【Special】月刊、青木真也のこの一番:11月─その参─山本聖悟✖パク・ソクハン「面白い起死回生の一手」
【写真】山本のトランクスには日の丸と太極旗が見られる(C)ROAD FC
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ11月の一番、第3弾は9日に開催されたRoad FC56から山本聖悟✖パク・ソクハンの一戦を語らおう。
──11月の青木真也が選ぶ、この一番。3試合目はどの試合になるのでしょうか。
「山本聖悟選手がロードFCで戦った試合ですね。インスタとかで韓国で練習しているらしいというのは知っていたのですが、ソウルでなくてプサンなんだろうなって思っていて。でも、韓国姓を持つとかそこまでは全然知らなかったんです。こういうキャリアの積み方をする人がいるんだなって驚きましたね」
──今、ロードFCは英語のプレスリリースがない状況にあり、自分は英語で対戦カードを送ってもらっています。そこにキム・ソンオ✖パク・ソクハンというカードがあったのですが、映像をチェックするまで山本選手だと気づいていなかったです……恥ずかしい限りですが。
「名前を変えたということですかね」
──う~ん、そこは本人に尋ねてみないと分からないところですね。例えばRYO選手がロードで試合をしたときも、団体発表は韓国名でした。
「そうなると僕らはどちらの名前で呼べば良いのですかね」
──私の場合は日本で試合をするときに使用されていた名前で書き記すようにいつもしています。国籍に問わず、内藤のび太と書くように。ただJZ・カバウカンチをカルバンにはしなかったです。
「アハハハ、そこ? ならここでは山本選手で行きましょう。もうそこからして謎で、面白いですよね」
──私たちは山本選手のルーツを知らずに話をしているのですが、そのような選択ができるということは……。
「ハイ、武器になるってことですよね。五輪の時に国籍を選ぶような感じなのですかね。もちろん、それができる分だけ苦労もあったでしょうし、この選択ができることを得したとは言えないですけど」
──その通りですね。
「だから山本選手に関しては、この選択ですよね。着目したのは。試合に関しては、まあ相変わらずイケイケで。米国に住むっていう話はあるけど、それが近いアジアでやることが興味深いわけで」
──懸かるお金の額を考慮すると、誰もが米国に行けるわけではないですしね。
「そうですよね。韓国とかフィリピンだと滞在費が格段に安い。タイガームエタイとか。そういう手法が出てきて、山本選手がしたことは試合まで出たということ。ここは実は最先端かもしれないなと思ったんです。きっと日本では上がり目がない。そこで起死回生の一手を打ったのは、有りだなと思います。面白いですよね」
──興味深い選択から、どう力をつけていくのかも楽しみですね。
「組み技ですね。祖根選手の弟子でしたよね?」
──組みに関してはグラチャンのフライ級王座に挑み、松場貴志選手に抑え込み続けられました。
「あぁ、そのレベルなんだ。でも、行動力があるみたいだし……なんとかしたいというのが、ここの一手ですからね。またロードも以前ほど勢いがなくなったじゃないですか」
──注目度は下がっている点は否めないですが、それでも強いなと思う選手はままいるかと思います。
「キム・ミンウとかですよね。ただ、以前の日本を食いだした時の勢いはなくなってきている。イ・ユンジュン、キム・スーチョル、チェ・ムギョム辺りが引退して、これまでロードが吸い上げていたであろう選手もONEに流れたり」
──パク・デソンなど、そうですね。
「ロードもこれから色々と形が変わっていくでしょうし、ジムやチームも韓国は色々と変化が見られますよね。これからのパワーバランスも違ってくるでしょうね。
やはり僕らからすると韓国社会には独特の上下関係があって、反目しあった時の大変さは日本の比ではないように感じます。ソン・ガヨンとロードの関係とか見ていると、本当にもうそのまんまだし。そういう怖い部分があるなか、変わりつつある韓国で山本選手がどんな風にやっていくのか。そこを見ていきたいですね」
──では2019年11月の青木アワードは山本聖悟選手に。今回は、他に候補はいませんでしたか。
「上久保選手に関しては、もうAbemaで触らしてもらったこともありますが、他から注目を浴びているし。ある程度の力があれば、そうやって露出が上がる場にいるので。それでも、もっと触りたくなるぐらい突き抜けてほしいですね。
あとは瀧澤謙太選手が石井逸人選手に勝ったのですが……僕はう~ん、ちょっと今後どうしたいのか見えない。強さでいえば山本選手より瀧澤選手です。でも、僕からすると山本選手の行動力の方が今回は興味があったということですね」