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【Grandslam07】佐藤天。濱岸正幸戦を受けた理由──「迷っていた自分が腹立たしく感じて」

Takashi Sato【写真】余りの熱気ですぐにカメラのレンズが曇ってしまうトライブでのプロ練習。このような環境に佐藤は日々、身を置いている(C)MMAPLANET

25日(日)、東京都江東区のディファ有明で開催されるGrandslam07のメインで、佐藤天が濱岸正幸と対戦する。

(C)Pancrase

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昨年12月に村山暁洋をKOで破り、ウェルター級キング・オブ・パンクラシストへ一直線と思われた佐藤が、このタイミングでグランドスラム出場は意外過ぎた。

パンクラスでチャンピオン道をまっしぐらという状況の佐藤は、なぜグランドスラム参戦を決め濱岸との対戦を決めたのか。それは──キャリアアップには勝利が全てという状況をしっかりと理解したうえで、佐藤の志の高さが伝わってくる決断だった。


──濱岸戦まで10日ほどになりました。このタイミングでグランドスラムで濱岸選手と戦うという話が挙がってきた時、どのように思いましたか。

「最初は戸惑いました。戸惑ったというか、次はパンクラスでタイトルマッチになるという頭しかなかったので、この話を貰った時は正直、かなり迷いました」

──パンクラスのウェルター級タイトル戦という話は、どこまで煮詰まっていたのでしょうか。

「次はそうなりますということで、時期などはまだ決まっていませんでした。対戦相手のこともあるので、自分自身でも5月移行かなとは思っていましたが、それだと試合間隔が半年間空いてしまう。長南(亮)さんとも話をして、それだけ試合がないのは良くないのと、ここで誰と戦っても負けるようだとUFCに行っても通用しないということを言っていただきました」

──長南さんの言葉で、この試合を受ける気持ちになった?

「そこは自分でじっくりと考えました。実は長南さんと話した直後にインフルエンザになり、ゆっくり考える時間ができたんです(笑)」

──なんと(笑)。

「その間、自分で考えた結果ですね。『俺って相手や試合を選べる立場にいつなったんだ?』と自問自答し、『なんで、守りに入っているんだ』と思うようになりました。なんか、迷っていた自分が腹立たしく感じて。自分はチャレンジする立場だし、何でも挑戦だという気持ちで試合を受けることにしました」

──プロモーションあっての選手であり、選手あってのプロモーションでもあります。そういうなかで暗中模索するファイターにも、自分たちにも選択権があることを佐藤選手は示したかと思います。しかし、よくこのリスクの高い試合を受けましたね。

「格闘家が、そういうしがらみのようなことを考えているって格好良くないですよね(笑)。だから、この試合を受けて良かったと思っています。

これからの格闘家人生を考えると、この時点でタイトル戦だからとか考えて小さく纏まりそうになったことは反省しています」

──なるほど、それにしても格闘技です。試合はどのようなことも起こりえます。

「受けると決めた時から、もう気持ちを作ることができているので、そこは考えてもしょうがないです。そういうところは自分でも、かなり都合の良い頭の構造をしていると思います(笑)」

──ハハハ。それでも何かあるとパンクラスのタイトル戦に影響が出て、UFC行きにも関係してくるということはもう考えないですか。

「ぼんやりとはそういうことも頭には残っていたのですが、試合まで1カ月も切ると、もう濱岸選手のことしか考えなくなっていました。実はタイトル戦というモノがあるなかで、他の試合をすることに対し、どっちつかずになるかもしれないという気持ちあり、受けるかどうかを悩んでいたのですが、自分でも意外に感じているほど試合以外のことは考えなくなりました」

──素晴らしい割り切り感ですね。

「さっきも言ったように、かなり都合の良い頭の仕組みのようです(笑)」

──パンクラス王者~UFCという青写真のなかに濱岸選手は視野に入っていなかったと思いますが。

「それはそうですね。やはりパンクラスで戦っている選手とやることを想定していたので。ただ、それも今後のことを考えると、それこそ海外の選手と試合をする場合は試合が決まって初めて映像を見るなんてこともあるでしょうし。パンクラスと違う進行のイベントで戦うことも、絶対に良い経験になります。なので、そういうことも全然気にしていないです」

──では、その濱岸選手の印象を教えてください。

「絶対に諦めない。自分のできることをやり抜く。そういう選手だと思います」

──恐らくは、何としても組みに来るかと。

「ハイ。ですから自分も打撃だけでなく、組み技もグラウンドも全てを出して勝つつもりでいます。組みでも勝てるように練習していますし。何よりも、まずは気持ちの部分で戦って勝てるようにしないと技術はついてこないですから。

Sato練習でも厳しい状況になることを想定して、そのなかで良い勝ち方ができれば良いといつも思ってやっています。良い勝ち方を狙っているわけではなく、自分のやってきたことを全部出して結果的に良い内容だったら……という感じですから、とにかく気持ちで負けないことが大切です。

ここで濱岸選手の気持ち負けているようでは、それも先々の問題になります」

──ハードな練習をして、試合はスカッと勝つのがベストだと思いますが、しっかりと組みのある試合も今後のために必要だと思うようなところはありますか。

「それは絶対です。試合と練習では感じ方も違いますし。色々な経験を試合でしたいとも思っています」

──濱岸選手は負けて失うモノがない状態ですし、ケガをしようが全てを賭けて戦うかと思われます。

「そういう相手は怖いです。でも、大丈夫です。自分も無傷で勝てると思っていないですし、それも結果的に無傷だったら良いという話で。おきに行くと良いことはないです。

常に崖っぷちだと思って戦っていますし、そういう濱岸選手だからこそ、逆にしっかりと勝たなければいけないと思っています」

──では、最後にこの一戦への意気込みを改めてお願いします。

「メインで試合をさせていただくということで、結果的に良い試合で締めて、良い大会だったとファンに思ってもらえるようにしたいなと思います」

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