【Pancrase298】ヴィヴィ戦の敗北から、1日を経て藤野恵実─02─「格闘技を辞めたいという気持ちはない」
【写真】この大会は彼女の言う通り、祭り。藤野恵実祭りだった(C)PANCRASE
5日(日)、東京都台東区の新木場スタジオコーストで開催されたPancrase298のメインで組まれたストロー級クイーン・オブ・パンクラシスト王座決定戦でヴィヴィアニ・アロージョに敗れた藤野恵実インタビュー後編。
敗北から1日を経て、藤野は今後については考えないでいたという。その一方で、なぜ負けたのかを考えてしまう。誰よりも今大会を盛りあげ、絶対的な存在感を醸し出していた彼女は敗北も、これからも整理がついていない。
だからこそ、ここで聞かれた話は彼女の本能が弾き出した言葉といえる。
<藤野恵実インタビューPart.01はコチラから>
──結果は敗北でしたが、「BBAなめんよ」という言葉で藤野選手はしっかりとパンクラスの大会を盛り上げることができました。現状、日本で戦っている選手で自分の出る大会の開催意義を高めようと努力した選手は、北岡選手ぐらいしか頭になかったのですが、そこに藤野選手が続きました。
「格闘技をやる、その深みにハマればハマるほど北岡さんのこと凄いなって思うようになってきたんです。最初の頃は何をやっているのか分かっていなかったんですけど。周囲の注意を引く言動っていうのは、その舞台を創ってくださっている人たちと一緒に何かを創り上げようとしているというのか……。
やればやるほど、そういう北岡さんの凄さが理解できてきたというか……。でも、不思議な現象でしたね。祭りみたいになっていって」
──それだけ藤野選手が、周囲を巻き込んで盛り上げたということです。
「私も良く分かっていないところで、話が大きくなっていって怖かったです。でも、完成させることができなかったですから」
──そこに拘るからこその魅力ではないでしょうか。この試合までの日々を振り返り、やって良かったとは思えるのではないですか。
「やらなきゃ良かったと思った試合は、これまで一度としてないです。ただし祭りは中途半端で、担いだ神輿を運びきることができないというような……。もう4度目ですからね」
──まだ僅か1日ですが、今後の進路というモノを考えたりしましたか。
「う~ん、まだあまり何も考えていないです。ただ、昨日は珍しく津田が慰めてくれて、『納得いくまでやれば良い』みたいな風に言ってきて。
私、試合に負けて泣くこともほとんどなくて……。2008年から2010年まで4連敗し、そこでキックに出て16歳の魅津希ちゃんに負けたときは『もう辞めよう』って、思い切り泣いていたのですが、それ以来泣くこともなくなってしまって。
それが昨日は津田が慰めてくれたことで、涙が出ました……。あそこで張っていた気持ちが切れたようで。ただ、私は弱くなっているのかを津田に尋ねると、『弱くはなっていない。相手の作戦とかもあったし、弱くなっていたら言って辞めさせる』って」
──弱くなったら辞める。つまり、強くなれないなら辞めるというのであれば、キャリアを積んできた選手は自分が戦おうとしている場所にいる選手の成長と比較しないといけないと思います。誰もが強くなっている。その成果を試合で発揮したい。その発揮できる相手は、もともと目指していたレベルなのかどうか。
「あの日のUFCで(※ヴィヴィ戦以前、最後に藤野が敗北を喫した相手)ジャン・ウェイリは勝っていますしね。」
──つまりはそういうことかと。勝敗だけを切り取ってみると。
「そうですね。当然の結果として勝ち負けはついて回るものなので。私は技術的にも負けていたので、結果はもう当たり前で。ただ、最後までやりたかったという悔しさだけは残っていたんです」
──技術的という部分であれば、下になった時に手首掴んで殴られないようにしたり、必死でカンヌキを取っていた。あれはヴィヴィの気持ちを楽にしたかと。
「パウンドで殴られるのが嫌でしたからね」
──ハイ。だからこそ、ヴィヴィは寝技に持ち込めば、こんなに嫌なんだという風に、心の拠り所を手にすることができたのではないかと。
「あぁ、そっちですかぁ。そういう考えてかたもできるんですね。私は目をあれ以上、攻撃されたくない気持ちになっていたので、パウンドでのダメージを負いたくなかった」
──もちろん結果論です。スクランブルに持ち込めばバックを取られていたかもしれないし、カンヌキにしていなければヒジを落とされまくったかもしれない。ただ、固めて来るんだというのは柔術家のヴィヴィにとって、スタンド以外の選択はしやすくなったかも、と。
「深いですね、MMAって。ヴィヴィはマウントを取るのも、メチャクチャ早かったですしね。アレ? もうマウント取られているわって。アハハハハ」
──アハハハではなく、取らさないようにしないと(苦笑)。
「ヴィヴィの寝技に付き合わないとは決めていたんですが、持ち込まれた時にどうするのかってことですよね。練習だとグラップリングなので、パンチがないから動けるんです。殴られる心配がないので。殺気を持ったパウンドって、実は練習では存在しないじゃないですか。ガチの打撃もグラップリングもあるけど、ガチのパウンドはない」
──厳しい言い方をすると、それは世界共通です。
「そういうことなんですよね……」
──とにかく、今は体のことを考えてじっくりとこれからのことを考えてもらえればと……。
「ホント、今はどこに行くのかは考えられないです。でも格闘技を辞めたいという気持ちはなくて。どうしたら勝てたのかとか、そういうことばかり考えてしまって。津田には『もう考えるな』って言われました」
──スイマセン、そのなかで考えさせるようなことばかり言ってしまって……。
「いえ、それは全然構わないです。だって気になってしまっているので……。これからどうするのかは……ここまでして続けているのは、何かが壊れていることは自分でも認識していますし……」
──藤野選手の人生ですから。最低限の体のダメージは考慮してくださいとしか言えないです。
「壊れていないと、こんなことやっていられないですよ(笑)。でも、玉砕するのではなくて、これは結果を残す競技だから。勝てば官軍で。とにかく、自分のポンコツ具合には全く納得できていないです。
やりたいことを潰されたストレス。疲れてもいない。でも、それをさせてもらえなかった……。根性勝負になるようなことは避けられるようになるでしょうね、これからも。外国人選手は徹し切っていると思います。勝つために当然のことをしてくる。
あぁ、これからどうしようかな。またROAD FCで戦えるかなぁ……もうパンクラスでは仕事をしましたしね」
──完全に次はどうしようかという方向になっていませんか。
「なんか話を聞いてもらっていたら、辞めたくないって思った!! 嫌だもん、話題だけ振って負けたままで終わるって。このままで終われるかって」
──だからこそ、体のこともあるのでしっかりと考えてください。
「ハイ。戦い方、考えます。クレバーにならないといけない。中途半端でした。もっと振り切りますッ!!」
──戦い方ですか、考えるのは……。