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【Special】月刊、青木真也のこの一番:12月─その弐─ライアン・ホール✖BJ・ペン~02~「リスペクト」

Hall vs BJ【写真】ヒールフックでタップしたBJ。ショッキングだった (C)Zuffa LLC/Getty Images

過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。

背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ12月の一番、第2弾は28日に開催されたUFC232からライアン・ホール×BJ・ペンの一戦を語らう──後編。

BJ・ペンとライアン・ホールの試合を組む、UFCの有り方に通じる青木のBJへのリスペクトは不変だ。

<青木真也のライアン・ホール✖BJ・ペン論Part.01はコチラから>


──これだけ時を経ても期待感がある。だからこそ、この負け方は残酷だったかと。

「辛いですよね。それを言うと……川尻にも思いましたよね。勝ちに拘っていても、どうしてもパフォーマンスは落ちている。それってファン目線の期待値なんですけど、ファン目線というのは行き着くところは那須川天心とフロイド・メイウェザーにもつながって来るのかと。究極的、そういう見方の行き着く先は。

だからBJが出るから、BJならって未だに思ってしまうところはチョット反省しないといけないですね(苦笑)」

──それはこれまでの歴史を見てきたということですよね。

「ねぇ、それは……やっぱりBJとメイウェザーは違いますけど、リテラシーがあり過ぎて見えなくなってくるというのはありますね」

──BJ・ペン✖ライアン・ホールという試合が、UFCの2018年掉尾を飾るビッグイベントで組まれた。ジェネラルが求める大会で、PPVカードではなかったとはいえMMAリテラシーの高いファンが思い入れを持てるカードを持ってきました。

「マッチアップのセンスは天才的です。こういうマッチアップは試合が跳ねなくても良い。お互いへのリスペクト、プロモーション側の選手へのリスペクトが感じられるカードで。でも、結果的に跳ねた。それでも別にライアン・ホールがチャンピオンシップに絡むわけでもないでしょうし。

それなのにライアン・ホールがBJ・ペンにヒールフックで勝ったということで、一般のファンにヒールフックが浸透するかもしれない。幻想が肥大化するフィニッシュでした。いやぁ、でもチャド・メンデスが負けたりUFCは代謝がありますね」

──チャド・メンデスの引退は驚きました。ベラトールに行けばフェザー級チャンピオンになれるだろうし。まだ、MMAで金儲けができるかと。

「それだけ疲弊するんですよ。UFCの駒であるということは。チャド・メンデスがここで引退かというのは、思いますよね。深いですよ、BJの負けもチャド・メンデスの引退も。その深さを感じさせられることができるのは、UFCがずっと続けているからですよね。それは思っちゃいます」

──PRIDEが名前を国内に残し、DREAMでも戦極でもなく運営陣が変わってもPRIDEであり続けたら、日本の格闘技も変わっていたかもしれない。たらればでしかないですが。

「ただPRIDEもRIZINも、MMAに対して拘りはないですよ。格闘技への拘りはない。矢地(祐介)をあそこでジェニー・ケースと当てるかって……」

──青木選手、スイマセン。MMAPLANETでは国内のリング格闘技は掲載していないので、その話題はこれぐらいにしてもらっても良いでしょうか。そこだけ話題にするのはアンフェアなので。でも、自分の高校生や中学生の娘と同じクラスの男の子が大晦日はRIZINを視たと言っているのは、良かったと思いました。

「あぁ、そうですね。MMAPLANETは触っていないですしね。でも、RIZINに格闘技、選手への愛はあるのかっていうのは想いますよね」

──凄く愛のある人がいるのは分かります。と同時に、その意見も否定できないです……とにかく、ここまでにしましょう。

「ハイ、BJですね。BJは……これでどこに終着点を置くのか、分からなくなった。そういう試合になったと思います」

──ここで特にプッシュされたわけでもなく、BJがフラッと試合に出て来るわけですし。

「ハイ。だからこそ、どこで終わるのかと」

──ベラトールに行かせないためなのかと深読みしてしまいました。

「えっ、そういうこともあるんですか」

──これは私のあくまでも個人的な考えですが、UFCからするとベラトールにレジェンドほど持っていかれたくないだろうと思うんです。種を蒔き、水をやり、花を咲かせて実も取れた。でも、そこには莫大な投資をしてきた。いくら熟れすぎていても、レジェンドを持っていかれると歴史を奪われるようなモノではないでしょうか。

「あぁ、そういう見方もできるんですね。ベラトールは歴史を買っているんだ。そういう意味でBJは大切なんですね。そうなるとエディ・アルバレスとかデメトリウス・ジョンソンをONEに持っていかれるのはどうなると思います?」

──レジェンドはTUFシーズン1までの選手ではないかと。

「UFCを創ってきたファイターだっ!!。マット・ヒューズ、フォレスト・グリフィン、ディエゴ・サンチェスにケニー・フロリアン……とエディは違うということですね」

──ではないでしょうか。人気はあっても歴史ではない。

「あぁ、それは分かりやすい見方ですね。流行る前と流行った後は違うと。BJがそうなのは、でも嬉しいですね。クインテットとかBJのグラップリングマッチは見てみたいですし」

──この試合でそうなった感は否めないです。

「でも、見たいでしょう!!」

──『BJならって未だに思ってしまう。そこはチョット反省しないといけないです』という先ほどの言葉をもはや忘れていないですか(笑)。

「いやぁ、だってBJですよ。すぐに変われないですよ(笑)。BJ・ペンなんだから」

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