【JBJJF】教えて、ハマジーニョ!! 韓国国際をJBJJFが主催する理由&韓国柔術界の現状
【写真】「made in Japanのブラジリアン柔術大会」──良い響きだ (C)TAKAO MATSUI
3日(日・現地時間)、韓国・ソウルのチャムシル学生体育館(ハクセン・チェユクカン)において第1回となるコリア・インターナショナル柔術チャンピオンシップ2017が開催される。同選手権は、日本ブラジリアン柔術連盟(JBJJF)が海外で大会を主催するという新しい試みとなる。JBJJFの浜島邦明事務局長に、韓国で大会を開催することになった経緯と今後の展望について語ってもらった。
Text by Takao Matsui
――JBJJFが韓国で大会を主催するそうですね。
「コリア・インターナショナル……、日本名にすると韓国国際柔術選手権2017を開催することになりました」
――韓国の大会の主催がJBJJFということに、まず驚きました。
「実際に現地で動いてもらうのは韓国のスタッフになりますが、運営の指揮をするのは僕を含めた日本のスタッフになります」
――韓国の関係者から依頼を受けることになった経緯を教えてもらえますか。
「これまで僕自身が、5年前くらいから韓国の大会を何度かお手伝いさせてもらっていまして、以前から韓国と日本のコラボレーションをしたいというお話はあったんです。システム的なものは、日本の組織の方が進んでいるという評価をいただいておりましたので」
――例えば、日韓ではどのようなことが違うわけですか。
「具体的に言えば、日本ではエントリー料がクレジットカード決算でできるようにしていますが、韓国ではまだ構築されていないとか。あとは、支払いやキャンセル料についての問題が結構あるようです。当日、ケガをして出られないことを理由にエントリー料の返金を請求されたり、会場で混乱することもあると聞いています」
――キャンセルについては、規定がしっかりとあるわけですよね。
「日本では選手の皆様に、それを順守してもらっています。韓国にもあるはずなんですけど、徹底できていないようですね。そうした細かい取り決めを学ぶという意味でも、世界基準に基づいた運営をしているJBJJFに、韓国側が任せてみたかったのかもしれません。
日本で開催しているアジア選手権は国際連盟のIBJJF主催で日本が運営する形で開催していますし、ジャパニーズナショナルの実施、ルールセミナーを定期的に年2回行うなど、これまで実績を積んできたことが評価につながっているのだと思います」
――他に日韓の違いはありますか。
「着(ギ)ですかね。なぜか韓国の選手は、国際基準よりも道着が小さいんです。知り合いの選手に聞くと、最初にその小さい道着が広まってしまったことが影響しているようですが、道着が小さいと大きい選手に比べて有利になりますので、これは公式戦として認めるわけにはいきません」
――日本でも、試合前にチェッカーで道着の幅を測っていますね。
「それが世界のスタンダードです。日本でも昔は測定の際、強引に道着を引っ張って規定の長さに届かせていた時代もありましたが、それはIBJJFに厳しく指導を受けました。韓国国内では、まだその小さい道着を容認されている大会もあるようです」
――もしも小さい道着を着用してきたら、どうなるのでしょうか。
「替えてもらうしかありません。IBJJFの認可を受けているJBJJFが、そのルールを破ることはできません」
――JBJJFはIBJJFが認可した組織ですが、韓国の現状は?
「KBJJFという組織はありますが、まだ選手登録などの、連盟として組織が動いていないと聞いております。韓国だけではなく、アジアでIBJJFに認可され連盟として選手・団体登録や、ルール整備などをしている国は日本だけですね。
理由としては日本が柔術の発祥の国ということ、柔道やMMAをはじめとした格闘技が盛んだったこと、そして中井会長を始めとした沢山の日本人が、まだIBJJFが出来る前からブラジルに渡り試合に参加したり、交流したことが認められているのかもしれません」
――韓国でのブラジリアン柔術人気は?
「かなり人気度は高いです。韓国は、日本の国土の4分の1で人口は半分くらいです。それにもかかわらず、柔術の競技人口は日本と同じくらいだと聞いています。その数字だけでも、日本の倍以上の勢いがあるように感じます。将来性を考えると、かなりの発展が期待できますね。
問題は、いわゆる団体数が多いことでしょう。大会の開催数もかなり多いですし、各道場単位で、それぞれの団体があるようなイメージのようです」
――日本のように大きな組織には、まとまっていないのですね。
「僕が認識する限りでは、そのようです。日本は幸いにも、中井祐樹会長のような世界で有名な競技者がいましたからJBJJFとして発展しましたが、韓国はそういう象徴的な存在がいないようです。そこも日本との大きな違いでしょうね。韓国は黒帯の選手が少ないので、これから増えていけば、少しずつ変わって行くように思います」
――韓国国際のエントリーを見ましたが、青帯が飛び抜けて多いですね。
「そうなんです。青帯、白帯が多いですね。韓国は、ちょうど10年前の日本のような状況といっても良いと思います。彼らが成長して帯を上げていけば、黒帯がたくさん出てくるのではないでしょうか。僕は、そこに韓国の可能性を感じています」
――柔術人気が高い理由を浜島事務局長は、どのように考えていますか。
「韓国の選手に聞くと、子どもとダイエット目的の一般の方が増えているそうです。そこは日本と同じで、敷居の低さがあると思います。BIGBANGのメンバーであるV.I(韓国名:スンリ)さんがブラジリアン柔術の大会に出場して話題になったり、有名人がブラジリアン柔術を愛好している状況は、日本と似ています」
――日本の選手が出場してくれれば、面白かったのですが。
「もう少し早く告知できれば良かったのですけど、急に決まったことと、どのような大会になるのかも含めて手探り状態ですから。これから韓国が発展していけば、日本から出場する選手が増えてくれると信じています。ブラジリアン柔術の特徴である敷居の低さから考えても、観光も兼ねて日本の選手がエントリーできると思いますので、韓国で活躍する日本人の姿を見たいですね」
――今後も、継続して開催されていくのでしょうか。
「終わって見なければ分かりませんが、僕はそのつもりで動いています。まだ世界選手権のポイントがつくわけではないので、将来的にはIBJJFにバトンタッチしてスケールアップしてくれるのが理想です。その前に我々がお手伝いする感覚でいます。
あとは今後の展望としては韓国だけではなく、JBJJFに主催してほしいという要望が海外から届いていますので、今回を第一弾にしたいと思います。メイド・イン・ジャパンのブラジリアン柔術の大会が、評価を受けているのは素直に嬉しいです」