【ONE92】ONE初陣を迎える岡見勇信─01─「進化できていると感じている部分を試合で証明できるのか」
【写真】前だけを見ていたい時期に、取材のためとはいえ過去を振り返ってくれた岡見には感謝の気持ちしかない (C)MMAPLANET
3日(金・現地時間)にインドネシアはジャカルタのイストラ・ゲロラ・プン・カルノで開催されるONE92「For Honor」で岡見勇信がONE初陣を戦う。
干支が一回りする以上の時間、オクタゴンで戦うことだけを考えてきた岡見が、37歳にして選んだ新天地。UFCとは違う世界観を持つONEで何を目指すのか──キャムラン・アバソフ戦を10日後に控えた岡見に尋ねた。
──2006年から12年以上、岡見勇信はUFCで戦うという意思を持たずに試合をしたことがなかったと思います。
「ハイ、その通りですね。そうだと思います」
──年齢もあり、UFCからリリースをされた時点で現役生活から退くのではないかと思っていました。
「負けて……落ち着いてから考えたのが、UFCだろうが、舞台がどこになろうが、あと1試合は戦いたいということでした。これで終わるのは納得できない。もちろん、負けは負けです。ただ、ずっとやってきた格闘技をあの試合で終わらせることはできなかった。自分のやってきたことを、1つ創り上げたいという想いがありました。それが落ち着いてから、自分のなかではっきりと感じられた想いでした」
──あの試合で自分の動きが出せていたら、もう終わっていたかもしれない?
「う~ん、自分の動きを出すことができれば勝っていたので終わっていないです。だから……自分がやり切ったという中で負けていたら、終わっていたかもしれないですね」
──試合内容に納得いかなかったということですが、私は実に岡見選手らしかったと思います。殴り合って勝利の可能性を低くするよりも、組んで、組んで、ダメなら引き込んで。引き込む限り、勝負を諦めていないと思えました。
「そういう風にあの試合を見てくれる人も少ないかと思います(苦笑)。あの試合に関しては、取り組みなどやってきたことも含め納得できています。あの試合で得るものもたくさんあって、次はこうしたいという想いもどんどん出てきたんです」
──あんなもんじゃない、と?
「まぁ、皆そういうでしょうけどね(笑)」
──そうなのですよね。MMAは相手あってのスポーツで、自分の動きを出す、出さないは相手に関わってきます。やり切るとは、どういうことなのでしょうね。
「ねっ。本当にそうですよ。試合を通して勝ち負けはハッキリできるものです。そこもあるのですが、僕の基準はUFCのトップファイターと戦った時に、どうなるのかというモノなんです。なので……日々のなかで成長できていない。自分が成長していないのに、レベルの低い選手と戦うということではないです。
自分のなかで成長できている、強くなっているという想いを日々持っています。だから続けることができる。続ける、続けないで言えば感情として続けるということだったんです。『このままで終われない』というのは。練習仲間からも『あんなものじゃないでしょう』という風に言ってもらえた。なら、成長しないといけない。そういう想いで、あの試合から今日までやってきました」
──そこでONEという選択に行き着いたのは?
「視聴環境なども含め、日本に力を入れてくれているというのはありました。実際、契約してからですが日本大会の雰囲気は素晴らしかったですし。日本の良さとONEの良さが融合したというか。それでいて海外のビッグショーがやってきたという派手さもありました。そういうモノが入り交じり、独特の世界観があって良かったと思います。
日本の格闘技を盛り上げようとしていることは、ONEの関係者の方と話していても伝わってきますし、日本大会はその気持ちが凝縮しているようなイベントでした。あの大会を見て、ONEを日本に根付かせたいという気持ちが強くなりました。それ以前のことですが交渉の時には、ONEの計量システムというのは頭のなかに置くようになっていましたね」
──UFCで戦い続ける限り、世界一というモノが頭の片隅になったと思います。それがUFCでなくなった時、目標がやり切るために変わったということでしょうか。
「やり切るためではなくて、岡見勇信を証明したい。それはどこの舞台であろうが……。もちろんUFCイコール世界一というのは変わらないです。と同時に、ONEの舞台で岡見勇信がどれだけ証明できるのかというのは、大きな部分を占めています。ONEという出来上がった世界で、自分が成長できている部分、進化できていると感じている部分を試合で証明できるのか。怖くもあり、楽しみでもあります。
それは世界一だろうが、舞台がどこであろうが、前回の試合で負けて得たことを試合で出すということなんです」
──さきほど話されたONEの計量方法というのは、岡見選手にとって優位に働くのでしょうか。
「優位かどうかは皆が同じ方法で計量をするわけなので、そこは分からないです。ただし、自分のなかで水抜きがない、サウナは卒業というのが……ここまで気持ちとして楽だったのかと。
この計量システムを経験すると、もう戻れないですね。コンディション的に一番です。試合前の大きなハードルがない。コンディションは絶対に良いはずです」
──現時点でも本当に調子が良さそうです。北米ユニファイドのミドル級で戦っている時よりも、グッドシェイプに見えます。
「良い感じに仕上がっています。前にUFCのミドル級で戦っている時はもっと大きかったですからね。試合まであと10日ほどで、体重は86.8キロ。減量は3キロもないですし、この状態で体重を落とせるのは大きいです。
これは本当に今を過ごしているので、分かり得たことなのですが、水抜きはダメージが大きかったです。試合に向かう気持ちも違いますし。以前は現地入りしてからも、水抜きのことが頭から離れなかったです。水抜きという処刑台に上がるような精神状況がない(笑)。これがないというのは、試合に集中できます。
あれを当たり前と思ってやっていたんですよね。ミドル級でもウェルター級でも。ウェルター級に落としたのも、フィジカルで優位に立つというよりも、新しい選手と戦っていきたいという部分が多かったのですが、水抜きは身体的にもダメージがありました。水抜きがあったから、現役生活もそう長くは続けられないというのはあったと思います」
<この項、続く>