【ADCC2019】マシエルの親子優勝の夢、打ち破ったタンキーニョが66キロ級優勝=ADCC初制覇
【写真】タンキーニョが世代を跨いだライバル対決でマシエルを下し、ADCC初制覇を成し遂げた(C)SATOSHI NARITA
9月28日(土・現地時間)と29日(日・同)の2日間、米国カリフォルニア州アナハイムにあるアナハイム・コンヴェンション・センターでアブダビコンバットクラブ(ADCC)主催の世界サブミッション・ファイティング選手権が行われた。
2年に1度、ノーギグラップリング世界最高峰となるこの大会のプレビュー13回目は、史上最高の熱戦、そして接戦となった66キロ級決勝戦=アウグスト・メンデス・タンキーニョ✖ケネディ・マシエル、世代を超えたライバル対決を振り返りたい。
Text by Isamu Horiuchi
<66キロ以下決勝/20分1R・延長10分>
アウグスト・メンデス(ブラジル)
Def. by 本戦 0-0 延長 3-0
ケネディ・マシエル(ブラジル)
前回優勝の父コブリーニャに代わって今回初出場、見事に勝ち上がった22歳のマシエル。「父子でADCC二大会連続制覇」という偉業達成を目前にした決勝の舞台で、この若者の前に立ち塞がったのは父のライバルだった36歳のベテラン、タンキーニョことアウグスト・メンデスだ。13年のワールドプロと世界選手権でコブリーニャを倒し、世界二大柔術大会を制覇したタンキーニョは、15年のADCC世界大会では逆にコブリーニャにレフェリー判定で敗れている。柔術やグラップリングを長く見ている者にとって、タンキーニョ✖マシエルの決勝はこの上なく感慨深いカードといえる。
序盤はスタンドレスリングでの探り合いが続いたこの一戦、試合が動いたのは7分近くが経過してからだった。左足にシングルレッグを仕掛けたマシエルに対し、タンキーニョは素早く反応してスプロール。
そのままマシエルの頭を押さえつけながら後ろに足を抜きさろうとしたタンキーニョだが、マシエルは捕らえた左足を離さず猛然と追いかけ、両者の体は隣のマットスペースに。
決勝ゆえに他の試合が行われていないためにブレイクがかからないなか、前進を止めないマシエルは雪崩込むようにタンキーニョをテイクダウン。
タンキーニョがすぐにスクランブルを試みると、猫のごとく俊敏な動きで背中に回る。が、タンキーニョは強靭なベースでマシエルを背中に抱えたまま立ち上がると、さらに体をずらして振りほどいてみせた。
その後も両者はスタンドで譲らぬまま、試合は加点時間帯に。途中タンキーニョがマシエルの体を崩してがぶることに成功するが、頭を抜かれる。
残り5分。再びマシエルは左足にシングルを仕掛けるも、タンキーニョはがぶって防御。するとまたしても飛び込んでシングルに行くマシエル。再びがぶるタンキーニョに対し、マシエルは潰された状態から立ち上がって後ろに倒す。が、タンキーニョは倒された勢いを利して足でマシエルを跳ね上げて隙間を作り、立ち上がって失点を防いだ。
残り2分。タンキーニョはマシエルの首に左右の腕を交互にひっかけて崩しのフェントを仕掛けると、瞬時に身を沈めてテイクダウンへ。
そのまま素早く横をすり抜けるという見事な動きで背後を取ることに成功する。
腰を上げて頭を下げた体勢を取ったマシエルに、襷がけ&シングルフックを入れたタンキーニョ。やがて背中に飛びつき、腰を下げてグラウンドで守ろうとするマシエルから四の字フックを完成させ、 待望の3点を先制して見せた。
しかし、タンキーニョは肩固めに移行するような形でマシエルの上半身をタイトに押さえつけ、足を抜いてのマウントを狙ってゆく。それでも残り30秒の時点で、マシエルはなんとか足を入れてオープンガードに戻した。
マシエルは最後の望みをかけてギロチンに。タンキーニョは側転するような形で前に飛び、腹ばいに着地して絞めを解除。
ならばとマシエルは下から足関節へ。それをタンキーニョが強固なバランスで防いだところで試合終了。36歳の大ベテランが、ライバルの息子に完勝してADCC初制覇を果たしたのだった。
容易には下にならない強力なレスリング&スクランブル力、相手の下からの仕掛けを確実に断ち切る俊敏かつ正確な対処力、そして相手の心身を着実に疲弊させてゆく上からのタイトなプレッシャー。MMAを経験したことで、強化したタンキーニョの長所は、技術がいくら進化しようとも揺らぐことのない──グラップリングにおけるコアの強さの存在を我々に改めて教えてくれた。そんな、鉄人タンキーニョの初戴冠だった。
■66キロ以下級リザルト
優勝 アウグスト・メンデス(ブラジル)
準優勝 ケネディ・マシエル(ブラジル)
3位 パウロ・ミヤオ(ブラジル)