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【Special】月刊、青木真也のこの一番:12月─その参─ラーキン✖K太郎「青木アワード、役目終えた」

Bellator 237【写真】K太郎の頑張りが、ラーキンの強さと凄みを引き出した(C)Zuffa LLC/Getty Images

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ12月の一番、第3弾は29日に開催されたBellator237からロレンツ・ラーキン✖中村K太郎の一戦を語らおう。


──12月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるのでしょうか。

「ロレンツ・ラーキン✖中村K太郎ですね」

──おお、Bellator日本大会からマイケル・ペイジでも、マイケル・チャンドラーでも、ゴイチ・ヤマウチでもなくラーキンなのですね。

「ラーキンの貰わない能力が半端なかったです。当てるのも上手い、その裏にはK太郎選手のパンチを食らわないというのがあります。サウスポーとして、基本形の戦いをしていました。

ただK太郎選手はめちゃくちゃ頑張っていたんです。あの相手にあれだけ出て行って戦っていた。でも、ラーキンは貰わず当てる」

──確かに中村選手はUFCで、ここで手を出して欲しいということもあったのが、そういうことをまるで感じさせない試合でした。

「そこを払拭していましたね。ただし、出た分だけ右ストレートを被弾してしまっていた。そしてラーキンはUFCでは真のトップでないし、ベラトールでもワールドGPでは補欠でした。それであの距離感、あの打撃ができる。一番大事なこと、被弾しないことができている。

体重を落とせなかったので、体調が悪くてポイントアウトしたような見方もできますが、もともと当て逃げの選手だと思います」

──そこが一番厄介な部分かと。

「そうなんですよねぇ。もっと踏み込んでいけばK太郎選手もやりようがあったけど」

──それがあれば組んで、寝技もあり得るでしょうが、それがないから組んでも疲れ、倒したとしても即スクランブルで自分が疲弊する。

「そういうことですよね。やることがたくさんあるMMAを逆手に取ったMMAですね。K太郎選手は打撃も上手いから、その打撃で戦ったということになるのか……。UFCでもなく、ベラトールでもスバ抜けた存在でもない。でも、K太郎選手が打撃でまるで敵わない。もう、そういうことなんだと。

あの大会のなかでは、数少ない競り合いが見られる試合だったけど、ラーキンは打撃を貰わない巧さを見せて完勝したなっていう感じですね」

──競り合いは確かに余りない大会でしたが、自分はそこがベラトールっぽいと思いました。ベラトールって、非常にコンパクトでまとまっているので。

「あぁ、そういう見方も成り立つんですね。たしかにビッグショーを連発っていうプロモーションじゃないですね。だから……なんていうのか北米MMAっていう言い方があっても、それはあくまでもUFCなんですよ。

ベラトールが来るからといって、北米MMAの頂点でもない。それでもマイケル・ペイジとか投入して、特別感はだしてきたんでしょうけど。ただし、見事なほどにRIZINルールの試合が始まるとベラトール色はなくなりましたね」

──あれは面白かったです。ONEが来れば1から10までONEで。UFCが来れば1から10までUFCになる。でも、ベラトールはRIZINルールが始まるとオフィシャルカメラマンから、米国からやってきた記者まで会場を後にしてしまって。凄いなって思いました。

「コーナーについていても、違和感なく普通に日本の大会でした。ベラトール感はなかったです。そして会場にいるお客さんはRIZINルールの方が盛り上がっていましたからね。そういう意味では、お互いにとって良いイベントだったということになりますよね」

──正午でメインカード始まりというスケジューリングも日本のファンに負荷を与えていない。スコット・コーカーなのか、ヴァイアコムなのか……実は頭の切れる人がいるのではないかと感じてしまいます。その一方で、ここでラーキン✖中村K太郎選手ということで、青木アワードは当確なしというわけですね。

「えぇ……。その青木アワードですが、これまでのように毎月必ず誰かを選ぶというのは、もう止めにしようと思います」

──えっ? というのは??

「単純に選手が少ない。そして選考に困るような状態が少なからずありました。毎月だから無理くり選ぶような感じになっていましたよね。そうなると、ここで選ぶ他の2試合と基準が違ってくる。これからはそうでなくて、他の2試合と同じぐらい良かったと思う試合ができた29歳以下の選手だけ、青木アワードに選ばせてもらおうと思います」

──なるほどぉ。

「もう一つの役目を終えたと思っています。2、3年前と状況は変わりました。若い選手にも露出できる場所があります。なら、もう29歳以下の日本人選手とかって枠は取り払って、触りたい試合を純粋に3試合選んでいく。そして、他の2試合に肩を並べる戦いをした……ここで本当に取り上げるべきだと思った若い選手は選ばせてもらいます」

──言い方を変えると、若い選手を巡る状況は2、3年前より良くなったということですね。

「そういうことです。凄く良くなったと思います。だから外国人でも、30歳以上の日本人選手でも良いと思った選手をチョイスしていきたいということです」

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