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【WJJC2019】早川光由トライフォース代表が見たムンジアル─01─「ビデオだけを見ても分からない」

Hayakawa【写真】試合を終えた澤田の話に耳を傾ける早川氏(C)MMAPLANET

現在発売中のFight &Life Vol.73では「2019年、初夏。柔術」という23ページからなるブラジリアン柔術を代表とする各種柔術の特集が組まれている。

そして国内外、優勝、準優勝、3位獲得選手らのインタビューを交え5月30日から行われたIBJJF世界ブラジリアン柔術世界選手権がレポートされている。

競技柔術の世界一を決める同大会を過去9年で8度視察を行っているのがトライフォース柔術アカデミーの早川光由代表だ。日本の柔術界のパイオニアが見た日本勢の世界での戦いとは。


──早川さんが観光旅行のついでに、ムンジアルを視察するのは恒例となっています。

「アハハハハ、いつもそれ言われてしまいますね」

──今回は他の街に行ったり、空港のラウンジで過ごしているフェイスブックの投稿がなくて残念でした。加古拓渡選手と柔術の話をしたとかっていう……らしくないモノだったので(笑)。

「いやぁ、アハハハハ。旅行記がなかったですね(笑)。今回はピラミッドとホテルの往復でネタがなかったので」

──今回は柔術の試合を観に行ったということでしょうか。

「当たり前じゃないですか(笑)。毎回、そうですよ」

──冗談はこれぐらいにして。ムンジアルの日本勢の戦いぶりについて話を聞かせてください。

「いや、高島さん……でも、自分なんかはもう世界柔術の話なんてできないですよ。ただ、自分の弟子たちの試合を見に行っているのであって、全体像を見ているわけでもないですし」

──いや、だからこそ早川さんに自分はムンジアルの話をしてほしいのですよ。今の日本の柔術スクールの指導者&経営者でこれだけムンジアルを見ている人はいません。世界を見続けているのが、早川さんなのです。

「う~ん、そうですか……。芝本が負傷し出場できなかった年、一昨年──2017年以外は2010年から見てきたことは見ています。コーチとして行くことが第一の目的ですが、現場を見ないと適格な指導ができない。それもコーチ的な部分ですね、やはり。今現在ルールはどのような傾向になっているのか。実際にマットの上でどんな戦いが行われているのか。ビデオだけを見ていても、それは分からないので現場で見て、効果的な指導を生徒たちにできるようにということが大きいですね。

特に黒帯の選手たちと情報をシェアしないといけないので、そういった意味で足を運んでいます。と同時に、観光……じゃなくて(笑)、もう長く柔術界に身を置いている身としては、世界柔術は国別対抗ではないのですが、やはり日本人選手の活躍を見届けたいという気持ちがあります。もちろん、12マットもありますし、全選手のフォローはできないのですが、見ることができる範囲で他流派の子とかの試合を見ておきたいと思っています」

──2018年の結果を受け、日本の黒帯柔術家の表彰台はデフォルトだという風にJBJJFの広報誌に書かせていただきましたが、厳しい結果に終わりました。

Shibamoto「どうしてもうちの選手中心になってはしまいますが、まず芝本に関しては常に1回戦はほぼ圧勝しているのですが、ベスト8の壁を乗り越えることができない。今回も準々決勝で優勝したマイキー・ムスメシと初めて戦い……良い勝負をしていたとは思います。過去にミヤオやブルーノにやられたときほどの絶望感は、実はありません。

マイキーと結構やれたなと。ただマイキーもベスト8でどこまで出していたかは分からないですが、そこそこ勝負はできました。8-2と点差は開き増したが、アドバンで常にリードされるという試合よりもコントロールされていたわけではなかったかと思います。アドバン差だけど、絶対に勝てないゲームが柔術には結構あります。『アドバン差だったぜ』とは言えるのですが」

──ハイ。本当にそう思います。

「それでもバックで4Pを取られると、それこそ勝ちもないのですが。特に今のルールだとバックポジション以上は何も進展する必要がないので。そういった試合が結構あり、これはIBJJFルールの課題でもありますよね。

バックコントロール・ポジションを取られ三角クラッチで組まれると、相手がサブミッションを狙うのもほどほどなので。狙わなくても反則にはならない。となるとバックポジションを取られると、そのままタイムアップになる。誰というわけではなく、どのマットでもそういう試合が見られました。

芝本も1回戦で橋本知之選手と当たった澤田にしても、あのポジションを取られると勝つのは相当難しくなります。三角クラッチを組まれた瞬間にそう思いましたね」

──そこで勝負ありと。

「芝本に関しては、そこまで防戦一方ということではなかったです。最初のキムラロックは面食らったところはありましたが。非常に良いディフェンス、立ち上がってという理想的な防御で解除し、そこからも落ち着いて戦えていました。それでもムスメシの攻め手が一手早いというか、バックを許してしまいましたね」

──あのキムラは、対処を少しでも間違えると一本負けという危険なモノに感じました。

「そうですね。転がってくるのではなく、ああいう手に出ることができる。ファイト&ライフのインタビューでムスメシが言っていましたが、柔術歴が18年。若くても相当なキャリアの持ち主です。引き出しの多さを、ああいう場面で垣間見ることができましたね。

あの『モダンは最も効果的に勝てる手段だ。でも、基礎練習が大切だ』とマイキーが言っている考え方は、私が常々トライフォースの選手と話している内容、トライフォースのありように通じていて良かったです。

もちろん、得意技中心で勝てるゲームの主軸を創ることは大切です。加えて基礎的なことは普段から十分に積んでいるので、得意の展開にならなくても対処できるように穴を塞いでおく。試合に勝つには、その二段構えですよね」

<この項、続く>

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