【ADCC2019】99 キロ超級─01─カイナン・デュアルチ、ブシェシャを下し決勝進出!!!!
【写真】昨年の茶帯世界王者がムンジアル優勝の勢いを駆ってブシェシャ越えを果たしファイナルは (C)SATOSHI NARITA
9月28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われた。
2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰となるこの大会のプレビュー20回目は最重量99キロ超級のAブロックの戦いをレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi
黒帯1年生ながら今年の世界柔術ヘビー級を制し、グラップリングでも大物が集結したKasai Pro大会を制した大注目の21歳カイナン・デュアルチは1回戦、モルドヴァのエルダー・ラフィガエフ──「ジャングルBJJ」なる所属道場名に加え、今年のアブダビ・ワールドプロ柔術において「Yakuza BJJ for life」と書かれたバッジをギに装着していたことでも衝撃を与えた選手だ──と対戦した。
ラフィガエスのオープンガードをレッグドラッグで潰してバックを奪取したデュアルチは、開始1分半でチョークを決めて快勝。準々決勝にて、15年に88キロ以下級、17年に99キロ以下級を制して今回三階級制覇の偉業を狙うユーリ・シモエスとの注目の一戦を迎えたのだった。
<99キロ超級準々決勝/10分1R+ExR5分>
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
Def. by 本戦 3-0
ユーリ・シモエス(ブラジル)
試合はスタンドレスリングの攻防から開始するが、2分過ぎにデュアルチがシッティングを選択。シモエスは低い重心でプレッシャーをかけてのパスを試みるが、デュアルチは強烈な腕のフレームを作ってその侵攻を許さない。
やがて5分の加点時間帯が近づくと、シモエスはヒザ十字を狙って自ら下に。これをデュアルチに防がれて下になった状態で加点時間帯を迎えたユーリだが、その後場外ブレイクからの再開の機にすかさず立ち上がってみせた。
試合は再びスタンドレスリングの攻防に。シモエスは四つから両手でグリップを組んでテイクダウンを狙って押していく。するとデュアルチは場外側で、左手でシモエスの右ももの裏側を抑えながら右すくい投げ。綺麗に舞ったシモエスの体はマットの外に落下。そのままデュアルチは場外でスクランブルを試みるシモエスのバックに付き、さらにフックを入れてみせた。
場外ブレイクがかかったあと、テイクダウンを受けたシモエスが右ひざを負傷したようで、試合はしばし中断される。治療終了後、残り1分30秒でデュアルチがバックを取って3点獲得した体勢から再開に。そのまま試合終了までバックをキープしたデュアルチが勝利した。
混乱状況のなかでデュアルチが取ったポジションが認められたことに対して、場内からはブーイングが起こる。本戦終了後に立ち上がったシモエスは、右足をひきずりまともに歩けない状態に。これ以上の試合続行は困難、また続行しても不利は必至と思われる状況だった。レスリングの強さを武器にADCC2階級制覇を成し遂げたシモエスを、スタンドで見事に切り返してみせたデュアルチの快勝といえるだろう。
こうして難敵シモエスを倒したデュアルチは、さらなる超大物──地上最強の競技柔術家の座を何年も守っているブシェシャことマーカス・アルメイダとの一騎打ちとなる準決勝の舞台に駒を進めた。
<99キロ超準決勝/10分1R+ExR5分>
カイナン・デュアルチ(ブラジル)
Def. by 本戦 0-0 延長 3-0
マーカス・アルメイダ(ブラジル)
長年世界柔術最重量級でトップを守り続けているブシェシャと、今年はその2階級下のヘビー級で初の世界王者に輝いたデュアルチ。向き合うと身長、体重ともに2回りほどの体格差がある。
序盤はスタンドでいなしあいを展開した両者。やがてデュアルチが座って上下の攻防に。低く体重をかけてゆくブシェシャと、ニーシールドでその侵攻を防ぐデュアルチによる静かな攻防が続いていった。
加点時間帯に入った後、デュアルチは内回りでブシェシャのバランスを崩すと、その右足に絡んで50/50の体勢に。しかし立ち上がって地面に根を張るようなベースを作ったブシェシャは、やがて絡まれた右足を引き抜いた。
本戦残り2分半。右足のニーシールドで下から守っていたデュアルチは、突然その右足の裏でブシェシャの胸を(ほとんど横蹴りのような形で)プッシュする。バランスを崩したブシェシャの右足を掴んで立ったデュアルチは、背を向けて逃げようとするブシェシャに猛然と襲いかかり背中につくと、そのまま振り回して場外側でテイクダウンに成功する。
対してブシェシャも、その超巨体からは考えられない俊敏な動作ですぐにスクランブルし、立ち上がってみせた。
再開後デュアルチは下の体勢に戻ると、再び右のニーシールドを使ってブシェシャに攻撃を許さず。両者無得点のまま本戦が終了した。
スタンドから開始された延長戦。お互い頭をいなし合う展開が続くなか、それまでゆっくり動いていたブシェシャが突然猛スピードで動いてのダブルレッグへ。デュアルチが重い腰で受け止めると、ブシェシャはシングルに移行する。デュアルチはその取られた足を振りほどく。
ブシェシャはそれでも動きを止めず前に出てデュアルチの胴に組みつき豪快に振り回すが、デュアルチはここも俊敏な足さばきで反応してバランスをキープしてみせた。これまで数多くの超重量級の強豪たちをなぎ倒してきたブシェシャの雪崩の如きテイクダウンを、はるかに小さいデュアルチは見事に防御したのだった。
スタンドで試合が再開された後、両者は頭に手をかけていなし合う。が、デュアルチが前に出て仕掛ける場面が徐々が増えていく。勢いづくデュアルチはダブルレッグを狙うが、ブシェシャは少し下がりながら受け止めてディフェンス。
逆にブシェシャがテイクダウンを仕掛けるものの、先ほどのような迫力はなくデュアルチに軽く両手で突き放されて不発に終わってしまう。次にデュアルチが体勢を低くしてブシェシャの右足を取るが、ブシェシャも崩れない。
残り時間が少ないなか、ブシェシャが再び飛び込んでのテイクダウンを狙うが、またもデュアルチに突き放される。終了直前、逆にデュアルチがダブルレッグに。ブシェシャがそれを受け止めたところで、デュアルチはその胸をプッシュ。ブシェシャが後ろにバランスを崩したところで試合が終了した。
レフェリー判定は、延長のテイクダウン合戦で攻める場面の多かったデュアルチに。
最重量級のブシェシャのトップからのアタックをニーシールドで危なげなく止め、テイクダウンも重い足腰と俊敏な動きで凌いだ上で攻め返した超新星が、その底知れぬ潜在能力を見せつけて決勝進出を決めた。