【PJJC2019】澤田伸大がルースター級で3位表彰台。準決勝でクレベル・ソウザを渡り合うも惜敗
【写真】昨年のノーギワールドの優勝に続き、パン柔術で3位獲得と確実に澤田の認知度は実力とともに上がっている(C)IBJJF
21日(木・現地時間)から24日(日・同)にかけて、カリフォルニア州アーヴァインのブレン・イベントセンターにてIBJJF主催のブラジリアン柔術パン選手権が行われた。5月の世界大会の前哨戦とも言える今大会のレビュー第1回は、最軽量ルースター級における澤田伸大(トライフォース)の戦いを振り返りたい。
<ルースター級1回戦/10分1R>
澤田伸大(日本)
Def. by 0-0 アドバンテージ 1-1 レフェリー判定
サラジ・バドハラム(米国)
今年から黒帯アダルトの1回戦は土曜に行われることになったパン大会。土曜の大会開始を告げる「レディース・アンド・ジェントルメン、2019年度IBJJパン柔術選手権にようこそ。これから試合が開始されます」とのアナウンスに続いて第1試合のマットに上がった澤田の相手は、米国NY州ブルックリン出身のサラジ・バドハラムだ。
試合開始後すぐに引き込んだ澤田は、やがて横向きに寝て右足を相手の右足にハーフで絡め、上側にある左足を効かせる得意の形を作る。ここから相手のパスの動きに合わせて、この左足を旋回させて相手のファーサイドのワキにこじ入れての腕十字=澤田バー等を狙ってゆくのが澤田のスタイルだ。
バドハラムが澤田の右足をマットに抑えて横に低く動いてパスに出ると、澤田はバドハラムの右足を抱えながら素早くシットアップしてのスイープを狙う。しかしバドハラムが片足で踏ん張ると、澤田は無理せず再び下を取った。アドバンテージは与えられず。
反撃に転じたバドハラムは、再び澤田の右足を抑え、態勢を低くして自らの左側に動いてのパス狙い。サイドに回りかけられた澤田だが、柔軟な体を活かしてインヴァーテッドの体勢から左足を抉じ入れて戻してみせる。しかしこの攻撃で、バドハラムがアドバンテージを1つ先行した。
3分経過後、左の手足でラッソーを作った澤田に対し、バドハラムはまたしても右足を抑えてのパス狙い。ここで澤田は左手をバドハラムの襟に持ち替えて、右側に崩すスイープへ。バドハラムの体を完全に返し上を取りかけた澤田だが、バドハラムは背中をマットに付けられつつも動き続け、体勢が完全に安定する前に距離を作って立つことに成功。対する澤田はまた座った。この攻撃で澤田はアドバンテージを獲得し、追いついてみせた。
その後、下から右ハーフ&左ラッソーを作って崩す澤田と、バランスを保ってサイドにパスを狙うバドハラムの攻防が続き、試合は残り3分半に。ここで澤田は、ついに左足を上から回してバドハラムの左ワキにコジ入れ、その左腕を捕らえて澤田バーの体勢へ。うつ伏せで守るバドハラムの左足を抱えて仰向けに返してみせた澤田だが、バドハラムは返された勢いで上の体勢に戻る。そのまま改めてベースを作ったバドハラムは、左腕を抜いて難を逃れたのだった。アドバンテージは告げられず。
その後も澤田は、シッティングやハーフガード、左のスパイダーからデラヒーバと形を替えてバドハラムの体勢を崩しにかかるが、優れたボディバランスを持つバドハラムは、要所で右腕をマットにポストして保つ。残り時間が少なくなると、バドハラムは澤田の左足に体重をかけながら左右に回ってのパスの攻勢。さらに噛み付きに出るバドハラムだが、澤田が守って試合終了。勝敗はレフェリー判定に委ねられた。
レフェリー判定は澤田に。一度スイープで完全に返しかけたこと、そして澤田バーで相手を崩して極めの仕掛け近くまで形に持ち込んだことが評価されての勝利だろう。自分の得意な形から変化しての各種のスイープ、そして必殺技を有効に駆使した澤田が、見事に一回戦突破。翌日の大一番=優勝候補大本命、マイキー・ムスメシが待つ準々決勝に駒を進めたのだった。
ところが、そのムスメシがなんと今大会欠場。ムスメシは一回戦シードだったため、澤田は準々決勝を不戦勝で勝ち上がることに。準決勝でもう一人の優勝候補、クレベル・ソウザと戦うこととなった。
<ルースター級準決勝/10分1R>
クレベル・ソウザ(ブラジル)
Def. by 4-2
澤田伸大(日本)
試合開始後、ソウザが前に出てきたところで澤田は引き込み。しかしレフェリーはこれをソウザのテイクダウンとみなし、澤田は2点を先行された。下になった澤田は、すぐに右足で絡む得意のハーフの形を作ると、上にある左足を旋回してソウザの左ワキに入れての澤田バーの仕掛け。ソウザが反応して立ち上がると、澤田はその左足に腕で絡んでバランスを崩した。
ソウザは倒れこみながらもレッグドラッグからのベリンボロを狙うが、察知して距離を取った澤田がシットアップして上に。世界的強豪相手に見事な連続攻撃と防御反応をみせた澤田が、2-2に追いついたのだった。
ハーフになったソウザは澤田を前方に返しにかかる。しかし、澤田はマットに頭を付けてバランスを保つ。ならばとディープハーフから澤田のラペルを取ったソウザは、澤田をリフトするように返しにゆくが、絡まれた足が抜けた澤田はうまくバランスを保って上四方に付きかける。ここでソウザはすかさずスクランブルし、上を取り返してみせた。このソウザは4-2とリードしたが、同時に澤田にもアドバンテージが1つ与えられた。
残り7分。重心を低くして噛みつきから横に回ってのパスを仕掛けるソウザだが、澤田はインヴァーテッドの体勢で対応して戻すと、右足に絡む得意の形を作る。ソウザは澤田の上半身を押さえつけてのニースライス狙うが、澤田は左足でラッソーを作って守る。この体勢でしばし膠着が続いた。リードしているソウザが無理をしていないせいもあるかもしれないが、澤田はここまで優勝候補相手に見事に渡り合っている。
残り4分。ソウザは左右にパスを仕掛けるが、澤田は対応。次にソウザは澤田の首を枕で取ると、横に低く腰を切ってのパスへ、ここで澤田は再び左足を旋回させ、ソウザの左脇にねじ込んでの澤田バー狙い。さらに澤田は左腕が伸びたソウザの体を仰向けに。 あわや一本かという場面だったが、ソウザは即座に体を起こして澤田のガードの中に入って難を逃れた。これで澤田にアドバンテージがさらに一つ追加。
残り2分半。ソウザは澤田のクローズドガードの中から立ち上がる。澤田はその右足を内側から抱えるものの、ソウザはバランスを保って澤田のガードを押し下げてこじあけることに成功する。さらに澤田の頭側に回るソウザだったがが、ここはインヴァーテッドで防御して戻す。この攻防でソウザがアドバンテージを獲得した。ここまでポイントは4-2でソウザがリードだが、アドバンテージは2-1でまだ澤田が勝っている。スイープ1つ取れば澤田は逆転勝利できるということだ。
残り1分半。澤田はまたしても右ハーフ&左ラッソーの得意の形を作る。勝っているソウザは重心を低くして、パスよりも上のキープを狙っている様子だ。澤田はソウザを前に引き付けてからシッティングで押し、また前に引き付けてと揺さぶりをかけるが、ソウザは左腕をマットにポストして耐える。残り20秒。ソウザの股下に体を入れた澤田は、右足にも絡んで煽るが、ソウザは最後に左足を前方にステップしてバランスをキープ。そのまま勝ち切ったのだった。
惜しくも敗れた澤田だが、3位表彰台を獲得。それ以上に、まぎれもなく世界レベルの強豪であるソウザに対して、得意の形で堂々と渡り合ったこの試合の価値は大きい。澤田バーの仕掛けからスイープを取り、さらにあわや一本の場面まで作ってみせたことは、この技が最高峰すら脅かす武器になってきている証拠だ。このパン大会をもって、澤田伸大は橋本知之、芝本幸司に続いて世界の強豪から警戒されるルースター級日本人柔術家となったといえるだろう。