリーズ=「MMA版あいつ今何してる?」──第1回は第2代ライトフライ級キング・オブ・パンクラシスト=神部建斗を訪ねた。
ケージを離れてから4年3カ月、23歳になった神部と再会すると、彼は腰の状態の悪化から復調をみないまま「格闘技は無理でも普通に働いて、自分の人生を切り替える時が来た」ことを打ち明けてくれた。
格闘技を諦めた神部に、その後歩んだ道程とこのインタビューを了承した理由を訊いた。
<神部建斗インタビューPart.01はコチラから>
──ただ格闘技をするということでなく、高い目標があり、また自分の思う動きができないとなると神部選手にとって続けるに値しないということだったのでしょうか。
「それはあります。やっぱり自分のイメージと、動きに違いがあると……。だから、もうそういう運命、星の下に生まれたんだと思い完全に格闘技から離れました。
後輩に紹介してもらったところでバイトを始めて、回りは普通の大学生で。彼らと楽しく飲みに行ったり、なんやかんややっていたのですが……。やっぱり格闘技がやりたくなりました(笑)」
──やはり……と言うか、案の定──ですね(笑)。
「ただ自分がまた選手としてやれる見込みもなかったし、格闘技に関わっていたい。そういう気持ちだけでした」
──そう思うようになったのは、格闘技から離れてどれくらい経っていたのでしょうか。
「3カ月後ぐらいですかね」
──ハハハ。僅か3カ月。
「そこで成田から東京に出てきて、格闘技関係の仕事をやろうと思っていたら、なんやかんやでMe, WeのMMAのコーチをさせてもらうことになりました。そしたら、やっぱり超楽しかったッス(笑)」
──その期間中ですね、格闘技会場で再び神部選手の姿を見られるようになったのは。
「本当に山崎(剛)さんには感謝しています。ホント凄く良い人で。所属していたわけじゃないですけど、僕のことを色々と面倒みてくれました。僕も指導がもともと好きだったし、皆に指導をするにはベストを尽くしたい。そのためには封印していたUFCとかも、また見るようになったんです。
そうしたら、やっぱり面白くて。グレゴール・グレスピーとかレスリングとグラップリングだけで試合をしていて。こないだ体重オーバーでミソをつけましたけど、デイヴィソン・フィゲイレドとか。いやぁ、やっぱり面白くて良い選手がいて……。それにカン・ギョンホとかもまだ頑張っていて、好きな選手ですね。結局、そういうところが好きで。またUFCにハマってしまって。
僕はスーパーマンでなく、そういうMMAを理解している選手が好きで。彼らの試合からは死ぬほど努力してきたということが、伝わってくるんです。それに以前から言っていたように、今もディエゴ・ブランダォンは好きです。あの雑な感じも(笑)」
──アハハハ。
「もうACBとかで戦っているのを見ると、あんまり練習していないだろうって。でも好きなんです。大して練習していなくても、ボチボチ戦えるところも」
──いやぁ神部選手のMMA観が出ていますね。しっかりと必死にやる選手が好きな一方で、そういう個体である程度強い選手に憧れを感じえない。ただ、そうやって封印していたUFCの試合やACBまで試合をチェックしていると……。
「そうなんです。やりたくなっちゃいました」
──ですよね(笑)。
「好きな選手の試合を見て、自分が練習してきたことをクラスで指導していると、やりたい欲が出てきました。指導するようになって1年後ぐらいですかね、自分も練習に参加するようにしたんです」
──おお、ところで腰の方は?
「万全ではないです。ボチボチ、痛みも出ます。でも再開して3回目の練習で、腰が爆発するんじゃなくて……ヒザの前十字靭帯をやっちゃいました」
──あぁ……。
「僕のケガって全部、自爆なんです。ガッと動いた時にケガをする。あの時もテイクダウン狙いでリフトをしたら、切れてしまいました。その前に払い腰で投げた時に、いったなっていう感覚はあったんです。でもグラップリングだったんですけど、スパーリングをしていると『もうケガしても構わない』って感じになってしまって……」
──う~む、改善すべき点ですね……。
「その通りです。ただヒザの時は、腰ほど落ち込まなかったです。もう落ち込むだけ落ち込んだので、そこまで凹まなかった」
──現状ヒザの具合は?
「一昨年の夏に切って、迷っていたなんですけど……去年の2月に手術をしました。治して練習したかったので。で、リハビリ期間中にウェイトをガンガンやっていたら、靭帯と一緒に手術した半月板がまた潰れちゃって(苦笑)」
──……。
「それが去年の年末ですかね。今はもう練習を再開もしていて、1月に4年振りにMMAのスパーリングをしました」
──それは山崎さんのところで、ですか?
「ハイ。今は所属もMe,Weです。まだ試合に出ていないし、決まってもいない。だから今回の取材も本来は受けるべきじゃないと思っていました。格闘家は試合をしてこそ、価値があるので。
でも、この間もずっとサポートしてくれていたマーシャルワールドさんからの依頼だったので受けさせてもらうことにしたんです」
──実は「もう格闘技は辞めて、トレーナーで第2の人生を送っています」という内容で取材を了承してくれたのかと思っていた次第です。腰のみならず、ヒザの負傷も経て練習への取り組み方に変化はありますか。
「う~ん、気持ちのコントロールはするようになりました。練習量もそうですね。実際、12月に半月板をやってからはウェイトの練習も抑えるようにしていましたし。それからも痛みを感じた箇所があれば、量も強度も抑えるようになりました。そうですね、休むことを覚えましたね」
──なるほどぉ!! ようやく、ですね(笑)。
「ただ自分をコントロールするとか以前に、4年振りにMMAのスパーリングをすると……思ったよりもできなかったということに衝撃を受けました。以前はフィジカルもしっかりとやっていて力負けもなかったです。今もグラップリング、キックボクシング、レスリングの練習では同じようにやれています。
逆にこれだけやっていなかったのに、思ったより全然動けているなっていうぐらいだったんです。でもMMAになるとできない。一つに合わさることで、MMAは全く違う競技なんだと思い知らされています。
だから今の僕はMMAが強くなるには、個々の練習よりもMMAの練習が必要なんだって思います。ある程度のレベルの選手はそうではなくて、自分に合った練習をすれば良いと思います。でも、今の僕はMMAの練習を始めたばかりなのと変わりないです。MMAをやりこまないといけないと感じています」
<この項、続く>