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【Shooto 30th Anniv.T06】バンタム級転向、田丸匠「純粋にMMAが好きだという気持ちで戦おうと」

Tamaru【写真】闘裸男24、メインで同門のソーキの勝利者コールを聞くと、目を閉じて下を向いていた田丸。どのような想いが去来していたのだろうか(C)MMAPLANET

15日(月・祝)、東京都文京区の後楽園ホールで開催されるShooto 30th Anniversary Tour 06で1年振りの実戦復帰、そしてバンタム級転向初戦を一条貴洋と行う田丸匠。

常々危惧されていた減量苦、昨年11月のオニボウズ戦の計量前日に脱水症状で緊急搬送し試合出場がならなかった田丸が、ケージに戻ってくる。その田丸が6月16日に北九州で開催された闘裸男24をナセルドソルの同門ソーキのセコンドに就くために訪れていた。

田丸自身は、減量失敗の時の状況を話すことを躊躇していたが、それがこのスポーツのためになるという言葉に活字にすることを認めてくれた。

如何に間違った減量、ドライアウトが危険か。だからこそ、どのようにこの問題と向かい合う必要があるのかを頭にいれながら、再びケージに戻ってくることができた田丸の肉声、その活字化された言葉を目に焼き付けてほしい。


──今回、北九州で会えるとは思っていなかった田丸選手です。でも、インタビューを申し込んでも恐縮しきりで。試合が決まりましたし、ぜひとも今の心境を教えてください。

「今回に関しては自分がただやりたいから、やる。これからのためだとか、ジムのため、応援してくれる人のためということからも離れて、自分がやりたくなった……純粋にMMAが好きだという気持ちで戦おうと思っています」

──欠場直後には色々な想いがあったかと。

「たくさん考えました。高校を卒業してから、コレで食っていこうと思ってやってきて。自分でやってしまったことなのですが、就職して普通に生活する選択もある……正直に言うと、もう辞めようと思っていました。好きだけど、こんなに辛いことはできないって……」

──死なくて良かったです。本当にそこが一番です。そして田丸選手自身、フライ級で戦えると判断した全員がこの事態を真剣に考えないといけないことだと思いました。

「僕も……意識が遠のいて、このまま死ぬんだなと思いました。銭湯で倒れて。明け方だったので、周りに誰もいなくて。脈がめちゃくちゃ速くなったんです。それも細くて、速い。毛細血管が千切れていくような感じで。ドクン、ドクンではなくて、トン・トン・トン・トンって。それが止まって……。その時点で意識が遠のいていって、『このまま死ぬんかな』って思っていたら、そのタイミングでおじさんが入ってきたんです。大丈夫かって叫びながら、僕を叩いてくれて意識が戻ったんです。で、『ヤバいです』と伝えると救急車を呼んでくれて」

──う~ん、本当に死ななくて良かったという状況ではないですか!! 生きるために点滴を打つ。そうすると体重はもう戻るわけです。でも、試合より命です。

「最初、点滴も断ったんです。点滴をすると、もう体重は落ちないですから。声もでないので、首を振って嫌だっていう意志表示をし、腕を引っ込めて……。お医者さんも『点滴を打たないとだめだ』って言い続けて。そこで母がやってきて……泣きたいのに、涙も出なかったです……」

──これまでの計量の様子を見て、なぜ田丸選手がフライ級で試合を続けるのか。周囲も認め、オファーもあるのか。不思議でしょうがなかったです。そしてようやくバンタム級で試合をすることになりました。

「フライ級で続けると、MMAも嫌いになっちゃうし、格闘技も嫌いになる。試合のための練習でなくて、減量のために毎日20キロ、30キロ走るだけ。試合の2週間前から何も食べすに……」

──もう間違っている。そういうしかないです。

「……。『落ちへん』、『落ちへん』ってなって……」

──格闘技を仕事として捉えると、選手もフリーのようなモノです。まるで職種は違いますが、私はフリーライターとして体調が悪くても、疲労が蓄積していても依頼に対してノーと言うことができなくて。それをするとフリーライターとして認められなくなると神経がすり減り、言ってみると気が狂いそうになった時期がありました。

「……僕も……、ノーと言えなかったです。今、言われたみたいに自分の価値が下がるという想いと、自分ならできるという過信もありました」

──で、仕事を受けると追い込まれて。どんどん怖くなっていく。

「ハイ、本当にそんな感じでした。でも、やるしかない。気が狂いそうになるって高島さんが言われていましたけど、僕も周囲は『米国に行った頃から、もう限界だったはず』と言っていました。米国にいる時も、冷静ではなかったんですよね。本当に鬱とか、そういうものであるなら、そうだったんだと思います。

こんなこというと疑われてしまいそうですが、全部なくなれ──死にてぇって思ったこともありました。UFCに行きたいとか言っていて無駄に背負っていた分、追い込まれていました。

幸い、僕の周囲には僕が格闘家でなくても良しとしてくれる仲間がいてくれて……もちろん、あの件で離れていった人もいます。でもうちの代表は全く僕を責めることがなかったです。前に交通事故にあって試合ができなかった時にも、色々と言われている中で『お前が格闘家でなくても、俺はお前のことが好きやから。これで格闘技を辞めたくなっても、ライブに行ったり、旅行に行ったりしよう』と言ってくれて。僕は父がいないのですが、本当にお父さんのような存在なんです。

11月の減量失敗の時も、『もしお前がやりたくなったら、またやろうな』って言ってくれて。まだアマチュアの時に先生から『道場をやっているのは面白いヤツがでてきて、そいつを見ていたいから』と僕に言ってくれたことがありました。その頃から先生には色々と迷惑をかけ続けているのに、そういう感じで見守ってくれて……。先生がいてくれて、僕もまたやりたくなって」

──田丸選手が、最初に言ったようにまたMMAを戦いたくなって戻ってきた。現役なんてやめても良いので、格闘技を嫌いにはならないでほしいと思っていたんです。

「ありがとうございます。僕は格闘技が好きなんです、本当に好きなんです。他に趣味もないし、試合に穴を開けてしまって色んな人に迷惑をかけてしまったんですけど……、でも脱水症状は点滴を打てば体調は元に戻ります。

だからこそ、申し訳ない気持ちでいっぱいになるのですが、体は戻るから練習がしたくなって……。心はしんどいのに体は元気になっちゃって。で、道場にも顔を出せないし……指導があるので、2週間後ぐらいからジムにはいくようになったのですが、練習には参加していなかったです。公園でシャドーをしたり、ただあの時は現役でまた試合をやるという気持ちもなかったです」

──また試合を戦いたいと思うようになったのは、いつ頃ですか。

「何年振りかに、この間──バイトを始めたんです。バイトの稼ぎでも生活はできる。時間の融通もきいて、これならできるかもって思うようになり……周りのおかげで、格闘技界に戻って戦いという気持ちになっていきました。

人生を賭けて何がやりたいってなると、僕は格闘技が好きで、戦っていたい。趣味レベルでは得られない充実感があります。本当に麻薬みたいです(微笑)。

でも母親も、これから家族になる女性も猛反対でした。『格闘技なんて絶対にやらないで。代わりに何もしなくても良いから、格闘技だけはしないで』て言われて。彼女は看護士なんですが、最後は水抜きは4キロまでという約束で、バンタム級で試合をすることを認めてくれました」

──1年前の今と比較して、動きはどうですか。

「悪くないです。前より動けていると思います。もう以前のように『食べたい、食べたい』って心の中で繰り返すこともなく、自然と減量できています。

一條選手には失礼ですが、対戦相手云々ではなく自分がいかに戦うのかと思っています。やるからには欲も出ますし、何でもありで……世界で一番強くなりたい。ただ戦いたいです。でも、こんなことを言うとまたSNSで叩かれるのかと思って……怖いですね」

──気にしないことです。顔も知って、話もできる人で分かってくれる人が周囲にいるのですから。

「ハイ。僕はMMAがやりたいと思って戦います。だから楽しみます」

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