【写真】ギアが巧くつながった。そんな印象を残した松嶋の粕谷戦だった (C)MMAPLANET

20日（日）、東京都江東区のディファ有明で開催されたPancrase289で、UFC還りの粕谷優介に判定勝ちを収めた松嶋こよみ。

パンクラスイズム横浜に所属ジムを変え、臨んだ初戦ではいきなりバックマウントを奪取するピンチから試合がスタートした。

ここを凌ぎきった松嶋は良い意味でのガムシャラな動きがリスク管理のうえで成り立っており、また空手、空手していないなかで空手の打撃が出て、同時にテイクダウンにも移行できていた。

キャリア・ベストバウトといっても良いタフマッチでの逆転&快勝を松嶋本人がどのように捉えているのか。大会終了後に控室で彼の話を訊きに行くと、松嶋の方から自身の動きの感想を求めてきた。

「どうでしたか?」

──初回のピンチをしのいだ後は、これまでの強引さがアグレッシブという印象に変わりました。リスクを考えて、自分のペースで戦おうとしていたような。空手の技もレスリングの技も、以前よりスムーズに、そして融合して出せていたように映りました。

「良かったです（笑）。自分的には練習の時の方が動きは良いのはしょうがないとしても、1Rにバックを取られたのは全く反省するだけなのですが……。今日の試合で負けたら、もうUFCへ行くのは諦めようと思っていました。それもあって、バックを取られた展開を耐えることができたかと。パンクラスイズムに移籍して、手に出来た大きな成長だと思います」

──バックを取られた直後に自陣に移動したのは?

「北岡さんが『こっちに来い』と言っているのが聞こえたので。粕谷選手はあの展開が強い選手ですし、当然焦りはありましたけど、組んだ時の力が普段練習している選手の方が、強いと感じることができたんです。それで精神的に楽になれました」

──バックを許すことになったきっかけは、首投げの失敗でした。

「組んだ瞬間に行けるって思ったのですが、そうは巧く行かなくて……」

──あの時点では、あまりリスクを考えていない攻撃だった（笑）。

「失敗した時は『あぁ、やっちまった』となり、そこから焦りが生じました。ただ、5分×3Rでしっかりと判定で勝てるよう練習してきたので、とにかく凌いで2Rと3Rで逆転しようという気持ちになれました」

──その2Rと3Rも一方的ではなく、競り合いで粕谷選手に勝つ切った場面があったのが今後を考えると、大きかったと思います。

「粕谷選手の粘りも凄かったです」

──ハイクロッチから豪快にテイクダウンしてからのパウンドは、気持ちが折れるだけの勢いがありました。

「パンチを入れた時は、動きは止まったと思ったんです。でも、粕谷選手は気持ちを持ち直して動いてきました」

──試合前には大丈夫だと豪語していた左ミドルを効かされたようにも見えました。

「バレました？（笑）。3Rに左ミドルを効かされましたね。左ミドルがあることは分かっていたので、サウスポーでまず試合に入ったんです。自分の左の蹴りも調子が良かったし。そこから作っていく予定だったのですが、疲れてくると足がバラバラになってしまいました。その隙をつかれて左ミドルを入れられてしまいましたね」

──ただし、効かされ気味のなかでもすぐにシングルレッグでテイクダウンを奪うことができました。足がバラバラになったかもしれないですが、左右両構えの強味がテイクダウンにも出ました。

「打撃の距離間が思った以上に掴めて来て、突っ込んでくるタイミングで足払い気味のローキックを入れることができる。そう、試合中に気付いて実践することができたんです」

──頭が柔軟になってきた?

「色々な練習で、色々なタイプの選手とやり、色々なモノを見ることができました。結果、自分の幅が広がることにつながったかと思います。今回の試合ではがぶりが多かったのですが、それも北岡さんに今、教わっていることなんです」

──あの時の『もう引き込むしかないから』という北岡選手の指示。アレが聞こえると、粕谷選手も引き込めないですよ。

「それでシングルをがぶって。まだまだ自分で意識せずにああいう試合ができるわけではないので、そういうところをスパーリングからやってきて、試合で少しずつ出せるようになったのではないかと思います」

＜この項、続く＞