【ADCC2019】77キロ級─03─準決勝でトレスとトノンの再戦が実現。前回を上回るスクランブルウォーに
【写真】手の内が分かるだけに、その詰将棋具合がさらに際立っていた (C)SATOSHI NARITA
9月28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われた。
2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰となるこの大会のプレビュー16回目は77キロ以下級準決勝の模様をレポートしたい。
Text by Isamu Horiuchi
<77キロ以下級準決勝/10分1R+ExR5分>
JTトレス(米国)
Def. by 本戦 0-0 延長 2-0
ゲイリー・トノン(米国)
前回大会と同じ組み合わせとなった準決勝。2年前はトレスがトップゲームでトノンのサブミッションの仕掛けを完封したが、今回は……?
まず先制攻撃を仕掛けたのはトレス。飛び込んで強烈なボディロックを作ると、そのままトノンの体を崩してみせた。トノンはすかさず前転からのスクランブルを試みるが、トレスは持ち前の低い重心を生かして上をキープする。序盤ゆえにポイントはなし。そのままトレスは強烈なプレッシャーをかけてトノンの下からの仕掛けを潰すという、前回と似た形で試合は加点時間帯に入っていった。
トノンは下から回転しての足狙いを見せる。が、トレスは体重をかけてその体を二つ折りにして動きを封じると、取られた足を引き抜いてまた低い重心で圧力をかけてゆく。残り3分、このままでは展開が作れないと見たか、トノンは距離を取って立ち上がった。
試合はスタンドの攻防に。両者頭を付け合い押し合うなか、トノンは準々決勝のカヌート戦で功を奏したアームドラッグやスナップダウンを積極的に仕掛けるが、トレスの強力なベースを崩しきれない。
残り1分20秒、トレスはトノンの左足をめがけて飛び込むも、トノンは見事なタイミングでスプロウルし──がぶってみせた。上からトレスの胴に腕を回してクラッチを作ったトノンは、あえて背後に投げて展開を作る。その勢いでスクランブルしたトレスは、トノンの体をリフトしたままシットアップ。トノンはそのトレスの背後に頭から滑り降りるように足を狙うが、トレスは対処して立ち上がった。
その後、本戦終了寸前にトレスは双差しを取って強烈なサバ折りからのテイクダウンを狙うが、トノンは払い腰を仕掛けて凌ぎ、試合は延長にもつれ込んだ。
スタンド状態から再開された延長戦でも、白熱のスタンドレスリングの攻防が続く。トノンはフェイントからスナップダウン仕掛け、対するトレスも双差しを取っての崩しを狙うが、お互い凌ぐ。
やがてトノンのアゴに頭を付けてプレッシャーをかけたトレスが、テイクダウンを狙って飛び込む。トノンは本戦同様にトレスをカウンターで背後に投げようと試みるが、今回トレスは低く重心をかけて動かず。トノンはすぐにスクランブルで背中を見せると、トレスはすかさずその上に覆いかぶさってタイトな襷掛けを作ってみせた。
懸命に体をずらそうとするトノンに対し、トレスは肩固めの形でトノンの首を強烈に固めたままマウントへ。それでもトノンは動いて片足を絡めるが、残り1分40秒、ついにポジションが固定されたとみなされて、トレスに2点が宣告された。それでも動き続けるトノンは、終了寸前に腰を上げると前転してヒザ十字に入る。タイトに入っているかに見えたが、トレスは表情を変えず。そのまま試合終了。前回以上に白熱した注目の再戦は、またしてもトレスに軍配が上がった。
無類のスタミナとアグレッシブさで立体的に展開を作り続けて極めを狙うトノンと、強固なレスリングベースとトップからのプレッシャー、そして世界一のバックテイクで相手を制するトレス。最後に勝敗を決した攻防──トレスのテイクダウン狙い、トノンがそれを背後に投げてのカウンター、トレスが潰してバックテイク──は、この両者の対極的なグラップリング哲学がぶつかり合った名場面だった。
<77キロ以下級準決勝/10分1R+ExR5分>
ヴァグネウ・ホシャ(ブラジル)
Def. by 本戦0-0 延長0-0 レフェリー判定
ダンテ・リオン(カナダ)
座ったダンテは、右足に絡むハーフガード。そこから低くプレッシャーをかけてゆくホシャと、それをニーシールドで守っては下から仕掛けようとするダンテの両者譲らぬ攻防が続き、延長に。
スタンド再開延長。ここも両者譲らぬスタンドレスリングの攻防が5分間続いたが、3分過ぎ、ダンテのがぶりを耐えてクラッチを組んでテイクダウンを取りかける等、攻勢に出る場面のあったホシャがレフェリー判定をものにした。