【Special】月刊、青木真也のこの一番:11月─その弐─イェン・シャオナン✖近藤朱里→中国の話
【写真】シャオナン✖朱里というより、中国の話 (C)Zuffa LLC/Getty Images
過去1カ月に行われたMMAの試合から青木真也が気になった試合をピックアップして語る当企画。
背景、技術、格闘技観──青木のMMA論で深く、そして広くMMAを愉しみたい。そんな青木が選んだ11月の一番、第2弾は24日に開催されたUFN141からイェン・シャオンナ×近藤朱里の一戦から、中国のMMAを語らおう。
──11月の青木真也が選ぶ、この一番。では2試合目は?
「UFCの北京大会、イェン・シャオナン✖朱里の試合ですね。藤野(恵実)さんが頭が当たってノーコンテストだった相手ですよね」
──ハイ、ROAD FCの中国大会で戦いました。
「まぁ、中国は強いですよ。それもONEのフィリピン推しじゃないですけど、国としての強さ……市場としての強さを感じましたよね。そのなかで朱里は組みとか寝技でなく、自分の得意なところで負けた。チャイナは打撃が強い」
──日本国内の競い合いの場と中国の違い、層の厚さが違うというのを打撃でシャオナンが打ち勝つシーンに見て取れたような気がしました。
「中国の女子はスポーツが全般的に強いわけだし。別の試合ですが、ジャン・ウェイリがジェシカ・アギラーを殴って、腕十字極めるなんてえげつないですよ。この選手は藤野さんに勝っているんですね。
どついて、ひっかけて、またどついて腕十字。ファイトなんですよね。アレをジェシカにやってしまう」
──その後、出場したウー・ヤナンもローレン・ミューラーを腕十字で下しました。
「男でもリー・ジンリャンとソン・ドーヤンの2人も強かった。チャイナは市場の後押しがあるから、中国人を育てるマッチアップをUFCもできている。当て馬で呼ばれるのか、当て馬を呼んでもらえるのかっていう差は大きいと思いますよ。上の方はやや強めの相手に勝っているわけだし」
──日本人がUFC JAPANで勝ち切れるのかということですね。
「そうです。で、あのカードで大会が成り立っている。それとUFC凄いのが、ONEが苦戦しロードFCやレベルFCは立ち行かなくなっている中国であれだけの大会を開き、上海だけでなく北京でイベントをやってしまう。アレって、何なんでしょうね。あの規模でトレーニングセンター(パフォーマンス・インスティチュート・センター)を作るって……中国は強くなってきますよねぇ」
──例えばONEにもそういう中国勢が流れてくるのか。さらに秋山成勲選手の導入で、韓国市場が開かれて韓国人ファイターも参入が始まると、いよいよ日本は追い込まれます。
「ONEは中国とは違い、フィリピンというUFCが掘ることができなかった国を掘りおこしましたしね。怖いですね。秋山契約からの韓国というのは、チャトリはさすがです。ロードが耕した市場に入っていく。他が耕したところに入っていけるのは、投資家の人たちがよくやる手法です」
──UFCの日本に関しては、焼き畑農業でした。
「ハイ。焼き畑農業でしたね。日本に関しては、色々なところが市場を狙ってしくった。でも、本当に分からないですよね……あれだけ勢いのあったロードFCが、これだけ縮小化している。それってONEだって打ち上げ花火にならないか、そういうことすら考えないといけない。
いずれにしてもUFCが中国でやっていること、ONEがアジアでやったこと、ロードFCが韓国でやったことは、それぞれの国の選手を強くした。対して日本はどうなのか……ということを考えても、無視も軽視もできないはずです。
ただですね……」
──ただ、何でしょうか。
「僕自身に関しては違った見方をしています。その点でいえば中国やフィリピン、韓国がそうなってくると自分へのリスペクト、青木真也への客が増えると思っちゃったんですよね(笑)。悪いよねぇ、エヘヘヘ」
──悪いですねぇ(笑)。
「2012年からONEでずっとやっていて、東南アジアには定着している。韓国もプロ柔術で戦った。中国はプロレスのコーチで呼ばれていますしね。そういう点で、彼らと一緒に定着してきたのはあるから」
──そのポジションがあるからこそ、チャトリ・シットヨートンCEOの次の一手は……。
「『エディ・アルバレスと戦ってくれ』、『エェーみたいなな』(笑)。分かる……ありそうですよね。まぁ、そうなる覚悟はしていますよ。
あっ、それと全然関係ないでけど、エウベウ・バーンズがカザフスタンで開催されるレガシーかタイタンFCに出場するんですよね」
──タイタンFCですね。ラファエフ・フィジエフも出る大会です。
「レガシーとタイタンって、なんか被っちゃって。きっと米国で修斗とパンクラスが被るようなモンなんでしょうね(笑)」