【Special】月刊、青木真也のこの一番:8月─その壱─バーンズ✖リー「こういうキャリアの積み方も」
【写真】10月13日に試合が決まった青木。取材はロータスの金曜プロ練習の直後に行われ、この2日後には大阪でプロレス。さらに月曜日には山口県でセミナーと、相変わらず多忙だ (C)MMAPLANET
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ2019年8月の一番、第一弾は6日に行われたDWTNCS S03 Ep07からエウベウ・バーンズ✖デリック・ミナーの一戦を語らおう。
──8月の青木真也が選ぶ、この一番。最初の試合は?
「バーンズなんですけど、ハーバートって……」
──あっ、バーンズというのは弟のエウベウ・バーンズであって、お兄ちゃんのジルベウト・ドゥリーニョ・バーンズ✖アレクセイ・クンチェンコではないのですね!! ライト級のドゥリーニョが岡見勇信選手を破ったロシアの20連勝の選手とウェルター級で戦い、勝った試合かと思っていました(笑)。
「まぁ、そっちのバーンズも……当然凄いッスよ。佐藤天が行っているHARDKNOCKS所属ですよね。打撃、レスリング、柔術ともに良いジムですよね。ウェルター級でも勝っちゃうなんて凄いとしか言いようがないです」
──ではDWTNCSからエウベウ・バーンズ✖デリック・ミナーの一戦でお願いします。
「ハーバートは僕が初めてシンガポールに行った時から2年ぐらいEvolve MMAにいて、とにかく組み技が滅茶苦茶強かったんです。組んだ感じの質がガチガチに固くて……ゾロ(ソロパベル・モレイラ)なんかは固くて、動きがギクシャクしている。レアンドロ・イッサは包み込むような感じなんです。
ハーバートは瞬発力系でガチガチしていましたね。当然のようにテクニカルで、道着だと敵わなかったですね。ノーギだったら上に居続けることはできました。まだMMAは1試合ぐらいしかしていないのに、凄い自信家で『お前らなんか相手じゃないよ』って口にしていましたからね。
俺は下から入るから付き合えて、仲も良くなったけど……周囲からはプライドが高すぎる傲慢なヤツだって思われますよね(笑)。僕は「おい、やるぞ」って感じで言われて、色々と教えてもらいましたね。かなり上から目線でしたけど(笑)」
──アハハハハ。
「イヴォルブの会員さんの前で、蹂躙されていましたよ(笑)。でもMMAはどんなもんだって思っていました。それがすぐにホノリオ・バナリオとやって勝ち、次に田中半蔵選手とドバイで試合をして勝った。それも打撃を効かせて。半蔵選手に勝った試合を見て、これは強いなって思うようになりましたね」
──あのドバイの大会は取材させてもらったのですが、以前の計量方法でパスしたあとにステーキとか、チップスとか凄い量を直後に食べていて驚かされました。内臓が違うぞ、と。
「スゲェ肉を食うんです。で、デカかったですよね(笑)。それからティモフィ・ナシューヒンにRNCで勝ったのに、色々あってイヴォルブから離れるんですよ。そこからONEと疎遠になったのに2試合組まれて、今はPFLでやっているモヴリッド・ハイブラエフ、それとマゴメド・イドリゾフに連敗しONEからもいなくなっちゃって」
──ロシア人を相手に連敗した時は、心が折れているような感じでしたね。
「そこからお兄ちゃんのところへ行って、Titan FCからコンテンダーシリーズに。タイタンFCの初戦なんて、パンチを効かされて逆転勝ちっていうあまり良くない試合だったけど……コンテンダーシリーズに行った時点で勝てると思いました。あそこはレコードは悪くないけど、厳しい相手とやっていない連中も少なくないので。
う~ん、こういうキャリアの積み方もあるんですね。コンテンダーシリーズの試合内容も、UFCが好きなモノじゃない。お兄ちゃんの活躍を生かして契約できたと思います。そういう部分でもUFCという商業ベースのイベントに合致しましたね。
ここからUFCでトップというのは厳しいですよ。でも、皆がチャンピオンになるためにUFCで戦っているんじゃない。米国やブラジルは、UFCと契約すればブランドができる。韓国だとROAD FCでチャンピオンになると、ある程度応援してくれてやっていける態勢ができるように。
日本だとRIZINもそうですね。UFCはブラジル人や米国人にとって契約することでそうなれるのかなって思います。そういうフォーマットがあるんだなって」
──そういう部分では結局はUFC一色、一人勝ちという現実はありますよね。
「イベントを引っ張っていないクラスのファイトマネーが高くて、引っ張る人間になると桁が違う。それがUFCですよね」