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【EJJC2019】ルースター級展望。橋本、芝本&澤田──日本人がポディウムを占める夢の瞬間は訪れるのか

Hashimoto【写真】橋本知之・本命時代がブラジリアン柔術に訪れた(C) SATOSHI NARITA

15日(現地時間・火)から20日(同・日)にかけて、ポルトガルのリスボンにあるパヴィラォン・ムルチウソス・ジ・オジヴェラスにてIBJJF(国際柔術連盟)主催のヨーロピアンオープン柔術選手権が開催される。ヨーロッパのみならず、米国より入国しやすいという状況でブラジルからも強豪が参戦しやすい──この大会の見所をお届けしたい。まずは、日本人選手が3人出場し、金銀銅全メダル獲得すら期待できる最軽量ルースター級から見てみよう。
Text ISAMU HORIUCHI


優勝候補本命は橋本知之(カルペディエム)だ。昨年のパン大会で芝本幸司との日本人決勝を制し、続く世界選手権でも3位に輝いた橋本は、その後も全日本でライトフェザー級3連覇を達成、Flo Grapplingで配信のないアジア大会は欠場と我が道を突き進んできた。

さらに11月のノーギ・ワールズでもライトフェザー級に出場し、ルーカス・ピニェーロ、イアゴ・ジョルジといった世界的強豪のトップからのプレッシャーに、相手の片足をコントロールするデラヒーバを起点とする得意のオープンガードで対抗し、接戦を制してみせた。決勝のジョアオ・ミヤオ戦こそレフェリー判定で敗れたものの、ほぼ互角の戦いを演じた橋本。掴むところが少ないぶん下から相手をコントロールすることが困難となるノーギ・ルールにおいて、階級上の世界トップと互角に渡り合ったことで、柔軟な体を用いたそのガードワークの練度の高さを改めて見せつけた。

絶対王者ブルーノ・マルファシーニが昨年引退を表明し、その最大のライバルにして橋本の師であるカイオ・テハも国際舞台の第一線から遠ざかり気味の現在、橋本こそこの最軽量級において世界一にもっとも近い選手といえるだろう。2019年初戦となる本大会における彼の動きを、世界が注目することになる。

Shibamotoもう1人の優勝候補が、一昨年の本大会王者の芝本幸司(トライフォース)だ。昨年のヨーロピアンで優勝本命と目されながら準決勝で新鋭のイアゴ・ガマに競り負け3位に終わった芝本は、続くパン大会では決勝で橋本との日本人頂上対決を実現させたものの、そのガードゲームを攻略できずに惜敗。次の世界大会では準々決勝で再びガマに競り負け、またしても世界の表彰台を逃してしまった。

その後の全日本とアジア大会はきっちりと制して力を示した芝本は、今年の夏で39歳となる。第一線で戦うための残された時間を考えても、今年こそ世界制覇をとの思いはより強いはずだ。その重要な足がかりとなる本大会において、芝本は初戦を勝ち上がれば準決勝にて昨年の世界大会準優勝のホドネイ・バルボーザと戦う公算が大きい。

芝本は3年前のヨーロピアンでバルボーザとの接戦を制しているが、バルボーザは半年後のムンジアル準決勝で、直前に芝本を倒したイアゴ・ガマから一本勝ちを収めている。決勝の舞台で橋本との日本人頂上対決を再び実現させるために、芝本はまずはこの難敵を倒さなくてはならない。

Sawadaと同時に我々はもう1人、芝本✖橋本の決勝戦の実現に立ちはだからんとする日本人選手がいることも忘れてはならない。芝本の後輩にして、昨年の本大会で国際大会黒帯デビューを果たした澤田伸大(トライフォース)だ。その黒帯デビュー戦において独特の仕掛けから入る腕十字=サワダ・バーで相手を追い詰めた澤田は、世界選手権の初戦では見事にこの技で一本勝ち。次戦で絶対世界王者のブルーノ・マルファシーニに敗れたものの、世界の頂の高さを体感するというこの上ない経験を得た。

その後の全日本では同門の先輩の芝本とクローズアウト、続くアジア大会の準決勝では全日本で倒した渡邊翔平に不覚を取った澤田だが、11月のノーギ・ワールズでは決勝にて、昨年の茶帯世界王者のリヴィオ・ヒベイロを接戦の末に下して見事優勝。ノーギとはいえ、IBJJF主催大会において日本人男子初の黒帯世界王者に輝く快挙を達成した。

今回の大会、1回戦を突破すれば準決勝で橋本との対戦が濃厚な澤田。初戦を確実に勝利してメダルを確保するとともに、昨年のマルファシーニ戦に続き、国際的大舞台で世界最高峰に挑む姿を見てみたい。ここで橋本を倒し、先輩・芝本とクローズアウトを果たすことこそ、今大会の澤田の最大の目標だろう。

橋本は早々にロンドン入りし、欧州で調整中。対して芝本と澤田は試合の前々日に現地入りするなど、日本で創っていく。対照的なアプローチをとる日本人対決が連続して実現するのか期待が高まる。

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