【Pancrase298】ヴィヴィアニとストロー級QOPの座を争う藤野恵実─01─「スタミナと気持ちが課題」
【写真】会見などでは実はあがってしまう性質の藤野だが、この日はかなりリラックスしているようにも感じられた。取材慣れしてきたか(笑) (C)MMAPLANET
5日(日)、東京都台東区の新木場スタジオコーストで開催されるPancrase298で、藤野恵実がストロー級クイーン・オブ・パンクラシスト王座を賭けて、ヴィヴィアニ・アロージョと対戦する。
「BBAなめんな」の言葉で、注目度が一気に増した藤野をAmeba TVが制作するドキュメンタリー番組= ONE DAY が追った。
昨年10月に三浦彩佳に圧勝したヴィヴィとの対戦を前にした藤野の心境と試合に挑む覚悟をMMAPLANETでは尋ねた。
──ヴィヴィアニ・アロージョが日本で戦った唯一の試合で、藤野選手は三浦彩佳選手のセコンドに就いていました。三浦選手の敗因は何だったと感じていましたか。
「それは三浦の圧倒的な打撃力の無さがあると思います。正面にいて、ガードをしないでパンチを被弾し真っ直ぐ下がる。それと寝技で亀になってしまうので」
──ヴィヴィアニは三浦選手との試合だけでは分からない部分があります。
「三浦との試合だけでは分からない部分はありますが、どう見ても弱くはない。ただ打撃が強いかといえば、癖のあるストライキングです。自分のことは棚に置いて指摘すると、ワキは開いていますし、アゴも上がってきます。ただ、あの試合から進歩もしているはずです。攻め疲れかと思うのですが、2分を越えた当たりからかなりバテていましたしね。戦績を見てもほぼ1Rで終わっていますし」
──他の試合映像をチェックすると、ヴィヴィが本当に強いのは寝技だと思います。
「それは思います。三浦の試合だけでも、そうですし。打撃は意外と穴が多いけど、寝たら超強い。手足も長くて対処が上手い。誰もが掛かる三浦の袈裟固めに全く掛からなかったです。
立っている時の消耗は結構激しかったのが、寝てからは疲れていない。休みながら流して、自分の有利なポジションにいる。だからグラップリング勝負は、5分5Rを考えるとこっちが消耗するので立ちで戦いたいですね」
──それでもグラウンドで、下になるケースも十分に考えられます。寝技で不利な状況になった場合のことは考えていますか。
「全てが上手くいくとは勿論、考えていないです。ミスをするラウンドもあるのでしょうがない。極められなければ試合は終わらないですし、亀にならないようにすることですね。不利な状態でも、徹底的にダメージを負わないようにする。そのラウンドを捨てるぐらいの考えでいます」
──三浦選手は固まってしまった。動きが止まった相手に対するヴィヴィの柔術は他の試合を見ても素晴らしいものがあります。
「だから、打撃とグラップリングはあの試合でも見ることができたので、あとはテイクダウン能力がどこまでなのか」
──クリンチで詰めて、足を取りに行ったりはしますが、離れた位置からレスリング的なテイクダウンを狙うシーンは少ないですよね。
「ケージレスリングですよね」
──昔の柔術家のボディロックテイクダウンというのか……。
「くっついて四つから組んでくる……それは自分もやろうと思っていることなので、やってみないとどれだけ強いか分からないですけど、自分が押し込む展開を作るべきだと思っています。押し込んでいれば、倒されることもないでしょうし」
──つまり打撃との連係が大切になるということですね。
「下がったら詰められるので、自分が詰める。次は面白い試合をしようなんて考えていないので、自分からずっとケージに詰めて、25分間戦い切るしかないと思っています」
──結果的に根性を見せてもらっているので、藤野選手の試合は面白い、面白くないでは語れないのでないかと(笑)。
「それでも面白い試合をしたい。一本を取りたいとは考えているんですよぉ(笑)。でも、次はそういうことは全く思っていないです。詰めてずっとケージで、自分が中を取っているという形で戦いたいです」
──となると、差し替えられてリーチの長さを利したクラッチを組まれると怖いですね。
「差し合いでもすぐに戻せる態勢にしないといけないです」
──差し合いに集中し過ぎて重心が高くなった時、そこがヴィヴィの狙い目かと。ケージを背負って、相手を消耗させるというのもMMAの戦い方の一つではあります。
「そういう部分では、ケージは使い慣れてはいます。ケージを使って戦うのが好きなので、危ないとすぐに立つ。抑えつけられないことが大切かと思います」
──5R戦、消耗戦になりそうですね。
「3Rと5Rでは別競技ですよね」
──シャロン・ジェイコブセン戦の根性ファイトが4Rと5Rがあってもできるのか。
「こないだの佐藤天君も、4Rでガクンと動きが落ちましたしね……」
──藤野選手への期待、そして安心して見ることができるのはスタミナ切れや気持ち切れがないということです。
「そこを本人は一番心配しています。本当に……。スタミナと気持ちが一番の課題です。ダメージとかはもうしょうがない。スタミナと気持ちが切れたら、自分が積み上げてきた勝負で負けることになるので。クリーンヒットを貰うとか、テクニックはもうしょうがなくはないけど、まぁしょうがないという部分は多々あるので」
──そこの部分を支えているのが津田さんだと思っています。MMAは上からバシッと抑える指導者というのは、実はあまりいません。そのなかで津田(勝憲)さんがいる強さ、どれだけボロンチョに言われても人間関係が崩れない。そこがあるかと。
「そういうことを普段から言われ過ぎて、記憶に残らないです(笑)」
──藤野選手は久保(豊喜WKネットワーク代表)社長だとか、体育会系で育ってきた。
「ホント、そうですよね(苦笑)。津田には怒られて過ぎて、『死ね』って思ったことは何度もありますよ。最近はそこまで言われなくなりましたけど、少しでもスタミナが切れて動けなくなると『帰れ』って言われて」
──そのなかで津田さんが、SNSで送り出す者の気持ちを書かれていて。あれは感動しました。
「感動というか……納得しました。私がやりたくて、私が目指しているモノのためなんだから、自分がやり切るだけなんだって。今は夫婦というよりも、選手とトレーナーの時間しかほぼないですし(苦笑)。
ムカつくから、『こいつが納得する試合を絶対にしてやる』とは思いますね」
<この項、続く>
■Pancrase298対戦カード
<ストロー級QOP王座決定戦/5分5R>
ヴィヴィアニ・アロージョ(ブラジル)
藤野恵実(日本)
<フェザー級/5分3R>
マイク・グランディ(英国)
田中半蔵(日本)
<ライト級/5分3R>
アキラ(日本)
アルセン・バティロフ(ロシア)
<ストロー級/5分3R>
八田亮(日本)
マーカス・アマラウ(ブラジル)
<ミドル級/3分3R>
新村優貴(日本)
林源平(日本)
<フライ級/5分3R>
荻窪祐輔(日本)
秋葉太樹(ロシア)
<女子アトム級/5分3R>
ローマ・ルックブンミー(タイ)
華DATE(日本)
<フェザー級/3分3R>
牛久絢太郎(日本)
ユータ&ロック(日本)
<フェザー級/5分3R>
内村洋次郎(日本)
ヴィトル・トファネリ(ブラジル)
<ウェルター級/3分3R>
手塚裕之(日本)
KAZZ(日本)
<ストロー級/3分3R>
高島俊哉(日本)
前山哲平(日本)
<フライ級/3分3R>
安永有希(日本)
中村龍之(日本)
<フェザー級/3分3R>
渡辺謙明(日本)
櫻井裕康(日本)
<フライ級/3分3R>
渡辺竜也(日本)
三澤陽平(日本)
<フライ級/3分3R>
水谷健人(日本)
池田一歩(日本)
<ストロー級/3分3R>
リトル(日本)
宮澤雄大(日本)